みそ文

ラジオに合わせ

 来月職場で食事会がある。そのときに同僚と私合計五名が出し物で笛を吹く。私はテナーリコーダーにて伴奏する。その曲目のひとつが「ドレミの歌」。これまでも仕事を終えたあとで何度かの合同練習を行いみんなだんだん上手にそしてたのしく演奏できるようになってきた。食事会当日直前にはさらに連日の合同練習を行う。練習を重ね、曲順を工夫し、所要時間を計り、当日に備える。そんな中で、当日聞いてくれる人たちもただ聞いているだけではたいくつだろうから歌詞カードを作成したものを配布して歌いたい気分のひとには歌ってもらおうということになった。

 曲目を決め楽譜を用意してくれる面倒見のよい同僚が「ドレミの歌 歌詞」で検索して出てきた歌詞を参考にかわいらしい柄入りの歌詞カードの作成に着手してくれた。彼女は試しに印刷したものを私に見せて「添削校正おねがい」と言う。歌詞の文字を目で追いながらつらつらと口ずさみ「あ、ここ、一文字抜けてます、ここは同じ文字が一個多いです」と指摘する。彼女が「あ、ほんとだ、ほんとだ」と修正し印刷し直してくれる。それをもらってもう一度読み直す。今度は大丈夫、完成だー。

 そうやって作成した(同僚が作成してくれた)歌詞カードの歌詞はおなじみのドレミの歌ではあるのだけど、私が幼い頃から諳んじている歌詞とはその一部がちがっていて、あれ、と思いはしたものの、どちらが現代の現実に即しているかというとそれは今回作成した歌詞カードのほうなのでそちらをそのまま採用。

 私が諳んじている歌詞は「ドはドーナツのド、レはレモンのレ、ミはみんなのミ、ファはファイトのファ、ソは青い空、ラはラッパのラ、シはしあわせよ、さあ、うたいましょう。どんなときにも、列を組んで、みんなたのしく、ファイトをもって、空を仰いで、ラジオに合わせ、しあわせの歌、さあ、うたいましょう」

 この歌詞のどの部分が現代の現実にあんまり即していないかというと二番の「ラジオに合わせ」の部分で、今回作成した歌詞カードによるとこの部分は「ラーララララララー」と歌う。

 現代でもラジオをこまめに聴く人はいるところにはいるのだろうが、そしてラジオに合わせて歌うひとは歌うのだろうが、私はもう長いことラジオを聴いてもいなければラジオに合わせて歌ってもいない。ラジオに合わせて歌ったのはいつが最後だったのか思い出そうとしても思い出せない。夫はひとりで運転する時には車中でラジオを聞くが歌うことはないという。

 テレビならばどうだろうと考えてみてもテレビを見ながらテレビで流れる歌に合わせて一緒に歌うことはもうない。夫はごくたまに広島カープの成績がすごくよい時に球場で流れるカープの歌に合わせて一緒に歌うというほど大きな声ではなくごく控えめに歌詞を口ずさみつつ小さく拳を振ることはある。私はどうかと考えるとテレビではそもそも歌詞付き音楽が流れるような番組を見ていない。オープニングやエンディングの音楽はあっても歌詞はないか、歌詞はあっても外国語過ぎるかシャウト系すぎるかで一緒に歌うことがない。ずっと以前であればアニメの主題歌の歌詞を書き取り暗記しテレビで流れる時には一緒に歌っていたことはある。けれど今の暮らしでは、ラジオも聴かず、テレビもごく限られたものしか視聴せず、繰り返し見るブルーレイディスクの作品の音楽にも歌詞はついておらず(いや、厳密に言えば「あそびをせんとやうまれけむ、うふ、うふふふ」という歌詞のような部分はあるにはあるがその部分で唱和することはない)、PCで音楽を聴くときも歌詞があるものはあまり聴かない。ああ、数年前に突如アニメ「赤毛のアン」のオープニングとエンディングの歌をおさらいしたい気分になりPCで何度も繰り返し聴いて一緒に歌い、そしたらそれが止まらなくなり、ご飯を作るときもお風呂に入るときもずっとずっと歌うようになり夫は「ああー、このひと、またなんかに取り憑かれとってじゃわ」と言い、私も「だれかー止めてー」という状態になったことならある。

 それにしても「ラジオに合わせ」はもはや現代の現実にあまり即していないとしても、だからといって「ラーララララララー」ではあまりに芸がなさすぎるような気がして、あの曲の二番のラの部分の歌詞として何かよいものはないだろうか、と考えているがなかなかよい歌詞が思いつかない。「ラーレミファソラシー」の音階で「ラーム肉食べよう」と歌ってみたが夫は「ラジオに合わせ、よりも、そっちのほうがもっとない」と言う。私は人生の基本信条として快適に安寧に暮らし生きるべく努めてはいるがドレミの歌の二番のラのところで「らーくして生きよう」と歌いたいかというとなんとなくそれはちがう。「らーくしてトクをー」と歌うのはもっとちがうしそれは私の信条ではない。ドレミの歌の二番のラの部分、なんと歌えば歌詞としてのやる気と気持ちよさを得られるだろうか。     押し葉

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

ときどき、思い出したように、いただいたメッセージへのお礼やお返事をリンク先の「みそ語り」に書いています。よろしければ、いつでも、どうぞ、どなたでも、ご覧ください。「みそ語り」では、メッセージをくださった方のお名前は書いておりませんので、内容から、これは自分宛かしら、と推理推察しながら読んでいただければうれしいです。手の形の拍手ボタンからメッセージをくださる場合は五百文字以内、文字の方の押し葉ボタンからメッセージをくださる場合は千文字以内となっております。文字数制限なくお便りくださる場合には、下のメールフォームをご利用ください。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク

最新記事

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (0)
暮らし (109)
仕事 (161)
家族 (300)
想 (23)
友 (47)
学習 (79)
旅 (16)
心身 (8)

FC2カウンター

検索フォーム

FC2Ad

Template by たけやん