みそ文

発芽玄米のお好みは

 翌日が出勤日の場合、夫は前の晩にお米を炊飯器に仕掛ける。夫は勤務先には自宅からご飯だけをご飯用プラスチック容器に詰めて持って行きおかずは業者さんのお弁当を会社で購入している。業者さんからご飯もセットで購入することはできるのだが、そのご飯の量は夫には多いため夫は自分がちょうどよくおいしく食べきれる量のご飯を自宅から持っていく。

 夫が夜炊飯器にご飯を仕掛けるときには自分のお昼ごはん用の0.5合と、翌日私が出勤前にご飯を食べるならさらに0.5合、翌日の夕食用のご飯も一緒に炊いて保温しておく場合は二人分でさらに一合で合計二合炊飯することが多いのだが、翌日私がパンやお餅などを食べる場合には私のご飯が要らなくなり、夕食がお好み焼きや焼きうどんやパスタなどの予定の場合は夕食分のご飯が要らなくなるため、その都度私に確認しては炊飯の量を決めている。「明日の夜はお好み焼きだから、夜は要らないとして、みそきちどんさんは?」と訊いてくれて「私のご飯もお願いします」「よっしゃ、わかった、じゃ、一合ね」と言った直後に彼の0.5合だけを計量してセットしていることがたまにあり「ええっ、ええっ、私のぶんは?」と訊くと「わーっ、なんか流れで忘れてた」と言ってからもう0.5合追加してくれることがある。

 一昨日の夜は「明日は、じゃあ、二合で」という話になっていたのだが、夫が寝たあとになって私も寝ましょうと思ってふとキッチンを見たら空の炊飯釜が置いてあり、あれ、あれ、あれ、ご飯が炊いてない、明日夫はご飯要らなくなったんだろうか、でも私はご飯要るし、明日の夕ごはんのぶんも炊いておきたいし、じゃあ私が炊いておきましょう、と冷蔵庫から無洗米と発芽玄米を取り出し水洗いして仕掛ける。

 翌日の夕食の時、夫に「どうやらくん、昨日の夜炊飯器セットするの忘れとったじゃろ?」と言うと夫は「え? でも、おれ今日会社にご飯持って行ったぞ」と言う。

「それは私がセットしておいたご飯じゃん。どうやらくんはセットするの忘れたけどみそきちが炊いておいてくれてよかったなあ、助かったなあ、ありがとう、って思った?」
「ううん」
「え? ううん、ってなんで」
「だって、おれが自分で炊いたと思ってたもん」
「でも、私は発芽玄米好きだけどどうやらくんはあまり積極的に食べようとしない発芽玄米が入ってたでしょ?」
「うん。だから、朝起きて炊飯器開けたときに『うわっ、ご飯に茶色いところがある、焦がしてしもうた』ってまず思って、よく見て『ああー、ちがったー、おこげが大量にできたわけじゃないのか、発芽玄米だったのか』って思った」
「そこで発芽玄米なのは気づいたんじゃね?」
「うん」
「でも、自分が炊飯セットするのを忘れとったけん私が代わりに炊いてくれたんだなー、とは思わんかったん?」
「うん、おれがセットした米にみそきちどんさんが食べたい発芽玄米を追加して入れたんかー、あとから発芽玄米追加したぶんだけの水加減するのよううまくできたなあ、って思った」
「ええー、じゃあ、今、こうやって話をするまで昨日の夜自分がご飯を仕掛け忘れたことに気づいてなかったってこと?」
「うん。今こうやって聞いても本当はおれがいつもどおりちゃんとしかけた気がするくらいじゃけん」
「ちがうよ。昨日の夜はどうやらくんお米仕掛け忘れてたよ。そこはもう素直に認めようよ」
「そうだったんかなあ。それにしてもこの発芽玄米は発芽玄米なのになんかおいしいな」
「でしょ、これはね、ふつうの発芽玄米とはまた別の金芽米の発芽玄米でね、従来の発芽玄米よりもぷくぷくもちもちしてるらしいよ」
「これならおれでも違和感なく食べられるなあ。見た目が茶色っぽいけど食感と味は違和感ないわー」
「でしょ。おいしいでしょ。でもね、これね原材料調達が不安定だとかで今供給休止中じゃけん買えんのんよ」
「休止っていつまで?」
「わからん。また買えるようになるといいね」

 今度夫がお米を仕掛け忘れたときには、私好みに発芽玄米だけで炊飯器セットしておいてみようかな。そうしたら、夫もさすがに、自分が妻の好みに合わせて発芽玄米だけを炊飯したとは思わずに、ああ、おれが炊飯し忘れた隙にみそきちが自分の好きな発芽玄米だけをセットしたんだな、と思うかな、思うといいな。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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