みそ文

世界一の幸せ者

 同僚のタノウエさんが先週だったか先々週だったか「ディズニーに行くのでトラベルミン買います」と乗り物酔い止めの薬を購入した。「東京までの移動用ですか。タノウエさん乗り物酔いしやすいんでしたっけ」と訊くと「現地でアトラクションに乗る時用です」と言う。ほうほう、乗り物酔い止めはそういう使い方もあるのか、と感心しながらレジを打つ。

 今日「トラベルミン効きましたか?」と尋ねると「年寄り(同僚のお母様、推定70代後半)と一緒だからそんなに激しい乗り物には乗らなくてアトラクションにトラベルミンが効くかどうかはわからなかったけど、人がすごく多くて人混みに酔いそうだったからそれにも効くかなあ、と思って飲んでみて、でもそれで効いて気持ち悪くならなかったのかもともと飲まなくても気持ち悪くならなかったのかわからなくて、でも、ま、いっか、と思ったの」と言う。

「今回の旅行は母にサプライズプレゼントの旅行だったんですけどね」
「サプライズ?」
「うん。もともと母がUSJにもナガシマスパーランドにも行ったことがあるけどディズニーには行ったことがないから行きたい、って言ってて、なら一緒に行こうっさ、って母娘で行くってことで母を連れ出して新幹線に乗って」
「ええと、そこまではまだサプライズはないですよね」
「まだまだ。新幹線に乗って名古屋に着いたときに私の姪っ子(同僚のお母様にとってはお孫さん)のナオコちゃんが乗ってきて、でも母は私と二人で行くつもりでいるからまさかナオコちゃんが乗ってくるとは思ってないんですよ。でも母は名古屋から乗ってきたナオコちゃんをじいっと見てそれから私のほうを見て小声で『ナオコちゃんによく似たお嬢さんやね』って言うんです。私が『本物のナオコちゃんやよ』って言ったら目をまん丸くして、それからナオコちゃんが『おばあちゃーん、ナオコだよー』って言ったら、母はもうびっくりして泣きそうになって『うわあ、ナオコちゃんも一緒に行ってくれるんやったんか』ってそりゃあもうよろこんで」
「わあ、それはいいサプライズプレゼントですねえ、なんとまあ親孝行な」
「へへ、でね、サプライズはまだあるの。それで新幹線が東京に着いたら、今度はうちの娘が旦那さんと一緒に現れて旦那さんはおばあちゃんに挨拶だけして帰ったんやけど、そこからは娘も合流して、母は私(娘)と孫たち(同僚の娘さんと姪子さん)の女四人の旅行なんだって知ってそりゃあよろこんで『私は世界一の幸せ者やぁ』って何回も何回も言うてた」
「お母様にもそんなふうにかわいらしく喜んでもらえると奮発して旅行をプレゼントした甲斐がありますねえ。企画はタノウエさんだったんですか」
「うん。私が旅行会社に申し込んでお金払って」
「いい親孝行だなあ。しかも娘さんや姪子さんたち若手がいてくれるのもこころ強いかんじ」
「そうなの。若い子はすごいねえ。ディズニーの中でもスマートフォンでさっささっさといろいろ調べてくれて『今はどこどこが何十分待ちでどこどこがどうだからこの順番で回ろう』って案内してくれるから、母と私の年寄りふたりは若い者が言うとおりに『はぁい、わかりましたー』ってついていけばいいだけですごくラクだったのー」

 同僚とお母様と娘さんと姪子さんが泊まったホテルの部屋はツインルームをふたつつなげたコネクティングスイートでベッドルーム以外にゆったりとくつろげるリビングルームもあり各ベッドルームそれぞれにバスルームとトイレがついていて広くてとても快適だったということだ。よかったよかった。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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