みそ文

樹上のオタマジャクシ

 今日夫が行った山は「夜叉ケ池」。山なのに名前が池なのはそこを訪れる人の大半の目的地がその池だから。あえて山として呼ぶとすれば「夜叉ケ池山」あるいは「夜叉ケ岳」なのだがその名で呼ばれることは少ない。

 この夜叉ケ池の見所は、ひとつはニッコウキスゲという名前の黄色い花。池に至るまでの稜線斜面に群生するニッコウキスゲの黄色は山でひときわ美しく映える。もうひとつの見所はモリアオガエルの卵。このカエルは卵を木の上に産む。池に覆いかぶさるように生える木の枝の池の上にあたる部分に、何かの花がそこにだけ咲き誇っているかのように、あるいは白っぽい柔らかそうな大きめの木の実がたわわに実っているかのごとく、カエルの卵の塊が木の枝にぽこぽこぽこぽこ付いている。

 私がこれまで知っているカエルの多くは卵は水の中で産卵しその卵は水の中で孵化してオタマジャクシになるものだった。しかしこのモリアオガエルは木の上に卵を産み付け、卵の中身がオタマジャクシになる時には木の枝の下の池に飛び込む、といっても自力で飛び込むわけではなくオタマジャクシの姿のまま卵の中で待機して雨の日に雨で流れ落とされ池の中に入れるのを待つ。

 卵の状態で池の中にいたのでは天敵の餌になるからその危険性からこうして卵を木の上で守るのか、しかし都合よく雨が降らなければ卵の中で待機するオタマジャクシの姿のまま干からびるであろうにそれはそれでよいのだろうか。たとえ無事に雨が降り雨水とともに池の中に落ちオタマジャクシとして泳ぎ始めたとしても、池の中には天敵がそのオタマジャクシを餌にしようと待ち構えている。それでも、自力では動けない卵の状態で天敵の餌になるよりは、自力で泳いで逃げられるオタマジャクシの姿になってから天敵と遭遇するほうがまだ生き延びる可能性が高いのだろうか。

 多くのお客さんは夜叉ケ池を見て樹上のモリアオガエル卵を見てニッコウキスゲを見たらそれでよいらしく、そこからさらに山頂を目指す人は少ない。しかし夫は山頂大好きだからどうしても山頂を目指す。夜叉ケ池からは往復三十分ほどで山頂まで行って帰って来ることができる。山頂から眺め下ろす夜叉ケ池もまた見応えがあるらしい。

「夜叉ケ池には夜叉が出てくるか、今は出なくてもその昔には出ていたから夜叉ケ池という名前なの?」と訊いてみたが夫の答えは「どうなんかなあ、出るんかなあ」であった。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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