みそ文

オマージュ練習中につき

 我が家にはこれまで朝の連続テレビ小説を視聴する習慣はなかったのだが、このたびの連続テレビ小説は毎日見ている。定刻にではなく録画したものを仕事から帰ってきてから夕食後にゆっくりと見る。これまで連続テレビ小説視聴習慣がなかった夫も毎話たのしみにしてる。

 昨夜もいつもどおり何度も何度も再生して堪能しつくしてから(でもまた後日再生して見るけど)寝る前に夫に話しかける。夫はPCの通販サイトで保温保冷水筒とそれを入れる保温保冷効果のある水筒ケースを物色していた。

「どうやらくん、あのね、わたしね、これまで連続テレビ小説を見る習慣がなかったし、半年後にはたぶん見ていないとは思うんだけど、今回の連続テレビ小説すごくたのしい」
「よかったね。それにしてもすごいよなあ、ようそれだけ繰り返し見るなあ。今日の何回見たん?」
「んー、七回くらいかな。でもそれは別に今日に限ったことじゃないよ。どうやらくんも毎日毎話たのしみにして見てるじゃん」
「うん、ドラマとして面白いけん見るけど、そんな何回もはようついていかんわ、一日一回でええわ」
「だって一回だけじゃ蓮子さんの着物や帯の柄をじっくり見れんのんじゃもん」
「ああ、なんか上等な着物らしいなあ」
「え、どうやらくんもやっぱりわかるん?」
「いや、はなちゃんと同室の人がそういうて説明しようたじゃん」
「ああ、そうじゃね、醍醐さんが解説してくれてたよね。でもあのときだけじゃなくて蓮子さんは毎日着物も帯もちがっててね、なんかすっごい見応えがあるん。これまでも女学生さんたちの着物や袴や髪型や髪飾りがかわいいねえと思って見るのがたのしかったけど、蓮子さんの着物は美術品芸術品として鑑賞するようなかんじなのよ、NHKの受信料だけでこんないいもん見せてもらえるなんてありがたくてありがたくて」
「よかったね」
「どうやらくんは別に村岡花子さんの翻訳文にもグリンゲイブルズのアンにも思い入れがあるわけじゃないのに毎日見るくらいじゃけん、きっとどうやらくんにとってもなにかが面白いんじゃろうね」
「うん、面白い。よくできてると思う」
「私はね、村岡花子さんの翻訳文がもともと好きで、フィクションでもそれなりに村岡花子さんの伝記的物語を見れるんならうれしいから見ましょ、と思って見始めて、それ以上は全然求めてなかったし期待もしてなかったんよ。それが見てみたら、まず照明が私好みで、調度品も衣裳なんかの美術仕事も見応えがあって、はなちゃんの実家や学校の建物や室内の様子も好きで窓や窓枠も好きなん、それからね、劇中音楽の楽器の種類が豊富でたのしくて、あと文字!! 壁に貼ってある文字や葉書の文字なんかが好みすぎて、うわーん、うわーん、こんなに楽しませてくれてスタッフのみなさまどうもありがとうございますーっ、てかんじなん」
「それってみそきちがハマるツボどっぷしじゃん。清盛のときもそうやったよなあ」
「うん。連続テレビ小説と大河ドラマの予算の構成が同じがどうかはわからんけどね、大河ドラマの場合は音楽予算の総額が決まっていて作曲家さんはこれだけの予算の中で好きなように作曲してください、ただし演奏者さんたちへの支払いもこの予算の中から出してください、っていう方式で、作曲家さんは曲をたくさん作れば作るほど、楽器の種類を多く使えば使うほど、いろんな楽器の演奏家さんにたくさん演奏してもらえばしてもらうほど、作曲家さんの取り分は少なくなる仕組みらしいんだけど、それでもあえていろんな曲を作ってくれて、なおかつこれまであまり馴染みのない楽器の音色やリズムを聞かせてもらえると、もうね、すごいうれしいん」
「ああ、そんな話、清盛のCD買ったときにもしてたなあ」
「でね、今回の連続テレビ小説の第一回の最初の、花子さんの翻訳原稿に空襲の火の粉が落ちてボワっと燃えるシーンで流れた音楽の楽器がね、私はバグパイプかなあと思ってたんだけど、バグパイプとは少し違うイリアンパイプスっていう楽器なんだって。バグパイプはフイゴと口と両方から空気を送って音を出すんだけど、イリアンパイプスは口からの送風はなくて肘の位置にあるフイゴの空気だけで演奏するんだって。そのぶんバグパイプよりもキレのいい音が出せるらしくて、たしかにあの音楽の音、キレがいいのよー。でねでね、蓮子さんのシーンで流れる曲の楽器はねハンマードダルシマーっていう叩いて演奏する琴みたいな弦楽器でね、ほら、トルコ音楽やペルシャ音楽のサントゥールがあるじゃん、あれはいかにもあのへんっぽい音色で大好きなんだけど、サントゥールにも似てるけどそれとはまた別の楽器なん」
「ほうー、なるほどー。……。ごめん!! おれ、いま、なるほどーって言うたけど、なんにもなるほどーって思ってないどころか、はっきり言うておれそれすっげえどうでもええわー、って思ったのに、なるほどーっ、とか言うて、口先だけでなるほどーって言うて、ちょっとこころが痛んだ」
「でも、私の話につきあってなるほどーって言うてくれたんじゃろ、ありがとう、満足した」

 その後夫がPC画面を指さして「この水筒の保温バッグ、高いなあ」と言う。

「いくらなん?」
「んー、2780円」
「高いんかなあ。でも買えるじゃろ?」
「買えるけど、いまおれが使ってるのなんか100円なのに、その28倍の値段はなあ」
「でもそのお値段がするだけのいいことが何かあるんじゃないん?」
「うん。この、ファスナーが上から側面まで全部開け閉めできるのがいいんだよなあ。いまのおれのやつはそれでも十分といえば十分なんだけど、山を歩いているときや頂上でおにぎり食べるときなんかには、上から横まで片手でいっきに開けられる方が便利なんだよなあ。水筒もいま使っているやつでも保温性は十分なんだけどお湯の量が450mlだからもう少し大きい1リットル入るやつを買おうかなあと思ってて、それだったらこれにしようとさっき決めたところなんじゃ。山で汗をかくと(この後しばらく山歩き語りが続くが割愛)。となるとやっぱり水筒も水筒バッグも買ったほうがいいよなあ」
「そうかー、なるほどー。あ、ごめん、わたし、いま、なるほどーって言うたけど、わたしはそれすっごくどうでもええわー、だった」
「なに、それ、意趣返し?」
「ううん。真似? オマージュ?」

 ドラマの中で屋外から室内を照らす日差しの照明とその陽光で室内にできる影の加減が好きだとか、屋内から窓越しに外を見たときの植物の葉のツヤが好きだとか、主人公と家族がやりとりする便りの文章とその文字のどこがどう好きだとか、語ればきりがないのだけれども、今宵は、これまでといたしとうございます。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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