みそ文

アンパンマンの過失

 夫が言う「しまった!!」は過失としては非常に些細なことであるのが常だ。結婚して数年のあいだこそ夫が「しまった!!」と言うたびに少々ぎょっとしたものだが、現在は夫が言う「しまった!!」は私が使う「おや?」くらいの語彙として聞くようになった。

 昨夜だったか帰宅した夫が自分用に買ってきた朝食用のパンを食卓の上に置きながら「しまった!!」と言うから、「なあに? 賞味期限が切れたパンをうっかり定価で買ってきたとか?」ときいてみる。夫は「いや、それはないわ。つぶあんだと思って買ったあんパンがこしあんだったから、しまった、と思って」と言う。

 あんこはつぶあん派の夫にとっては彼なりに思うところがあるのだろうが、つぶあんもこしあんもそれぞれに好む私としては「はあ、そうですか。まあ、そういうこともあるよね」という以外に気の利いた応えが出ない。

 これが夫が「しまった!!」ではなく、卓上のパンを見て「おや?」と言い私が「どうしたの?」と問うて「つぶぱんのつもりで買ったあんパンがこしあんだった」と応えたとしたら「あら、それは残念じゃったね。今度はよく見てどうやらくんが好きなつぶあんパンを買ってこれたらいいね」と言えそうな気がするのに、なにゆえ「しまった!!」に対しては「どうせたいしたことじゃないんでしょ」的な心情が湧くのか。実際たいしたことではないからなのではあろうけれど。その心情は品のない音を用いるならば「ちっ」もしくは「けっ」といった心情で、そういう心情を抱くのはどちらかというと気持ちがよいわけではないから、できることならば別の感覚に置き換えたい気がする。しかし夫との夫婦として家族としての会話はそれはそれでだいじにしたい。安寧な会話は展開させつつ私の心情に一定の品と穏やかさを保とうとするならば、どういう会話にするのがいいだろうか。

「しまった!!」
「どうしたの?」
「つぶあんパンのつもりで買ったあんパンがこしあんだった」
「あら、それは残念じゃったね。今度はよく見てどうやらくんが好きなつぶあんパンを買ってこれたらいいね」

 という会話も成り立たなくはないはずなのだが、なぜだかこうはならない。

「しまった!!」
「ほほう。しまった、とな」
「つぶあんパンのつもりで買ったあんパンがこしあんだった」
「やったね!!(音声イメージはアンパンマンで)」

 ときどき夫は私に対して「そこは『やったね』とはちがうやろ」というような場面で「やったね」を使うことがあるから、私も夫に対してちょっとお試しで「やったね」を使ってみれば使えないことはないのだろうが、私としては「やったね!!」は相手も自分もそれなりにうれしい気分の場面で使いたいこだわりがあるなあ。

「しまった!!」
「ほほう。しまった、とな」
「つぶあんパンのつもりで買ったあんパンがこしあんだった」
「ほう、ほう、ほう、ほほう」

 もはや会話にはなっていないかもしれないが、それなりに言葉っぽいものを応酬しつつ私の気持ちの安寧もそこそこ保つ作戦としてはこれはこれでひとつの方法かも。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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