みそ文

鍵の受難

三重県の四日市市に、日帰り出張してきた夫。高速道路で2時間半。順調に運転したらしい。

ところが。帰宅したときに、いつもなら、自分で玄関の鍵を開けて入ってくるのに、インターホンを鳴らすので、両手が荷物で塞がっているのかと思い、私がドアを開けに出た。すると夫は、「家の鍵がない。出張先で落としたかもしれん。」と言う。いつも作業着ズボンのポケットに入れていて、今日は現場で、軍手を何度も、ポケットから、出したり入れたりしたからきっと、そのときに、つるりと落ちたのではないか、と。念のために、現場の人に、見つかったら連絡してもらえるように頼んで帰ってきたらしい。

「しかたないね。明日、不動産屋さんに電話して、新しいのを頼むことにしようね。はい、これが、不動産屋さんの電話番号ね。」と、紙切れに番号を書いて渡す。

だけれども。夫は、その少し前に、車の鍵も、ジーンズのポケットに入れてて、旅先の温泉の脱衣所で、なくした実績がある。鍵をズボンのポケットに入れるの、やめた方がいいんじゃないかな。「うん。そう思う。今度から胸ポケット(蓋付き)にする。」

そして、翌日。いつものように、夕ご飯のしたくをしていたら、玄関で、がちゃがちゃと音がして、夫が「ただいま~」と言いながら入ってきた。

おかえりー。不動産屋さんに連絡ついた?

夫は小物置きの棚の上を軽く叩いて音を立てる。コツコツ。

ん?で、不動産屋さんは?

コツコツ。

いや、コツコツは、いいから、鍵の連絡、ついたの?

「いつになったら気付くんだ?」と夫。

え?なにが?その棚、コツコツして、どうしたの?なにかあるの?あれ?そこにあるのは、あ、鍵じゃん。わあ。見つかったんだ。よかったね。

「鍵がなかったら、どうやって、自分でうちに入るんだ?」

あ。そうか。自分で入ってきたよね。そういえば。

「よう、ここまで、気がつかんなあ。」

いやあ、よかったよかった。それで、どこにあったの?

「昨日出張で使ったレンタカーを、今日返すのに、乗ったとき、もしかしたら、この車の中に落ちてないかな、と思って見てみたら、サイドブレーキのそばにあった。」

うわあ。よかったねえ。うれしいねえ。ちゃんとありがとうって言った?

「うん。言った。」

誰に?

「誰にとはなく、出来事に。」

うん。きっとね。どうやらくんを護ってくれてる存在が、いいぐあいに采配してくれたんだね。いっぱいお礼を伝えておくと、また今度も、いいぐあいにしてもらえるよ。

「いいぐあいにしてくれるなら、最初っから、鍵を落とさないようにはしてくれんのかなあ。」

それはね。殆んど毎日そうしてくれてるけど、ここぞってときにもそうしてもらえるようにするには、常日頃から、小さなことでも、いい具合にしてくださってありがとうございます、ってお礼を重ねてないとね。護ってくれる人の力は、感謝の積み重ねで大きくなるからね。鍵もね、きっと一晩ひとりぼっちで、淋しかったと思うよ。このままお家に帰れないのかと思って、ドキドキしてたと思うから、よく帰ってきたね、って、大切にするからね、って、話して安心させてあげたほうがいいよ。

「そう、やな。そう、かな。ま。やっぱり日頃の行いがいい人間は、ちがうな。」

夫よ。いままでの私の話を聞いていたか?     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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