みそ文

パジャマの性別

 ずいぶん以前から夫は「パジャマを買いたいなあ」と言っていた。うん、そうだね、買ったほうがいいと思うよ、と私も長らく応えていた。しかし夫がよく行く山用品屋さんにはパジャマは売っていないのかなかなか買わない。山用品屋さんにこだわらずともユニクロでもどこででも買うとよいのだろうけれど、出かけた時になかなかパジャマのことを思い出さないようだ。だからたまに生協カタログをめくっているときに男性用パジャマを見かければ「パジャマ出てるよ。買う?」と尋ねるが、夫は「うーん、いいや」と言う。ネット通販で何か買うときに男性用パジャマもあるサイトを使うときには「ついでにパジャマも見て買う?」とも問うてみたが、夫は「うーん、いい、またお店で直に見てから考える」と言う。そう言うならそうするのがいいよね、というのがこれまでの経過。

 昨日の夕方、毎週日曜日に食料の買い出しに行くスーパーに併設されている衣料品店で夫が「おれ、パジャマ買ってくる」と言う。「おお、よく思い出したね。じゃあ、私は先にスーパーで定番の買い物を始めているから、あとから合流してね」と夫と別れて食品売り場に移動する。

 一昨年の夏かもうひとつ前の夏かに、夫がここの衣料品店で夏用の軽くて乾きやすい短パンを買うときに私もその場に一緒にいたことがある。売り場にかかっている商品を手にとり夫が「あ、これにする」と言う。私が「その短パンはMサイズだよね。その大きさだったら、どうやらくんには少し小さく見える気がするなあ。どうやらくんにはLサイズでもいいと思うんだけど」と言うと、夫は「いや、Mでいいって。Lだとブカブカ」だと言う。

「でもね、ここの服って安くて手頃だけど同じものでも微妙にサイズが違うことよくあるから、試着できるものは試着したほうがいいよ」
「短パンに試着なんか要らんって。これでいい。これ買う」

 そう言って買って帰った短パンを家で穿いた夫が「なんかこれ小さいかも。ウエストきついかも」と言う。それは見るからにきつそうで長さも足りなくて、なにかのコントの衣装のよう。結局その短パンは夫が穿くには小さいが、私が代わりに穿くには大きくラインが男性用で身体に沿わず、そのまま。

 そのときにそんなことがあったから、今回は私は彼のそばにいないことで何も言わないことで夫の無事で円滑な買い物を応援する気持ちで別行動してみることにした。

 結果的にパジャマの買い物はたいへん速やかに済まされ、食材買い出しのかなり前半の部分で夫は私と合流した。日常的に必要な飲食物と今週なんとなく食べたいなと思うものをカートのかごに入れ購入して帰宅する。出かける前に洗濯機でつけ置き洗いしておいた洗濯物を洗濯機にかける。夫が「今買ったパジャマ入れたら洗うの間に合うかな」と言う。「もちろん間に合うよ。値札外してネットに入れて放り込んでくれれば。洗濯は7分間回るからその間に入れれば余裕」と伝える。夫はハサミで値札を切り取り、新しく買ったパジャマを洗濯ネットに入れて回転する洗濯機に追加する。洗濯機が順調にぐおんぐおんと回転する。夫がふと「あのパジャマおれには小さいかも」と言う。

「え、なんで。サイズ確認して買ったんでしょ」
「サイズは見た。あそこの店でMのものを買うとおれにはだいたい小さいのがわかったから最近はLを選んで買うようにしていて今回はLと思ってLサイズであることと素材が綿100%であることは気をつけて買った」
「んー、だったら、大丈夫なんじゃないの」
「それが、LサイズはLサイズでも、女性用かもしれん」
「男性用パジャマと女性用パジャマが同じところにかかってたの? 男性用のコーナーに女性用パジャマが紛れ込んだのをたまたま選んだのかな」
「うーん、わからんけど、男性用だと思ったけど、さっき切った値札とかのタグの身長のところに、男性用のLだったら165cmから175cmって書いてあることが多いんだけど、155cmから165cmって書いてあったような気がする」
「えーと、その身長は女性用のLサイズに多く書いてある数字と似てるね」
「じゃろ。ああ。間違ったかも」

 洗濯機が「最後の脱水まで終わりましたよ」のお知らせをしてくれる。洗濯機から洗濯物を取り出しサンルームに干す。夫が買ったパジャマをパンパンと伸ばしてハンガーにかける。

「どうやらくん、男性用のパジャマのボタンって、ボタンが右側にあるのかな」
「うん。ボタンは右側」
「ボタンホールは左側?」
「そう。ボタンを通す穴は服の左側にある」
「そうなんだ。あのね、このパジャマはボタンが左側についていて穴が右側にあってね、私が着ている衣類はだいたいそうってことは、これって女性用なのかなあ」
「うん、そうかもしれん」
「そうかあ。見た目の大きさとしては、そんなに小さくは感じないけど、メンズ衣類のLサイズとしては小さいといえば小さいかなあ。あとね、男性用パジャマにはズボンの前におしっこするときの穴があけてあるのがあるけど、これにはその穴はないよ」
「うーん、あの穴は付いているパジャマと付いてないパジャマとあるからなあ」
「そうなのかあ。どうなんだろうね、これは」
「乾いたら一回着てみるけど、もしそれで小さかったら、みそきちどんさん着て。プレゼントするから」
「わかった」

 そして夫は少し前にそのパジャマを着た。ボタンの左右が違っていて留めにくいと言いながらも「大きさは着れるなあ」と言い、ズボンの前と後ろはどっちだろうと言いながら何度も前と後ろを穿き直す。「あのね、ウエストのゴムを揃えた状態で股の縫い合わせを見るの。で、その縫い目を境にして生地が多いほうというか体の前後おしりの割れ目にあたる部分の縫いしろが長いほうが後ろ側で短いほうがお腹側だよ」と説明する。夫は「じゃあ、こっちが前やな。ゴム入れの印があるほうが前か」と言って穿く。ズボンの長さとしては夫の脚の長さでも問題ないが太ももあたりと腰回りがなんとはなしにパツパツしているように見える。すこし細身めのデザインのものなのだろうか。「ウエストはきつくない?」ときくと夫は「ウエストは大丈夫」だと言う。「太もも周りはどうかな」ときくと「うーん、いけそう」と言う。たしかに上半身の肩幅は夫には少し大きいのかな、と思えるくらいの肩の位置で袖丈は夫の腕の長さにぴったりかなあ。実際に着て寝てみて寝心地に問題がなければ、たとえこのパジャマがもともとは女性用に作られたものだとしても、夫がよしとするならばそれでよしということにしよう。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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