みそ文

傘を開いて使う

 仕事中、患者さんが出入りするガラスの扉に雨が強く打ち付ける。患者さんが「ひゃあ」と言いながら入って来られると風と雨粒がお店のなかにびゅわっと入る。普段よりもやや湿気を帯びた処方箋を受け取り、そこからはいつもどおりの調剤作業。お薬をお渡しし終えた時の挨拶が「雨すごいので、気をつけてお帰りになってくださいね」になる以外はいつもどおり。

 仕事を終えての帰り道、車のワイパーが大活躍。ただでさえ暗いと見えづらくなるのにそこに雨粒がたくさん落ちてくるとさらに見えにくいよう、うう、と思いつつ徐行気味に運転。安全運転に安全運転を重ねて自宅駐車場に到着。自宅の部屋に灯りが見える。夫が先に帰っている。駐車場から自宅まで歩くあいだの濡れ具合がマシなようにタオルを頭にかぶりましょう、と仕事用のカバンからタオルを取り出そうと助手席に体を傾けたときに後部座席の足元に置いてある置き傘が見える。置き傘をさして歩いて帰れば自分の濡れは少ないけれど、濡れた傘をうちで開いて乾かしてそれをまた車に持って行くのが面倒くさいから傘をささずにタオルをかぶって走って帰ろう、と思う。

 いや、しかし待て。傘というものは、置き傘というものは、こういうときに使うために置いてあるのではないのか。と己に問う。自分の身が少しでも雨に濡れないように傘をさすのではないのか。雨が降ったときに使えるように置き傘を車内に置いているのではないのか。そうだ、ここはタオルでホッカムリするのではなく傘をさそうよ、車内置き傘を開いて使おうよ、と自分に言い聞かせる。

 雨は強いけれど傘をさしても風にはあおられない程度の雨。安全に歩ける。「ただいま」と帰宅して夕食のにゅうめんを食べ終える頃には雨音が静かになる。

 明日また置き傘用の傘を持って出て車の中に置いておこう。そして雨が降ったときにはまた開いて使おう。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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