みそ文

セミの抜け殻よりも

 七月二日の夜。先に寝床に入った夫に「そうそう、あのね、今日はね、やぎ(妹)の誕生日なんよ」と伝える。夫は「ほうほう、それはそれはおめでとう」と言う。私は「うん、ありがとう」と満足して夫に「おやすみ」と声をかけてふすまを閉める。
 妹が母と一緒に病院から帰ってきたとき私はもうすぐ5歳で弟はもうじき3歳だった。生まれてまもない妹は小さくて丸くて、私がそれまで見たことのあるほかの赤ちゃんとくらべるとずいぶん髪の毛が少なかった。
 夏の間弟と私は外遊びでセミの抜け殻を見つけると大発見したみたいに報告しあう。ふたりで顔を見合わせて「やぎにも見せちゃろう」とかけって持ち帰る。そして「ほら。セミの抜け殻よ」と妹に見せる。妹はたいして反応しない。「見てみんさい。こうやったら服にもつくんよ」と私も弟もそれぞれに自分の服にセミの抜け殻をつける。ブローチかなにかみたいに。それから妹の着ている服(乳幼児用衣類)の胸というかお腹のところにもセミの抜け殻をそっとのせてつけてやる。三人いっしょで、おんなじで、仲間だ。すると妹は大きく泣く。母と祖母から「やぎがいやがることをしたらいけん。やぎがよろこぶことをしちゃりんさい」「赤ちゃんには虫も抜け殻もつけたらいけん。やさしくなでなでしてあげんさい」と指導鞭撻を受ける。妹がなにをよろこぶのかはまだよくわからないものの、セミの抜け殻を服につけてやると泣くというのはわかった。
 妹はセミの抜け殻はいやがるけれども、歌をうたって聞かせたり創作踊りを踊って見せてやるのならよろこぶみたいだということを知るのはお互いにもう少しずつ大きくなってからのこと。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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