みそ文

ブナの森を漕ぐ花筏

 宿の玄関から駐車場までは石段で降りることもできるが、庭を経由して緩やかな斜面で降りることもできる。

 大神山神社から大山経由で宿に戻ってくるときに、母と二人で「そういえば、昨日の夜食べた山菜の天ぷらの、船頭さんが葉っぱの筏に乗ってるみたいなやつ、ブナの森の中にちょくちょくありますよ、って宿の人が言ってたよね」と、どれだろう、どれだろう、と探してみた。緑色の葉の真ん中に直径6mmほどの小さな黒い丸い実がちょこんと乗るものをいくつか見つける。「ああ、こんなところに、こんなふうになっていたのねえ」と感心する。だけど昨夜食べたものは実の部分が緑色だったな、あの緑色のは花でそれが実になるとこういうつるりとした黒色になるのかしら。これはあとでどうやらくんにも教えてあげよう。

 そう言いながらさっきここを歩いたんだよ、と、夫を花筏のあるあたりに案内する。えーとね、たしか、このへんだったんだけど、と探すけれど、母も私もなかなか目当ての花筏がどこにあるか見つけられない。葉っぱだけでは普通の葉っぱに見えてそれが特別花筏だとはわかりにくい。私達が見た時には黒い実がついている葉は数枚で、すべての葉に実がつくわけではないようであったから、そのいくつかを見つけるためにしゃがんで探す。夫は「さっき見たばかりなのにもう場所がわからんのん?」と呆れたように言う。

 あった、あった、これこれ、と、黒くてつやつやした丸い実がのる葉を指さす。夫が「おおー、くっついてるなー、不思議やなー」とまじまじと花筏を見る。

「ね、不思議でしょ、全部の葉に実がついてるわけじゃないのよ」
「それはもう実が落ちたからとか」
「でもね、地面にそれらしい実が落ちてないの」
「ほんまやなあ」
「実がつく葉っぱとつかない葉っぱはどうやって決まるんかなあ」
「いや、やっぱり、ほんとは全部についてたんじゃないかな、ほら、これなんか、実がついていたっぽい葉脈の突起があるじゃん」
「そうなん、そういうのもあるん。でも、まったく実の気配がない葉っぱもあるん。なんだろう、葉っぱに雄と雌があるのかなあ」
「そんなん聞いたことないけどなあ」

 花筏の紹介を終えたら、安心して斜面を降りる。駐車場は林の中で陽が当たらなくて涼しい。いったん母の荷物を車に入れる。母と私は朝からお菓子っぽいものだけの食事だったから、ちょっとなにか食事っぽいものを食べておこうか、と相談する。「何か食べたいものがある?」と母に訊くと、「そうねえ。おにぎりなら一個、お蕎麦なら軽く、なんかそんなかんじかなあ」と言う。「軽くでいいならさっきの茶店に行こうよ、私、冷たい甘酒が飲みたいから」と提案する。

 三人で茶店に入る。テーブル席に座る。母と夫は「芋もちと冷やし甘酒のセット」にすると言う。私は「芋もち入り冷やしぜんざいと冷やし甘酒をそれぞれ単品で」と注文する。しばらくするとお店の人が「冷やしぜんざいはこれから作り始めると少々お時間がかかるのですがよろしいでしょうか」と確認に来られる。「では、私も、芋もちと冷やし甘酒のセットで、三人とも同じものでお願いします」と注文を変更する。

 芋もちは直径10cmちょっと厚みは1cmよりも少し分厚いくらいのひらたいベージュ色のお餅が焼いてあるもの。「芋はなんの芋だろう。サツマイモかな、山芋かな」と言う私に、夫と母が「餅の芋といったらジャガイモでしょう」と言う。母は「北海道に旅行した時にお餅と言えばジャガイモのお餅で、もち米よりもジャガイモがたくさんとれるとこういうことになるんじゃねえ、と思いながら食べたんよ」と言う。

 甘酒はコウジから作ったタイプ。広島で甘酒というと酒粕を水に溶かして煮たものが大半だが、母は「山陰の甘酒はこれなのよ」とコウジの甘酒を飲むたびに言う。

 芋は一応でんぷん質ではあるとはいえ、そしてコウジが発酵した甘酒は糖分十分であるとはいえ、あまり食事っぽいとはいえないけれど、そのときに食べたいものを飲みたいものを身体に取り入れるのがいいよね、と、満足して茶店を出る。

 茶店では蕎麦のセットを食べる人もいれば、ソフトクリームだけを注文する人もいる。

 私たちは茶店を出て駐車場の車に乗る。観光地図に掲載されている天空リフトの電話番号をナビに入力する。ナビはピンポイントではわからないから周辺に案内するね、と、案内を始める。天空リフトというくらいだから近くに行けば案内があるよ、きっと、と、気軽な気分で出発。リフトたのしみだな。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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