みそ文

大山で目覚める

 自然と目がさめた時には、もういかにも朝な明るさで、でもまだ空気はひんやりとしている。時計を見ると五時五十分よりも少し前かな、なくらい。夫は朝六時くらいに出発予定と言っていたから、もしかするとお見送りができるかしら、と思いながら、布団の中でのびをして待つ。

 目覚めた時に行うと気持ちがいいことに気がついて最近ほぼ毎日そうしていることがある。布団の中で自分の手のひらと手のひらをこすり合わせる。手の甲も手のひらでこする。それまで睡眠モードだった心臓が活動モードに切り替わる。さらに両手を親指から順に折り曲げ小指から順に開く。それからゆるやかにグーとパーを繰り返す。足の指もグーとパーを何度かする。それから両手のひらを顔に当ててすりすりと顔の表面をこする。頬から顎、額からまぶたそして耳。顔の毛細血管に血液がぎゅんぎゅんと流れてまぶたがパチリと開く。

 昨夜夕食のときに夫は、朝ごはんとしてのおにぎり(三個入り)と、山頂で食べるためのおにぎりを、宿の人にお願いしていた。何時頃に用意しましょうか、と問われて、皆さん何時頃に登られるのですか、と夫は問い返す。暑くなるといやだからと早朝四時あるいは五時に登る方もいらっしゃいますが、ゆっくりと七時八時になって出発の方もおられます、とのこと。夫は、では五時半頃におにぎりを取りに来て六時出発の予定にします、と言う。宿の方が、朝の帳場は六時半からとなりますので、作りおきのおにぎりをフロントのカウンターに置いておきます、五時過ぎに取りにきてくださっても大丈夫です、と案内される。夫が、どれが自分のおにぎりなのかわかるように名前か何かつけていただけるのでしょうか、と尋ねると、明日山に登られるのはお客様おひとりだけですのでご安心ください、と言われる。

 夫はもうおにぎりを食べたかな、もうじき荷物を持ってくるのかな、と思っているうちに六時がすぎる。あれ、寝坊したのかしら、それとももしかしたら、もうとっくに出かけたのかな、と思い、お布団から這い出してふすまを開けてみる。スリッパをぬぐスペースのところに夫の旅行かばんがある。ああ、じゃあ、もう、とっくに出かけたということなのね。

 母が布団の中で伸びをして「あー、すっきりー。よく寝たー」と目覚める。「こんなに静かで真っ暗なところで寝るとぐっすり眠れるねえ。それにしてもここの窓から入ってくる外の空気はなんと気持ちがいいことだ」と言う。

「どうやらくんね、六時出発って言ってたけど、それよりも早く出たみたい。荷物がそこにもう置いてあった」
「まあ、そうなんねえ。今日は昨日よりも山がよく見えとるけん、上からの見晴らしもいいじゃろうねえ。どこの尾根をどんなふうに歩いたんか、どうやらくんが帰ってきたら話を聞きたいねえ。あ、みその枕の向きが昨日の夜と反対になっとる。やっぱり私のいびきがうるさかった?」
「ううん、ちがうん、エアコン消してから窓開けて風の通り道に顔を置きたかったけん、布団ずらして枕もこっち向きにしたん。かあちゃんのいびきはじっくり聞いてみたけど、うるさい、というよりは、息苦しそう、じゃったよ」

 母も夫も治療を要するレベルに微妙に到達しない程度の睡眠時無呼吸症候群傾向があるため、仰向けに寝ると弛緩した舌の筋肉が喉を塞いで気道が細くなり呼吸が浅くなりいびきのような音が生じる。横向きに寝るとそれは軽減するのだが、都合よく横向きばかりで寝ることができない。CPAPの導入も含めて各種要検討試行錯誤の分野だ。

 夜涼しく寝汗をかくこともなく肌はさらさらのままで、朝風呂欲求は湧いてこない。持参の延長コードをコンセントにさして、卓の近くでコンセントが使える状態にする。急須の中を空にして縁側の洗面台の水道水ですすぐ。ポットでぬるくなったお湯を急須にいれる。持参の携帯湯沸し器を急須のお湯の中に浸ける。湯沸かし器の電源を延長コードのコンセントに入れる。ぬるま湯からだから水からお湯を沸かすよりは早く沸くはずだけれども、それでもおそらく数分はかかるから、その間にトイレに行って顔を洗ってくることにする。部屋の洗面台でももちろん顔は洗えるのだけど、トイレの前にある広い洗面台のほうが奥行きがあって洗いやすそうだから。首にタオルをかけて部屋を出る。

 お湯が沸いたら紅茶を入れよう。持参の紙パック入りの豆乳を紅茶に加えて、自宅で毎朝そうするように寝起きの豆乳紅茶を飲もう。そのあとのことはそれからゆっくり考えるのがいいね。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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