みそ文

熱い情熱(ぱっしょん)

お正月、元日からの三日間、広島の私の実家で過ごしたとき。義妹(弟の妻)のゆなさんが、子ども達(私にとっては甥っ子姪っ子)の、いろんなビデオを見せてくれる。まだ夏の暑い時期にプールで泳ぐ映像もあれば、豪雪の中スキーに励む映像もある。学習発表会の映像も。

甥っ子むむぎーは「アリババ」で、宝を目指すという設定で、独特のステップで歩む演技をするのであるが、そのステップが誰より上手。身内びいきというわけではなく、他の四人「イリババ」「ウリババ」「エリババ」「オリババ」は、音楽にあわせたステップがどういうわけだかできていなくて、「むむぎーだけがちゃんとステップできとるね」と淡々とつぶやいた私の言葉に、ゆなさんが嬉々とする。「そうでしょー。やっぱり、おねえさんもそう思うてですー(思われますかー)」

姪っ子みみがーの担任の先生は、とても若い女性で、合言葉(スローガンかも)は、「スマイル&パッション」。発表会の舞台に映し出される「思い出の一年間」回想映像タイトルも、「smile&passion」。芸と芸の間にも、一年生全員が、折々に、「すまいる&ぱっしょん!!」と右手を挙げて叫んでる。

「へえー、なんか、えらいあつい先生なんじゃね。笑顔と情熱がテーマなんじゃ」と私が言うと、みみがーが「そうよ」と言う。するとゆなさんが、「え? 情熱? パッションじゃったん? お母さん、ずっと、発表会で、一年生が叫びようるのは、わっしょい、だと思っとった。元気よくニコニコとワッショイなんだとばかり」と、初めて知ったように言う。実際初めて知ったのだろうけど。「スマイル&ワッショイ!!」は、もうひとつ、なんとなく、うーん。

ビデオの続きを見てゆく。一年生一人一人が順番に、自分のことを発表する。「おおのゆうたです! ぼくのもくひょうは、なんとかなんやらなんやらです! がんばります!」といったかんじで、続いてゆくのだが、なにせ小学一年生、みなさん、たいへんに、滑舌が、よくなさ過ぎ。目標であるところの「なんやらなんやらなんやら」が、どうにもよく聞き取れず、「えいあんをおおゆにすることです! がんばります!」と、私には、「がんばります!」しか聞き取れない。名前すら聞き取れない。しかし、さすが、同級生のみみがーと、日々小学一年生の発声と発音を聞きなれているゆなさんは、難なく聞き取っているようだ。「え? この子、なんて言うたん?」と、いちいち疑問を挟む私に、「計算を、上手にするの、頑張ります」だと教えてくれる。他にも、「漢字の練習頑張ります」もあれば、「鉄棒の練習するの頑張ります」もある。さてさて。みみがーはなんと言うのかな。

「どてら みみがーです!」ふむふむ、名前は上手に言えたね。
「わたしのもくひょうは!」これもちゃんと聞き取れた。
「おやないおさくさんらめることれす。がんばります!」はあ???

「ビデオのみみがー、今、なんて言うたん?」と問うてみる。すると、ゆなさんが、「がんばります! って言うたけど、あんまり頑張ってないんよね?」と、みみがーに向かって確認するように問い返す。みみがー本人は、映像の中ではあんなに果敢な様子だったのに、居間では、ごにょごにょ、はっきりしない。結局、「私の目標は、お野菜をたくさん食べることです。頑張ります!」であったことが判明。みみがーの主張によれば、野菜は味が全部一緒で、食べてて面白くないから美味しくない、とのこと。刺身好きのみみがーは、魚の味の違いにはとても敏感なのに、野菜の味覚は発達途上にあるのだろうか。

そうやって、ビデオを堪能した翌日。みみがーと二人で仏壇に参る。仏壇参りは、みみがーの趣味だ(たぶん)。二人並んで手を合わせて目を閉じる。目を開けて、ふと、みみがーに聞いてみる。

「ねえ、みみがーは、お仏壇で手を合わせて目をつむってる時、どんなことを考えようるん?」
「えー、みそちゃんは?」
「私は、そうじゃねえ、いつも皆を護ってくださって、ありがとうございます、が一番多いかなあ。みみは?」
「わたしは、おやさいたべるのがんばります、ゆうて、おもようる(と、思っている)」
「そうなんじゃー。野菜食べるの、がんばるんかあ」

そのあとのお昼ご飯。なぜか他の人たちは、いろいろで皆出かけてしまい、母と私とみみがーの三人だけの食卓。いろんなお野菜のおひたしや、切ったトマトなどなど、野菜好きの実家メニュー。皆がいるならというつもりで、母が張り切って買ってきたマグロとタイのお刺身も食卓にのっている。けれど三人で食べきるのは無理そうな量。「でもお刺身、おいしいうちに食べようよ」と、母がお刺身をご飯にのせて鯛茶漬けを作ってくれる。三人で「いただきます」と手を合わせてから、はむはむと食べる。「おいしいねー、おいしいねー」と言い合いながら。刺身好きのみみがーは、「おちゃづけのおさしみ、おかわりください」と所望する。はいはい、と、のせてやる。マグロの刺身は刺身のままでいただく。醤油が美味しい「日田醤油」なので、美味しい刺身がさらに美味しい。みみがーが「まぐろ、もっとください」と、食べては所望し、食べては所望し、かなりの量を食す。三人で食べきるのは無理、と思っていた量の刺身を、みみは大半食べてしまう。

「みみ、ちょっとは、ホウレン草も食べとこうや」と声をかけてみる。
「えー、それはちょっと」
「何がちょっとなん。さっきもお仏壇でご先祖様に、お野菜食べるの頑張ります、ゆうて言うたんじゃろ?」
「あら、みみがーは、仏壇で、そんなことお話しょうるんね」と、母も興味深げである。「それなら、やっぱり、ちょっとくらいは、頑張ってお野菜食べた方がいいんじゃないん?」
「うーん、でも、また、こんどにする」と気概のない、みみがー。
「まあまあ、このホウレン草は、格別に美味しいけん、食べてみんさい」と言いながら、みみがーの小皿に入れてやる。みみがーは、ちょびっ、ちょびっ、とずつ、つまみ、ぐぐっというかんじで飲み込む。そして、「はあ。たべた。きょうはこれだけ!」と宣言する。

その必死さが、なんだかおかしくて、ついつい、突っ込みを入れてしまう。「発表会の、スマイル&パッションで言ってた、お野菜食べるの頑張ります!! は?」
みみは、照れるでもなく、真顔で言う。「またこんどでいいとおもう」

みみがー。あんたのパッション(情熱)、薄。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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