みそ文

東京スカイツリー人形焼

 仕事から帰宅したら、食卓の上に「東京スカイツリー人形焼」という名前のお菓子が置いてある。朝から山に行っていた夫に「これ、どうしたの」と訊いてみる。夫によると、空室だった西隣に新しく引っ越して来た方が引越しの挨拶菓子として持って来られたとのこと。

「関東地方から引っ越してきちゃった人なん?」
「それがなんかちがうらしい。こっちの人なんだって」
「それなのに東京スカイツリーなのは」
「出張で東京に行ってきたんで、って言ってはった」
「ほえー。引越し挨拶のお菓子を出張先で手に入れるなんてこと、思いついたことなかったなあ」
「まあ、今、東京スカイツリーは旬じゃけん引越し挨拶のネタとしてちょうどよかったんちゃう? 家族に土産買うついでじゃったんかもしれんし」
「そうかもねえ、お手頃じゃったんかもしれんねえ。わあ、見てみて、ほらここ、スカイツリーの細かい格子を焼き型で表現してあるよー。でも、これはもう全然人の形でも人形でもないよね。人形焼って、これくらいの大きさにこの材料で焼いたものであれば、形が人っぽいものであろうと、俵であろうと、スカイツリーであろうと、なんでも人形焼なんじゃね。さっそく一個いただきます」

 そのあと、夕食に出かける。ふと外から自宅マンションを見上げる。
「あれ? 隣に引っ越してきたって言ったけど、西隣、空室のままだよ。真っ暗だし、荷物もなんにもなさそう」
「ほんまやなあ。引越してくる前に挨拶にきちゃったんかなあ」
「引越し前に引越し挨拶だけ済ます方式もあるんじゃねえ」
「引越し当日荷物入れて荷解きして疲れたあとで、とか、また後日、よりも気楽なんかなあ」
「契約だけして、まだ引っ越してきてない状態で、荷物入れてない状態で、引越し挨拶のお菓子を配るのも思いついたことなかったなあ。いろんなやり方があるんじゃねえ。引越しは明日かな」
「どうなんかなあ、そこまで聞かんかったなあ、もう越してきたとばかり思ってたし。引越し挨拶の菓子はもらって食ったけど、引っ越して来るの来月だったりしたら、初のケースやな」

 東京スカイツリー人形焼は人形焼の味がした。こしあんと小麦粉の生地のカロリーが仕事でエネルギー消費して低下していた血糖値と体温をくいっと上げてくれて、全身がじみっとゆるやかにぬくもる。おいしかった、ごちそうさまでした。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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