みそ文

右手左手箸と口

 もう一年以上前のことになるかな。広島の実家で食事をするとき、私の左に夫が、私の右側に弟が、弟の向かい側に姪のみみがー(弟にとっては娘)が座っているという配置。その他のメンバーの配置については今回は省略。

 姪のみみがーが右手で持った箸で食べ物を口に運ぶのを見ては、弟が「みみがー、こうで、こうやるんで」と箸の使い方を教える。みみがーは左利き要素が多く、左手での箸の使用は円滑にできるけれど、弟としては右手も同等に使えるようにしておいてやりたい親心のようなものがあるらしく、その親心と期待に応えてみみがーは右手で箸を使う練習中であるようだ。
 弟は「ほら、見てみいや、おとうさんも左手で箸使うのだいぶん上手うなったろうが。じゃけんみみがーもがんばれるよの」と左手で箸を巧みに開閉する。

 弟は左隣にいる私に「そういうわけじゃけん、ねえちゃんが右手で食べるのに、わしの左腕が動くけん邪魔じゃろうけど、悪いのう」と言う。

「全然なんにも問題ないよ。でもすごいね。後天的に左手で箸を使えるようにしたなんて。私も字を書くのは左手で書くのを練習してだいぶん上手になったんだけど、箸とかハサミとかそういうこまかい動きが必要なものはまだ練習したことないわあ」
「左手で字を書けるほうがすごいじゃんか」
「いや、左手で字を書くのはね、右手も同時に同じ字を書く動きを形だけでもするとすごく簡単にできるし、実際には動かさなくても右手で書いているイメージを脳内でするだけでも左手の動きがラクになるんよ」
「でも、なんで左手で書こう思うたん? ねえちゃん右利きじゃろ」
「うーん、たとえば何か脳梗塞とかなにかで右手が不自由になってから左手で作業を代行する必要ができてからいきなり練習するよりも、事前に練習しといたら便利なこともあるかなあ、と思って。今のところはゴミ袋にマジックでマンション名なんかを書くくらいしか実用がないんじゃけどね。あ、あとね、鏡文字いうのがあるじゃん、左右反対の文字書くやつ、あれね、右手で本来の文字を書きながら同時に左手で鏡文字を書くとねすごいスラスラ書けるんよ」

 ここで夫が「文字はともかく、しめじくん(弟)、左手で箸使って食べられるようになったのはすごいなあ」と感心する。弟は「箸そのものを持って動かすこと自体はわりと簡単にできるんじゃけど、問題なのは口のほうなんよ。長年右手で持った箸で運んできた食べ物を入れてきとるけん、唇の開け方とかベロ(舌)の構えかたが右手仕様になっとるんかしらんけど、左手側から食べ物が来ると首を傾ける向きや角度も違ってくるしいろんなタイミング難しい」と説明する。夫は「え、そうなん、やってみる」と言って、左手で箸を持ち、「あんまり難しいことはできんけん、まあ簡単なものを」と言って何かのおかずを持って口に運ぶ。

「おっ、あっ、ほんまじゃ。口の形が、顔の向きが、左手で箸を持って左側から入れる時に、なんか難しい」
「ほうじゃろ。みみがーはまだ小さいけん、この前まで大人に食べ物を口に運んでもろうたりしようたのもあるし、右からでも左からでも前からでもどういうことないみたいなんじゃ」
「うーん。不思議ー。右手でナイフ持って左手でフォーク持ってなにか突き刺して食べる時にはもうそれ用の口の形に慣れとるんじゃろうか。箸だとなんかフォークとはかんじが違うなあ」
「じゃろ、じゃろ。まあ、そういうわけじゃけん。みみがーはがんばれよ」
「ほんまやなあ、がんばれやなあ、応援だけはさせてもらうわ」

 みみがーはきっと本人にとってちょうどよく便利に上手に両手を使いこなす人として大きくなっていくことであろう。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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