みそ文

おしっこの意気込み

 職場でお薬をお渡しする準備ができあがったそのときに、そのお薬を受け取って飲む立場であるお子様(約四歳の女児)が「おかあさん、わたし、おしっこ」と言う。女の子のお母様は「すみません、トイレお借りしていいですか」と訊かれる。「はい、もちろん、どうぞ、和式なんですけど大丈夫でしょうか」と案内する。無事にトイレで排尿を済ませて女の子とお母さんと弟くんが連れ立って出てくる。

 その後、お母様にお薬の説明をしている間、排尿を済ませた女の子は落ち着いて座っておもちゃで遊んで待っているけれど、弟くん(二歳前くらい)のほうがしきりにお母様にまとわりついて「おしっこ、おしっこ、おしっこしたい」と訴え続ける。お母様は、おねえちゃんのときにはすぐにトイレに促されたのに、弟くんには「帰ってからしようね」とおっしゃる。
 
「あの、もし、よろしければ、もう一度、お手洗いに行ってこられる間、お待ちいたしますよ」
「いえいえ、いいんです、ありがとうございます、この子、まだオムツなんで、自分ではトイレでできなくて、まだオマルでの練習中で、それも成功したことがないんです。だからうちのオマルとトイレで上手にできるようになったら、外のトイレも練習しようね、と言ってあるんですけど、おねえちゃんが外のトイレを使うとかっこよく見えるみたいで。家でのオマルやトイレでの練習もこれくらい真面目に積極的になってくれるといいんですけどねえ」
「あらあ、そうでしたか。そういうことなら、弟くんには申し訳ないですが、お薬の説明続けちゃいますね」
「はい、そうしてください、お願いします」

 その間もその後も弟くんは「おしっこ、おしっこ」と訴え続け、会計が終わってお母さんとおねえちゃんが帰る状態になっても「おしっこする」と言い続ける。
「よかったら、トイレに行くだけでも行って試してみられますか? ご自宅ではできなくても外でならできちゃうとかあれば」と言ってみる。 お母様は「ありがとうございます、でも、それは既に何度かやってみたんですけど、ほんとに全然まだまだなんで」と断られる。

 そうしている間にも弟くんは「おしっこ」と訴え続けていて、その意欲のような気概のような排泄コントロールに関する志の高さに感心して、私も事務の同僚も思わずその子に微笑みかける。お母様が「ほら、お店の人が笑ってはるやん、もうわかったから、おしっこはもういいから」と弟くんに言われる。
「ごめんなさいねえ、あんまり可愛くて、つい」と事務の同僚が言う。続けて私が「なんというか、おしっこを自分でしようという意気込みと志がただことでなく立派ですよねえ」と言うと、お母様が「うちでもこの意気込みと志を発揮してほしいんですけどねえ、うちでは全然なんですよねえ」と、ため息まじりにおっしゃる。

 ご自宅でもここでの意気込みと志と意欲と気概が再現されて、おしっこもうんちも自由自在になる日はきっともうすぐそこだ。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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