みそ文

乳がんの精密検査で返り討ち

 先月の中頃に、乳がん検診を受けた。乳がん検診は視触診は以前からずっと、マンモグラフィは四十歳になってからほぼ毎年受けている。子宮がんの検診も三十歳を過ぎた頃から毎年受診している。
 乳がんに関しては自己触診も月に一回以上はしている。しこりらしきものは触れないし、これといった異常は何も感じないから、検診はそれでもあくまでも念のための安全確認、という気持ちで受けている。

 これまではそうして受けた検診の結果はいつも異常なしで、念には念を重ねて毎年異常のないことを確認しているかんじだなあ、と思いながら、「異常はみられませんでした」の結果通知書に目を通してきた。

 それが。先週の土曜日に届いた乳がんマンモグラフィ検診結果に、「なるべくすみやかに精密検査を受けてください」と書いてある。
 あらあら、むむう。自己触診でも検診当日の医師の触診でも異常なしだったのだけど、さすがマンモ、人間の指先では感知できないものも写す力があるのねえ。

 さてどうしたらいいのかな。精密検査をすすめる通知の紙の裏側に書いてある精密検査実施医療機関で精密検査を受ける手はずを整えればよいのだな。
 うちから車で十分かからない近くの病院で精密検査が受けられるらしい。ほうほう、と、その病院のホームページを見る。乳腺外来は週に一度水曜日の午後のみなのか。
 ということは、水曜午後のどこかで予約を入れればいいのかな。月曜日の朝になったら予約の電話をかけてみよう。

 はてさて。マンモグラフィで要精密検査になったからといって、乳がんである確率はそう高いわけではないとはいえ、自分の乳房から脇下リンパにかけての手入れを見直す機会ではあるのかもしれない。
 お風呂上りに顔と首筋のスキンケアはするし、気が向けばデコルテのスキンケアもするが、乳房と脇下のスキンケアはしていない。
 まずはそこからやってみますか、と、お風呂上りに化粧水を胸と周辺にもつけてマッサージしてみる。

 すると、おや、私の胸、なんか冷えてるような気がする、と気がつく。そういえば、首巻き、レッグウォーマー、二の腕ウォーマー、手首ウォーマー、腹巻、肩掛け、腰巻き、などで保温することはあっても、胸の保温ってしたことないなあ。
 病気としてのがんがあるにしてもないにしても、細胞を温かく保つのは、がん細胞が自主的に消滅するシステム上大切なことだから、胸、温めましょう、と思う。

 貼るカイロをシャツの上から胸に貼る。ううむ、カイロを胸に貼るのは初めてだわ。しかし、おお、ぬくくて気持ちいいぞ。しかも、胸が温まってきた勢いで、最近なんとなく背中の真ん中の少し上辺りに感じていた抜けるような穴のあいたような感覚があった部分の穴が閉じてきた気がするぞ。
 これまでは、この抜けたような穴があいたような感覚のするところにカイロを貼っていたけれど、なかなか穴が埋まらなくて、この「気」が抜けるような穴はなんだろうなあ、と思っていたけど、表側の胸を温めることでこの穴が埋まるとは。

 さて、それから、あとは、胸の機嫌をとるために、何をしたらいいかしら。そうだ。胸の肌と細胞が喜ぶような素材のブラジャーをひとつ買ってみよう。タグは外付け、素材はオーガニックコットンで、アトピー肌アレルギー肌の人向けとも言える製品。
 それから同じシリーズで、上半身全体が喜ぶように、これも肌が気持ち良い素材の長袖インナーをあつらえよう。
 あとは、オーガニックコットンニットのボディウォーマーを折りたたんで胸のウォーマーとして使ってみることにしよう。
 これまで手をかけていなかった胸の手入れも、いざ始めるとなるとなんだかわくわくしてたのしい。

 もちろん、もしも、病気としてのがんが見つかりました、という展開になったときのことも考える。病状によって必要となるであろう対応策をひととおり認識する。
 けれど、もしも、病気としてのがん細胞が見つかったとしても、これまでほぼ毎年検診を受けてきての発見であれば、超早期発見として対処することができるだろう。
 そうだとしても、通院するとなるとスケジュールの調整が必要になるなあ。転職入社早々の超新人の立場で、そういう事態になるのは少々以上にこころ苦しい部分はあるけれど、そのときはそのときで、丁寧に協力をお願いすることにしよう。

 今日になって、ではでは、と、精密検査の予約を入れましょう、と思い病院に電話をかける。来週の水曜日あたりだと、私の仕事の休みが取りやすいシフトの日でいいな、と思いつつ。
 ところが、水曜日の午後の乳腺外来は精密検査用ではなく、一般の乳がん検診のためのものなのだと案内される。そして、乳がん検診の結果が出た上での精密検査は予約なしで午前中随時受け付けとなりますから、いつでも午前中に来てください、とのこと。
 えーと、ということは、今日でもいいということですか、と尋ねると、はいどうぞ、と言われる。
 精密検査にはどのくらい時間がかかるものでしょうか、と質問すると、そうですね、何種類の検査を行うかにもよるのですが、少し長めにかかるつもりで、お昼過ぎくらいまではかかるかんじで、思っていてくださるほうがいいかなと思います、とのこと。
 そうですか、では、今日、これから伺うようにしてみます。

 それから、職場に電話をかける。上司である管理薬剤師に「実は、先月受けたマンモグラフィの検査結果が要精密検査で届きまして」と伝えると、「あらあ、それは心配だわねえ」と言われる。
「なんだか、いやん、なかんじですよねえ。それで精密検査を受けようと思いまして」
「予約はいい具合にとれたの?」
「それが予約制かと思ったら、予約なしの随時だそうで、今日これからでもということなので、これから行こうかと思いまして、今日の出勤、検査が終わり次第の出勤、ということにさせていただいてもよろしいでしょうか」
「うんうん、大丈夫よ、そんなの受けられるものは早く受けてきて」
「ありがとうございます。では、よろしくお願いいたします」

 そうして、病院に行く。以前の職場の健康診断で利用していた病院だけど、改築された病棟が新しくて気持ちがいい。駐車場も広くて使いやすくなっている。
 受付を済ませて、指定された場所で診察を受ける。

 集団検診のマンモグラフィの写真は、二人の専門医が見ていて、そのうち一人は「左右ともに異常なし」の診断を下し、もう一人の専門医は「左A(胸の内側上がA、内側下がB、外側上がC、外側下がD、という所番が付いているらしい)にカテゴリ3の異常所見あり」と診断を下しているとのこと。カテゴリ3とは約10%の可能性で乳がんの場合がある分類。

 ドクターが視診ののち、乳房、脇下リンパ、甲状腺と、順に触診。特別問題はないですね、ということで、超音波検査とマンモグラフィとで診て、そこでさらに必要があれば細い針で細胞を採取する検査をしましょう、とりあえず、マンモグラフィと超音波検査を受けてから戻ってきてくださいね、とのこと。

 マンモグラフィはつい先月も受けたばかりだから、勝手がよくわかるせいなのか、乳房を圧迫する痛みがさらに少ないように感じる。放射線技師の人に「マンモグラフィ、以前よりも圧迫の痛みが少なくなってきた気がするんですが」と言うと、「人間のからだも変化しますので、痛みの感じ方が変わることがあるんですよ」と言われる。「そうなんですか。もしかして、マンモグラフィの機械自体も痛みを感じにくい方向に進化してるとかってありますか」と訊くと、「ああ、それもあるかもですね。肌に触れる部分の素材や造りがだんだんよくなっていますから」ということで、やっぱりな、と思う。あとは、技師さんには言わなかったけど、きっと放射線技師さんたちの腕もよくなってきてるんじゃないかな、と思う。

 マンモグラフィの写真を持って、今度は超音波検査へ。横たわった状態で、ゼリー状のものを胸に塗って、超音波の機械で胸全体をなでるようにしながら画像をチェック。
 先に撮影したマンモグラフィの写真を、専門医の人が見るときに、ルーペを使って近づいて見て、それから今度は椅子の背もたれにのけぞるようにして写真から目を離して見て、というふうにされてて、へえほうほう、マンモグラフィの写真はこんなふうにして見るものなのか、と感心する。

 マンモグラフィと超音波の検査結果を持って、もう一度診察室へと戻る。
 ドクターは、撮り直したマンモグラフィでも超音波でも異常は見られませんでした、と説明してくださる。
「集団検診でマンモグラフィを受けた時期が、生理開始日の一週間位前だったせいで、乳腺のはりが白っぽく写ったのかもしれません。マンモグラフィを受ける時期を選べるようであれば、生理から二週間くらいの間が余計な物が写りこみにくいので、その時期を選ぶようにしてみてください。あとは、定期的な自己触診で指先でしこりに気づいてから見つかった場合のがんでも、そのほとんどは2cm以下ですし、それくらいの大きさなら今では乳房温存で患部のみの切除手術で対処できますから、しこりが見つかっても、マンモグラフィで異常が見つかっても、そんなに心配する必要はありません。毎月の自己触診を続けて、一年か二年に一回は乳がん検診を受けて、というかんじで続けてくださいね」

 そうなのだ。マンモグラフィの時期、選べるなら選びたいものなのだけど、近年は乳がん検診受診の意識が高くなってきたのはよきことであると同時に、乳がん検診人気の高まりに伴って、マンモグラフィの予約がとりにくくなり、ここならなんとか予約がとれます、という日がちょうどよく自分の月経から二週間くらいの間にあるかどうかがなかなか難しい。

 でもまあ、それはそれとして、とりあえず、ああ、よかった、これでいったん一安心。今日の仕事にはほんの少し遅れるだけで済みそうなのも、よかった。

 職場に着いて、上司にお礼と報告をする。上司は「そうか、そうか、一安心やね」とうなづく。
 それから仕事をして、仕事が終わり、同僚みんなが帰る支度をし始めたときに、「今日の私の面倒くさかった自慢を見てもらってもいいですか」と言って、住民検診マンモグラフィの「要精密検査」通知の紙をカバンから取り出して開く。
 上司はもう経緯を知っているからニコニコと見ていらっしゃるだけだけど、別の薬剤師の人と事務の人は「これいつの? いつ精密検査受けるの?」と少し驚いて訊かれるから、「先月住民検診のマンモグラフィ受けて、今日の午前中に精密検査受けてきたんです。おかげさまで異常なしでした。でも毎年マンモグラフィ受けてきて、精密検査受けるのは今回が初めてで、なんだか面倒くさかったです」とこたえる。

 すると、事務の人は「私なんか、乳がん検診、毎回必ず精密検査よ。太い針刺して細胞取る検査までしたけど異常ないの。もう何回精密検査受けたか数えきれん」と言われる。
 もう一人の薬剤師の人は「私もこの前精密検査受けてきたところよ。あれって、殆どはなんともないっていっても、やっぱり、精密検査受けろ言われたら一応受けるけど、いちいち面倒くさいよねえ。私もこの前と、だいぶん前にも受けてるから、精密検査はけっこうあること、大丈夫、大丈夫、心配ないよ」と言われる。

 ああ、うう、そうなんですか、そんな、乳がんの精密検査の先達の方々がいらっしゃるとはつゆ知らず、初回の精密検査ごときで面倒くさいの自慢をしようとするなんて迂闊でした、ちっとも自慢にならなかったですね、とうなだれる。同僚たちは、うん、まだまだ、全然やね、と、先達らしくそりかえってから、でもよかったね、と言ってくださる。

 ひとまずはこの安心をぎゅっと抱きしめて、今後の自分の乳房お手入れ計画をじっくりとゆっくりと練っていくことにしましょ。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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