みそ文

富士山と日光東照宮と我が家

 七月十六、十七、十八日の連休を利用して、妹夫婦がわたしの家に遊びに来た。広島から新幹線に乗って、京都で北陸に向かう特急サンダーバードに乗り換えて。三連休とはいっても、義弟(妹の夫)は土曜日の午前中も働くから、実質2.5連休ではあるのだけど。
 前回ふたりがこちらに来たときには高速道路を自家用車で走行してやってきた。今回JRの駅に出迎えに行ったら、会うなり、ふたりともが「JRだと近い! はやい! 快適!」となんだか大喜びしている。

 七月の十一日だか十二日だかその頃に、突如妹が電話をかけてきて、「今度の連休、そっちに遊びに行ってもええかね? ねえちゃんは無職で暇じゃけんええじゃろ? あとは、おにいさんがいいかどうか訊いてみてくれん?」と言ってきた。

「うん。いいよ。どうやらくんもいいって言うと思うけど、一応訊いてから返事するね。ただ、どうやらくんは、土日は富士山に行っとっておらんけん、日曜日に富士山から帰ってきたときに、やぎ(妹)ともっきゅん(義弟、妹の夫)がうちにおってもいいかどうか訊くよ」
「えええっ。富士山? なんで? どうやって?」
「なんでかはようわからんけど、富士山のてっぺんに登りたいらしいんよ。なんかね、どうやらくんね、斜面を登り降りすることや小高いところのてっぺんに登って行くのが好きみたいなん。どうやって行くかっていったら、こっちの駅前からバスに乗って現地の登り口まで連れて行って連れて帰ってきてくれるツアーに入って行くんだって」
「へえ、そうなんじゃあ」
「そういうわけで、日曜日の夜と月曜日には、やぎともっきゅんもうちにおったら、どうやらくんの富士語りを聞くことになるけど、それでもよければ」
「わかった。まだ、旅行の行き先、何ヶ所か候補にあがってて、もっきゅんと検討中じゃけん、もしかしたらそっちには行かんことになるかもしれんけど、行っても大丈夫な候補地にしていいかどうか、おにいさんに訊いといてほしいんじゃ。あのね、ほら、うち、もっきゅんが、どてら(わたしと妹の実家の苗字)の会社(両親が経営する小さな会社を現在は弟が引き継ぎ、一年と少し前からその会社業務に義弟も参加することになった)に就職してから、毎日、どてらの事務所(実家の住居家屋のほぼ隣にある建物)でどてらの人らに会うじゃん。にいちゃんとか、とうちゃんとか、かあちゃんとか。まあ、仕事じゃけんしょうがないんじゃけど、私なんか、自分の実家じゃいうても、月に一回か二回、行くか行かんかなのに、もっきゅんは妻の実家に毎日行くことになるけん、なんというか、どてら以外の別の刺激が欲しくなるみたいなんよねえ。それで、もっきゅんが、やぎちゃん、おれ、どてら以外のところに行きたい、みそちゃんのところにまた行ってもええかなあ、って言うけん」
「ほう、そうなんや。わかった。今夜どうやらくんに訊いてから、そのあとでメールするね」

 夜になって帰宅した夫に、妹からそういう内容の電話があったのだ、と話す。夫は「もちろん、どうぞー。歓迎歓迎。おれは、土日おらんけど。富士山に行ってて、いないのさっ」と言う。

「ありがとう。じゃあ、やぎに、どうやらくんも、どうぞー、歓迎歓迎って言ってるよ、って伝えとくね。けどさあ、もっきゅんね、どてらの人々とは異なる刺激を求めて旅に出たいのに、その行き先が、わたしのところ、妻の姉のところでは、あまりに限りなくどてら風味、妻の実家風味だと思うんだけど、彼はそれでいいんじゃろうか」
「それは、おれもそう思う。うちは、人口の半分がどてら出身のみそきちでできてるけん、どてら文化がかなり濃いと思うけどなあ。もりおかくん(もっきゅんを苗字で呼ぶと「もりおかくん」になる)は、それで、ええんかなあ。まあ、それでええけん、こっちに来ることを思いつくんじゃろうけどなあ。本人がいいんなら別にいいけど」
「うん、まあね、まだうちも旅行先の候補のひとつ、の段階らしいけん、もっと他に、どてらの香りが全然しない旅先にするかもしれんしね。まあ、もし、来ることになったときには、よろしくお願いします、ということで」
「うん。わかった。おれはその日は富士山に行っとるけん、こっちにはおらんけどっ」
「うんうん。富士山ツアー催行されることになってよかったねえ。たのしみだねえ」

 それから、妹に宛ててメールを書く。「どうやらくんに訊いてみたら、どうぞー、歓迎歓迎ーって言ってるから、どうぞ」送信。
 妹からは、「ありがとう。まだ、ねえちゃんのところにしようか、日光東照宮にしようか、迷い中じゃけん、決まったらまた連絡するね」と返信がくる。

 夫に「やぎともっきゅん、旅行先、うちにするか日光東照宮にするかで迷い中なんだって。どてらから離れてリフレッシュするという意味では、そこは、うちよりも圧倒的に日光東照宮じゃろう、という気がするねえ」と話す。
 夫は「それは間違いなく日光東照宮じゃろう。いいなあ、日光東照宮。おれも前から一回行ってみたいと思ってるんだよなあ。もりおかくんとやぎちゃんには、うちに来るのは歓迎だけど、日光東照宮おすすめー、って伝えといて」と言う。

「どうやらくん、日光東照宮には行ったことがなくて一度行ってみたい立場なのに、なんで『おすすめ』できるん? おすすめ、っていうのは、自分が一度以上行ってみるなり体験するなりしたことに関してできるものなんじゃないの?」
「でも、日光東照宮は有名じゃん。行ったことなくても行ってみたいんじゃけん、おすすめしていいと思う」

 そ、そうなのか? おすすめ、って、そういうもの、なのか? どうも夫の『おすすめ』に関する価値観や精神性のようなものが、わたしの腑にすとんと落ちない。

 なにはともあれ、その後、結局、妹夫婦の旅先は、日光東照宮ではなく我が家となった。
 土曜日の早朝、富士山に向けてうきうきと出発する夫を玄関で見送る。それからまた少し寝る。目が覚めてからゆっくりと、妹と義弟用のお布団を敷いたり、いろいろと準備して、夕方に駅の改札口で妹夫婦を出迎える。
 義弟が「せっかくこっちに来るんじゃったら、むむぎーとみみがーも一緒に連れてきてやろうかと思って、子どもだけ連れて行こうか、いうて、あにき(わたしの弟。妹の兄)に言うてみたら、あにきもけっこうノリ気で、すぐにゆなさん(弟の妻)にむむぎーとみみがーのスケジュールを確認してくれたんじゃけど、むむぎーもみみがーもそれぞれに習い事で泊まりがけの合宿の予定が入っとったけん置いてきた」と言う。
 義弟よ。そうやって義理の甥や姪をかわいがってくれるのは、いつもほんとうにありがたいけれど、どてら風味から離れてリフレッシュ旅行しようというときに、むむぎーやみみがーというどてら風味の濃い人たちの同行は思いつかなくていいから。まずは君のリフレッシュに集中しようよ、ね。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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