みそ文

LED歓迎式典前夜祭

 今週の日曜日に、近所の家電屋さんに行った。わたしが卓上で用いるスタンドの灯りは40Wのミニクリプトン電球なのだが、これが夏場はその発熱があつい。
 わたしの自室の天井の灯りも、球形の白熱灯をふたつつけるタイプなのだけれど、これも夏になるとあつくなる。だから、夏には白熱灯から白熱灯型蛍光灯に交換してあつくないようにして過ごし、また暑さが和らぐ季節になったら白熱灯に付け替える。冬にはこの白熱灯の熱が、暖房がわりになってほんのりと温かい。

 昨今は、節電が重要課題だから、白熱灯の製造そのものが順次終了となり、将来的にはどうしても白熱灯でなければならないような業種や場所のみでの白熱灯使用となる方向にありそうだな、とは思う。
 けれど、これはほんとうに、あくまでも、個人的な好みと趣味なのだけれども、わたしは白熱灯の明かりを好んでいる。電気代はお支払いいたしますから、節電は他のところできっちりがんばりますから、わたしが生きる残りの人生の間だけでかまいませんので、わたしのことは白熱灯の明かりと温熱が必要なビニールハウスのお野菜か何かだと思って、白熱灯を使わせてやってくださいませ、と、誰にというわけでもなく請う。

 時代はエコなのに、省エネなのに、節電なのに、CO2排出規制なのに、との指摘も批判も甘んじて受ける覚悟を持って、わたしは白熱灯が好きなのだ、と告白する。
 白熱灯の明かりの色が、明かりの熱が、その色合いが、その明かりに照らされる世の姿そして人の姿が、実にわたしの好みでありツボなのだ。人の好みやツボというものは、たいていの場合、ある程度は仕方がないとあきらめたりわりきったりしてよい種類のものだと思う。
 当然だが、それがいくら好みやツボであっても、犯罪に相当するようなことは撲滅すべきであるという意思と確信を抱いている。けれど、わたしの白熱灯への愛と白熱灯の使用は、現段階では問題なくまったく合法であり、犯罪行為でもなんでもないはず。

 日々の生活では蛍光灯にもおおいにお世話になっている。しかし、若干聴覚過敏気味のわたしにとって、蛍光灯はその点灯時および点灯中独特の微細な振動音が、ときに耳に負担となる。
 今のところ、わたしの身の周りの世の中は将来この蛍光灯とはまた別のLEDなるものを光源として用いましょうよ、という方向に進みつつある。
 今はまだその単価が高いが、将来的には日常的な光源として廉価で提供されるようになるのだろうな、と予想する。

 そこで、冒頭に出てきたわたしの卓上スタンドの光源であるミニクリプトン電球に話がもどる。これまでは、夏場にそれほどこのスタンドを用いることがなく、ミニクリプトン電球が発する熱が気になることもなく過ごしていた。
 しかし、このたび職を失い、せっかく時間があるこの機会に、これまで書きたいと思って脳内下書きはしてあるものの、キーボードで打つ段階まで辿りつけずにいたものを書き出したいという思いと、みそ文平成二十一年版と平成二十二年版の製本化のための校正作業をたくさんできるといいのではないかな、と思いついた。
 そこで、PC作業する画面と手元を、このスタンドで照らして作業をしましょう、とPC前にスタンドを設置してみたところ、あつい。
 これから夏に向けて気温が上昇する中で、発熱の激しい場所において作業を行うのは生物としてつらい。
 わたしは白熱灯の明かりを愛してはいるけれど、自分の身体を熱中症の危険に晒してまでその愛を貫くかというとそれはない。わたしの白熱灯との逢瀬は、涼しい時期と寒い時期限定で十分満足できる。ただし、一生の涼しく寒い時期には継続して使用したい。つまり断続的に一生ずっと白熱灯との愛と逢瀬を重ねたい。

 というわけで、このスタンドのミニクリプトン電球の代わりに夏場に使用するためのLED電球を購入することにした。
 日曜日に、近所の家電屋さんにて、事前に調べてこれにしようと決めていたものを店頭で確認する。実物が店頭で点灯展示されており、なるほど、けっこう明るいな、ということと、手をかざすと白熱灯ほどではないけれど思ったよりも温かいな、ということと、思った以上に値段が高いな、という印象を持つ。微細な音に関しては、店内の各種音声が大きすぎるため、店頭では判断できない。

 これにしようとおもうのだというわたしの意思表示に対して、夫は「あと何年か待ったら、何年もしなくても半年待ったら、もっと安くなると思うけど」と言うけれど、熱くない電球が必要なのは半年後ではなくてこの夏であり、何年後かはわたし自身が生存しているかどうかすらあやしいものの、生きている場合は半年後および数年後には就職就業していたい。
 店頭で見比べて若干他社の製品とどちらにしようか迷うけれど、結局予定どおりの品を買うことにして店頭の箱を手に取る。そのときにわたしが手に持った箱が他の箱に少しぶつかり、他の箱たちがふたつくらい落下する。
 夫が大慌てで、すべての箱を地面に落ちる直前に手で受け止める。

「あ、あ、あ、あ、あ、危ないじゃないかー。こんな高価なもの落として壊したらどうするんだー」
「どうやらくん。ここにあるの全部空箱だよ」
「え? あ、ほんとだ。軽い」
「うん。軽いから少しの衝撃で落ちるんよ。LED電球はたぶん高価だからかな、どこのお店もだいたい空箱対応にしてるところが多いんよ」
「万引き対策?」
「だと思う。レジで空箱を現品に交換する方式。空箱対応するときには、中におもりになるものを入れて少し重量をもたせたほうが、安定感がいいんだけどね。わたしは薬の空箱には不要になった輪ゴムや厚紙を詰めてたよ」
「そうだったんや。知らんかった。知らんかったけん、慌てて受け止めてしもうた。かー。無駄な動きをしたじゃないかー」
「うーん。よくわからんけど、今の瞬時の判断と動きは、来月富士山に登るときのトレーニングとして有効なんじゃないかな」
「いい加減なことを言うなー」
「さて。レジでお金払ってくるね」

 そうしてレジでそのLED電球を購入しようとしたところ、店員さんが「現品をお持ちいたしますので、少々お待ちください」とバックヤードに入ってから出てきて、「申し訳ございません。現在欠品しておりました」と言われる。

「では、注文と入荷後の取り置きをお願いしてもいいでしょうか」
「はい。お取り寄せでかまいませんでしょうか。すみません。では、入り次第お電話差し上げますので」
「支払いだけ今日済ませてもいいですか。期限が今日までの創業祭10%割引券を使いたいんです」
「はい。もちろんご利用ください。では、3980円から398円お引きいたしますね」
「あの、入荷の電話連絡を自宅にくださったときに、もしも不在の場合は、留守番電話にメッセージを残していただけますでしょうか」
「かしこまりました」

 というやりとりで支払いを終えて、領収証兼商品受け取り時提示用のお客様控えの紙を受け取る。
 あれから月火水木と経過したけれど、そういえばまだ電話がかかってきていない。できれば土曜日か日曜日には受け取りに行きたいと思うのだが、実は入荷してるのに連絡し忘れ、ということもあるかもしれないし、入荷予定を訊くという形で問い合わせの電話をかけてみることにする。

 一度目の電話。こちらからお店に。
「先日の日曜日に、東芝のLED電球を注文したどうやらと申します。商品の入荷予定日がわかるようでしたら教えていただきたいのですが」
「はい。どうやらさまですね。お電話番号うかがってもよろしいでしょうか」
「はい。**-****です」
「こちらの商品ですね。確認してから折り返しお電話させていただいてもよろしいでしょうか。こののちはご在宅でいらっしゃいますか」
「はい。だいじょうぶです。家におります」
「では、すぐにお電話いたしますので、いったん失礼いたします」

 二度目の電話。お店からかかってくる。
「たいへんお待たせいたしました。確認してみましたところ、メーカーのほうで欠品しておりまして、入荷は早くても七月上旬の予定ということなんです」
「そうでしたか。それは少し時間がかかるんですね」
「申し訳ございません」
「同じ系列の他のお店にこの商品の在庫がもしあれば、それを取り寄せていただくということは可能でしょうか」
「他店の在庫を見てみますね。こちらの商品は、どこのお店も欠品しているか品薄かになっておりまして、十分な在庫があるお店はないようです」
「そうですか……(あえてたっぷりと間をもたせてみる)」
「系列店で在庫のあるところからこちらのお店に移動が可能かどうかを確認してみますので、もう一度、いったんお電話切って、のちほど、かけ直してもよろしいでしょうか」
「はい。お手数をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします」
「では、少々お待ちください。いったん失礼いたします」

 三度目の電話。お店からかかってくる。
「お待たせいたしました。確認いたしましたところ、他のお店から取り寄せができることになりましたので、二三日中には、もしかすると早ければ明日のうちに、ご用意できるかと思いますので」
「そうですか。ありがとうございます。助かります。では、またそれが入りましたら、お電話いただけますでしょうか」
「はい。かしこまりました。お時間かかってすみません。よろしくお願いいたします」

 という電気屋さんとのやりとりが今日あったのよ、と夕食後に夫に話す。夫は「おいおい、電気屋、それでええんか。こっちから電話せんかったら、七月上旬に入荷するまで二週間以上ほっぽらかしにするつもりやったんかい」と暴れるふりをしながら言う。

「うん。わたしが流通の仕組みを少し知っていて、欠品なら店間移動の方法もあることを知っていて、顧客としての演技力もまあわりとあるほうじゃけんこれで済んでるけど、お客さんによっては十分クレームやトラブルになりうるケースかもしれない」
「そら、そうやろう。すぐに入らんなら入らんで、そのことを連絡しておいたほうがええと思うぞー、電気屋ー」
「いまどきじゃけんねえ、事前の予告なく数日中に手に入らない、とか、その週のうちに手に入らないという場合には、いったん欠品状態で入荷が遅れる旨を連絡したほうが、商いとしては円滑だよね」
「そこは円滑であるべきじゃろう」
「でも、七月まで、待って待てないわけじゃないんだけど、もうすでに今現在使ってるスタンドが熱いのが気になるけん。今のうちに入力作業しようと思ったらできるだけ早くほしかったんじゃ」
「もうお金出して買うたもんは早う使い始めたいじゃん。買うこと自体がまだなら、もう半年とか一二年待てば、と思うけど、もう買うたんじゃけん使おうやあ」
「うん。我が家で初のLED電球、たのしみじゃね。明るさや色合いがちょうどいいといいね。音もわたしの耳に気にならんかったらいいね」
「高いもんなあ。満足したいよなあ」

 我が家に仲間入りする初のLED電球は、40Wのミニクリプトン電球のところに使用可能な、E-CORE[イー・コア]LED電球(ミニクリプトン形5.4W E17口金)。
 使用中の電気スタンドはおそらく十年近く前に購入したもので、「警告! 適合ランプ、ミニクリプトン電球40Wまで。火災の恐れあり、指定ランプ以外の使用禁止」というシールが貼ってあるけれど、LED電球の存在をまだ知らない当時の家電製品の警告案内シールに従ってLED電球を使ってはならないと判断しなくてもいいと思うから、とりあえずLED電球なるものを初めて使ってみることにしたそんな夏の少し手前。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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