みそ文

踊るりららとDVD(後編)

 同僚が母の日のプレゼントとして、お嫁さん(息子さん夫婦)からもらったDVD。同じ内容のものを一枚わたしにも分けてくれたから、自宅に帰宅して、早速視聴。

 DVDの内容は四部で構成される。
 第一部は、りららちゃんが保育園の学習発表会で「プリキュア(女児に人気のあるアニメーション)」の踊りを踊ったときに撮影されたもの。同年代の女児七名くらいが、異様にのりのりで踊りまくる。
 第二部は、やはり学習発表会で撮影されたものなのだけど、こちらは、女児男児合同で、歌も踊りもあるけれど、台詞もある「劇」。りららちゃんの役は「てるてる坊主」。てるてる坊主の衣装がとてもよく似あっているのだけど、りららちゃんの髪はツヤツヤ過ぎて、キューティクルがツルツルしているせいなのか、衣装の一部であるかぶりもの(てるてる坊主の坊主頭の形の白い半円形帽子)が、つるりつるりとずれて、何度か落下する。そのたびに舞台のはしにいらっしゃる保育士の先生が、黒子のようにすみやかに現れて、そのかぶりものをりららちゃんの頭にぽいとのせる。

 そして、第三部は、りららちゃんの自宅にて撮影されたもので、その内容は最新の「とんでったバナナ」。
 りららちゃんは、昨年の秋に同僚が買ってプレゼントしたピンク色のドレスを着ている。同僚がドレスとセットで購入した髪飾りも頭に飾って。
 りららちゃんは、カメラの前に立つと、何かの合図に合わせて(おそらくりららちゃんのおかあさんからの指令のサインに合わせて)、「ばあば。いつも、ありがとう」と言う。ばあば、というのは、りららちゃんが祖母である同僚のことを呼ぶときの呼び方。
 りららちゃんは続けて、「きょうは、さいごまで、いっしょうけんめい、がんばります!」と言う。それから、「ええと、ええと、ええと、そうだ、さいごまで、いっぱい、がんばります!」と宣言。

 画面の中で、んちゃんちゃんちゃんちゃ、んちゃんちゃんちゃんちゃ、とメロディが始まる。りららちゃんは、ピンクのドレスを着た状態で、「バナナがいっぽんありました。あーおいみなみのそらのした」と歌いながら踊り始める。りららちゃんが踊ると、ドレスのスカートの斜めのラインと裾の線が軽やかにたのしげに揺れる。
 「とんでったバナナ」の一番はとても元気よく、自信満々に、すべての歌とお遊戯を上手にこなす。二番、三番、四番になると、歌詞がだんだんあやふやになり、あやふやなところの歌は声が小さくなり、でも、二番でも三番でも、最後の共通歌詞部分の「バナナはつるんととんでった、バナナはどこへいったかな、バナナンバナナンバーナーナン」のところは常に大きな声で、自信たっぷりに歌って踊る。
 
 その自信たっぷりなところと、自信なさそうなところの、対比があまりにも面白くておかしくて、うひゃうひゃうひゃひゃ、と笑いながら見ていたら、夫が「なになに?」と訊くから、「会社の人のお孫さんがね、わざわざ、とんでったバナナを踊りなおしてくれたの」と説明してDVDを見せる。
 夫が「ちゃんと歌って踊れるところと、あんまり自信がないところの、違いがひと目でわかるな」と言うから、「でしょ」と言って一緒に笑う。
 それでも、りららちゃんは、ちゃんと最後まで、いっぱいがんばって、六番まで踊って歌って、「もぐもぐもぐもぐ食べちゃった」のところまで踊りきる。

 そのあとが第四部で、りららちゃんと、弟のるうとくんが、自宅の居間で仲良く遊ぶ日常の風景。仲良く、といっても、るうとくんが、りららちゃんの持っているものをほしがり、りららちゃんがそれをるうとくんに手渡して、別のもので遊ぼうとすると、るうとくんは今度はりららちゃんが手にしたその別のものを狙ってほしがる、の繰り返し。
 るうとくんがハイハイする姿が、同僚から噂で聞いていた「おしりプリプリ」なハイハイで、そのおしりのプリプリも堪能できる構成。

 きっと、お嫁さん(りららちゃんのおかあさん)は、このDVDを、同僚には内緒で作成されていたのだろう。るうとくんがプリプリとハイハイする途中で、二世帯住宅で同居する同僚が、何かの用事でりららちゃんちを訪れて、何かを言っている声が聞こえる。
 しかし、同僚は、りららちゃんがピンクのドレスを着ていることを不審がる様子もなく、お嫁さんへの用事を伝えたあとは、ハイハイするるうとくんを、おそらく手招きして、「こっち、こっち」と呼ぶ。りららちゃんもるうとくんに「ほら、るうとくん、ばあばに抱っこしてもらいね」と促す。

 こうして、四部構成のDVDは幕を閉じた。

 それにしても、わざわざ「とんでったバナナ」を踊りなおしてくれたりららちゃんもすごいけれど、りららちゃんにピンクのドレスを着せて、踊らせて、撮影して、DVDを作成して、お姑さんにプレゼントしようと思いついて実行するお嫁さんもすごいと思う。 ピンクのドレスは、同僚からの贈り物で、それを着て美しく飾った孫の姿を映像に保存したら、おかあさん、きっと、よろこぶね、と、思う、その愛にしびれる。
 とんでったバナナの振り付けのお手本としては、りららちゃんのお遊戯は、少々こころもとない部分がありはするものの、日本舞踊経験のあるわたしにとって、そのあやふやな部分の振り付けを推察することは、わりと簡単。たとえわたしが推察したものがオリジナルと異なっているとしても、りららちゃんの踊りをベースにわたしがアレンジした振り付けも、けっこういいにちがいない。

 DVDをもらってから何日か経過したのちに、職場で同僚と同じ日のシフトに入っていたときに、「いただいたDVD、孫を愛する祖母のツボを押さえまくりでしたね。おかげさまで、とんでったバナナも思う存分練習できます」と伝える。同僚は「そうでしょー、かわいいでしょー」と少し興奮して、「あのときにお嫁さんが、DVDを作るために、なんかしてたなんて、気がつかんかった」と言う。

「りららちゃんのピンクのドレス、同僚さんが、まえに買ってあげたぶんですよね」
「そうなんですよ。あのときは、ちょっと大きいかな、どうかな、くらいのサイズだったのが、この半年で、ずいぶん大きくなったんですね。背も伸びて、体重も増えて、ドレスが少し小さいくらいになってて」
「りららちゃん、どの歌もお遊戯も台詞も上手で、すっかり滑舌もよくなって、しっかりおねえちゃんになってるなあ、って感心しました」
「えへへ。そうでしょー。わたしもそう思うんです。最近は、人見知りもほとんどしなくなって、知らない人の前でも、はきはきと話せるようになったんですよ」
「大きくなりましたよねえ。以前はここのお店に一緒に来られても、同僚さんやお嫁さんの後ろに、こんなふうに(と同僚の背中のうしろにまわる)うしろに隠れて、ちらちらこちらを見たりうつむいたりしてたのに」
「そうそう。そうでした」
「でも、わざわざドレスに着替えて、とんでったバナナを歌って踊ってくれたりららちゃんにもすっごくありがとう、なんですけど、わざわざりららちゃんにドレスを着せて、おうちで歌って踊る姿を撮影して、DVDを作ってくださったお嫁さんに、ほんとうにありがとうございます、です、と、お礼を伝えていただきたいです」
「ねえ。息子たちは母の日だからといって、これといってなにか自分から特別してくれたことなんてないんですけど、娘っていいですねえ、女の子っていいですねえ、こんなふうにして、ふだん何気なく話したことから、プレゼントを考えてくれるなんて。息子がお嫁さんと結婚してくれてほんとうによかった」
「よかったですねえ。おかげで、わたしまで、DVDを分けてもらえて、大喜びです。ほんとうによくできたお嫁さんですねえ。ありがたや、ありがたや」
「でしょ。うふふふふ」

 結果的にとはいえ、同僚がこんなにうれしそうになったのなら、わたしが「りららちゃんの、とんでったバナナ、のお遊戯を何らかの形で見せてもらいたい」とお願いしてみたのは、お手柄だったのかも、思い切って頼んでみてよかった、口走ってみてよかった、と、満足で上機嫌な気持ちで仕事に戻る。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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