みそ文

バナナとりららと怒りん坊

夕方四時で仕事を終える同僚と、四時から休憩に入るわたしが、ロッカールームで一緒になる。わたしが同僚に「りららちゃん、や、るうとくん(同僚のお孫さんたち)の成長記録のおはなしも聞きたいのに、最近仕事が忙しすぎて、なかなかそんな話もできないのがちょっと残念」と話すと、同僚は「ほんとにねえ、人手が少ない時には仕方のないこととはいえ。あ、でも、せっかく、どうやら先生がちゃんと四時に休憩とれて、ここで話せるから見てもらおう」と言って、携帯電話を取り出す。

同僚が「見てみて。かわいいんですよ」と見せてくれる画面には、お孫さんのりららちゃんの姿が写っている。服装は、おそらく保育園の制服で、自宅の玄関で「ただいま帰りました」をしているところ。両肩に保育園の荷物を抱えていて、頭には、なんだろう、冠、みたいなんだけど、冠とは異なるかぶりものをかぶっている。頭にかぶった輪っかの前側(顔側)に黄色いような茶色いような謎の飾りがつけてある。わりと大きめで、りららちゃんの顔の三分の一くらいの大きさはある何かがおでこから頭の上にかけてのっかっている状態。なんなんだろう、この、黄色いの。レモンだろうか、うーん、形がちがうなあ、うんち、ってことはないよなあ、と考えながら、同僚に「うわあ。りららちゃん、大きくなってますねえ。ところで、りららちゃんのこのかぶりものは、なんなんですか」と訊いてみる。

同僚はいったん「かわいいでしょう」と言ってから、「それは、バナナです」と言う。「飛んでったバナナを踊ったあとなんですよ」と説明してくれる。

「飛んでったバナナ、ですか。ああ、思い出した、バナナが一本ありました、あーおい南の空の下、ですよね」
「そうそう。バナナはつるんっと飛んでった、です」
「歌とお遊戯だったんですか。学芸会か何かですか」
「あれです。保育園の卒園生を送る会の出し物。まだ保育園に残る子みんなで、飛んでったバナナを歌ってお遊戯して帰ってきたところを、わたしが、ちょっと待って待って、そのままそこにいて、かわいいから写真とるから、って、写真とったんです」
「それは、ぜひとも、飛んでったバナナのお遊戯を見たいですねえ」
「それがね、最近、りらら、すぐに怒るんですよ」
「お遊戯と怒るのと、なんかつながりがあるんですか」
「この、飛んでったバナナのお遊戯の練習をうちでりららがしてたんですけど、りららが、ばあば(同僚)も一緒に踊って、って言うから、はいはい、言うて、りららがするのを見よう見まねで踊るけど、でも、りららは保育園でちゃんと習ってても、わたしはそうじゃないから、振り付け間違うじゃないですか」
「そりゃ、まあ、そうですよねえ」
「それで、わたしが間違えると、りららがすっごい怒るんですよ。ばあば、間違えずにちゃんと踊ってよ、って」
「そんな、ごむたいな」
「ごむたい、ですよねえ。無理ですよねえ」
「りららちゃん、どうしたんやろ。保育園のお遊戯指導、そんなに厳しいんやろうか」
「それで、わたしも、りららに、そんな怒ってきつい言い方をしたらいかん、って、人に何かを教えるときには、もっとやさしく相手にわかるように説明しなさい、って、三歳児相手に、あ、もうじき四歳になるんですけどね、言うんですよ」
「それは、言ってあげてください」
「でもね、りららは、そこでさらに怒って、りららだって小さい子にはちゃんと優しく教えてあげるよっ。でも、ばあばは小さい子じゃないでしょ。大きいんだから、ちゃんと踊ってよ。って言うんですよ」
「うわあ。りららちゃん、理屈をこねくり回せるようになってますねえ。成長してますねえ」
「あああ、そうかあ、成長ですよねえ、これも」
「でも、歌やお遊戯は、怒らずに、たのしく歌って踊ってもらいたい」
「ほんと、ほんと、そのとおり」

同僚は、そのまま「じゃ、お先に失礼します」と帰ってゆくから、わたしは「お疲れさまでした」と見送って、二階の休憩室にあがる。同僚が思いがけず「飛んでったバナナ」の話をしてくれたから、休憩室でお茶を飲みながら、バナナの歌をうたってみる。

バナナが一本ありました、あーおい南の空の下、子どもが二人で取り合いこ、バナナはつるんっと飛んでった、バナナーはどーこへ行ったかな、バナナンバナナンバーナーナ。

ワニとバナナが踊ります、ポンポコツルリンぽんつるりん、あんまり調子に乗りすぎて、バナナはつるんっと飛んでった、バナナーはどーこへ行ったかな。

あれ? なんだか展開が唐突だなあ、と、なんとなく思う。たしか同僚は「最後の、もぐもぐもぐもぐ食べちゃった、のところが特にかわいいんですよ」と言っていたけれど、わたしの歌には、そんな展開がないぞ。これは、帰宅したら、この歌の歌詞を確認しなくては、と思いながら、その後の仕事に励む。家に帰って、手を洗ってうがいして、着替えて、炭酸水をぷはーっと飲んで、パソコンで「飛んでったバナナ」を検索する。あらためてこうして見ると、ちゃんと物語のある歌だったのなあ、と感心する。画面の歌詞を見ながらうたう。なんとなく自作の振付で踊りもつけて。では、以下、踊りはお見せできませんが、そして歌声も披露できませぬが、歌詞とその物語をおたのしみください。


「とんでったバナナ」片岡輝作詞・桜井順作曲

バナナがいっぽん ありました
青い南の 空の下
こどもが二人で 取りやっこ
バナナがツルンと とんでった
バナナはどこへ 行ったかな
バナナン バナナン バナァナ

小鳥がいちわ おりました
やしのこかげの すの中で
お空を見上げた そのときに
バナナがツルンと とびこんだ
羽もないのに ふんわりこ
バナナン バナナン バナァナ

きみはいったい だれなのさ
小鳥がバナナを つつきます
これはたいへん いちだいじ
バナナがツルンと にげだした
食べられちゃうなんて やなこった
バナナン バナナン バナァナ

ワニがいっぴき おりました
白いしぶきの 砂浜で
おどりをおどって おりますと
バナナがツルンと とんできた
おひさまにこにこ いい天気
バナナン バナナン バナァナ

ワニとバナナが おどります
ボンボコツルリン ボンツルリ
あんまり調子に 乗りすぎて
バナナはツルンと とんでった
バナナはどこへ 行ったかな
バナナン バナナン バナァナ

おふねがいっそう うかんでた
おひげはやした 船長さん
グーグーおひるね いい気持ち
お口をポカンと あけてたら
バナナがスポンと とびこんだ
モグモグモグモグ 食べちゃった
食べちゃった 食べちゃった     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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