みそ文

推理の流れを推理する

たとえば、犯罪捜査ドラマを見ているとき。ドラマが始まって間もない段階で、夫がわたしに「今のはどういうことなん?」「なんで、今の人はあんなことしたん?」と訊いてくる。どういうこともこういうことも、まだドラマは始まったばかりなのだから、今のはいったん保留しておいて、他の話を進めてから、あとで今の場面につながるんじゃないかな、と返す。そうして中盤にさしかかると、夫は少しウトウトとする。そして終盤に目を覚まして最後のところをわたしと一緒に見るけれど、結局夫はなんだかいろいろよくわからないままに「やっぱりあの若い男の人が犯人じゃったん?」と訊いてくる。しかし、たとえ途中寝ていたとしても、このドラマを見ていて、なぜそういう理解になるのだ、犯人はあのおばあさんだったね、という最後のシーンをさっき一緒に見ていたじゃないか、と、わたしは少し驚愕する。

そんなことやそれに類似したことを頻繁に体験して、ようやく最近、もしかすると夫は「推理もの」「犯罪捜査もの」に対する基礎訓練ができていない人なのではないだろうか、と思いつくに至った。

「ねえ、ねえ、どうやらくん(夫)、シャーロック・ホームズは読んだことあるん?」
「シャーロック・ホームズ? ないよ」
「怪盗ルパンは?」
「ルパン三世は知っとるけど、怪盗ルパンって、なに?」
「ということは、当然、アガサ・クリスティも読んでないんだよね」
「うん。知らない」
「じゃあ、ちょっと古いけど、横溝正史さんの金田一耕助シリーズも」
「読んでない」
「島田荘司さんは?」
「島田荘司? ああ、みそきちの本棚にあるのは見たことはあるけど読んだことはないよ。京極冬彦も読んだことないもん!(やや自慢げ)」
「どうやらくん。京極さんは冬彦さんじゃなくて夏彦さんだよ」
「はっ、そうか。まあ、つまり、そういうことだ。夏か冬かもわからないくらいにその手のものは読んでない、ということだ」
「うーん。それは、やっぱりね、そういうものをある程度読むなり、その手のドラマや映画を多く観るなりしてないと、犯罪捜査の物語をじっくりと根気よく見守るのに必要な基礎力のようなものが養われるのは難しくて、たとえばここはいったん保留して、別の流れに視点を移して、あとからそこと先に保留しておいたものをつなげて、なるほどそういうことだったのか、と合点するような訓練ができてないんじゃないかなあ。こういう物語は、その合点のところまではぐっと我慢をして、いくつもの支流を見続けて、のちのちようやく本流を本流として理解できるような構造になっていることが多いでしょ。多いのよ。ドラマの途中で、これはどういうことなのか、誰が犯人でどういう動機なのか、ということを急いで知りたがっても、それは無理というものなのよ。再放送のときには教えてあげられるけどね。でもね、そういうことは、物語を最後まで確認してから、ああ、そうだったのか、あのときのあの部分とあの部分は、なるほどこういうふうに繋がっていたのか、と納得したり、納得できずにあんまりだわ、と思ったりするのが、この手のものの醍醐味なんじゃないかなあ」
「ほほう。さすが、王様の言うことは、ちがうねー」

夫よ。とりあえず、わたしが熱心に見入っているドラマの途中で、わたしに解説を求めるのはやめよう。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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