みそ文

干し芋欲が成就する

今日、職場の売り場変更作業をしていたときに、そばを通りかかった同僚が、なんだか少し険しそうな顔をしていた。この同僚は、糖尿病と喘息と貧血の持病があり、服薬治療を行ってある程度の状態は保っているものの、やはりときどきつらそうなことがある。だから今日ももしかすると、少し具合がよくないのかな、と思いながら様子を見る。しばらくして、私が作業道具を片付けるためにバックヤードに入ったら、その同僚が「どうやら先生。聞いてー」と声をかけてくる。

「はい。なんでしょう」
「実は、わたし、この前、先生に教えてもらって買っておいしかった干し芋の通販屋さんで、また、買っちゃったんですよ」

この同僚には、以前、一昨年になるのか、私の友人が送ってきてくれた大量の干し芋をおすそ分けしたことがある。そのときのその干し芋のおいしさが、今年になって、またにわかに思い出されて、同僚も私も、少し前に干し芋欲にまみれた。この干し芋欲をどうにかせねば、と考えた私は、当時干し芋を送ってくれた友人に、送ってくれた干し芋のお取り寄せ情報を教えてほしいと頼んだ。友人からの返答によると、その干し芋は、業者さんの製品ではなくて、友人の夫の勤務先の取引先の担当者さんのご実家のご両親(茨城在住)がサツマイモも作る農家さんで、出荷用というわけではなく作っていらっしゃるもので、毎年年末(干し芋の最盛期)になると「たくさんできたから」と、その取引先の担当者さんが送ってきてくださるものだったのだという。しかも、去年の夏はあまりの暑さでサツマイモが不作で、干し芋がたくさん収穫できなかったため、友人のところにも今期のものは届かなかったのだ、と、彼女も少し残念そうだった。

その情報を同僚に伝えたところ、同僚は「そうなんですかぁ。お友達にわざわざ訊いてくださってありがとうございました」と言いながらやや落胆し、その後、スーパーや生協などで干し芋を見つけては、そのたびに買って食べてみるのだけれども、なかなか求めるレベルでの干し芋と出会えないのだと、通販サイトもあちこち眺めているのだけど、どのお店を選んだらいいか迷いすぎて選べないのだと、折々に話してくれる。私は干し芋欲はあっても、同僚ほどには、干し芋を求めることへの真摯さが多くなくて、そうかあ、猛暑で不作だったんだあ、じゃ、次回の冬に期待しようっと、と思っただけで、その後の干し芋欲求達成活動に励むわけではなかった。しかし、この同僚は、干し芋に限らず、自分が「おいしい!」と感じたものを再度入手することに関して、自分にとっておいしいと思えるかもしれない新たな食べ物を求めることに関して、そういう情報を感知することに関して、なみなみならぬ才能と意欲を持っていて、その姿には本当にいつも惚れ惚れとする。

そんなときに、思いがけず、とある干し芋業者さんの通販サイトの存在を教えてもらう機会に恵まれて、そのサイトを見てみたら、これがまたなんともおいしそう。私がこれまで見たことも食べたこともない「丸干し」なるものも取り扱われていて、サツマイモ好きの興味をそそる。

早速、同僚にメールで、「参考までにどうぞ」と、その通販サイトを紹介する。数日後に出勤して、またその同僚と同じシフトだったときに、同僚が「どうやら先生、ありがとうございました。おいしそうだったんで、早速注文しちゃいました。届くのがたのしみ」と教えてくれる。素早い。素早すぎる。そしてまた数日後、出勤したときに職場の自分のロッカーを開けると、おもむろに、干し芋の袋が佇んでいた。休憩中の同僚のところに行って、「分けてくださって、ありがとうございます」と言いながら、干し芋代金を手渡そうとしたら、同僚は「いいですよー。おいしい干し芋屋さん紹介してくださったお礼です。味見してみておいしかったら、どうやら先生も安心して買えるでしょ」と言う。

それでは、と、ありがたくいただいて帰った干し芋を、夕食後に、オーブントースターで温める。こんがりと甘くて香ばしい空気が漂う。ほくっはくっと食べると、ああ、おいしい。干し芋欲が満たされて、全身がほんわりと緩む。

後日。職場で同僚に会ったときに「おいしかったですねー」と伝えると、同僚も「おいしいですねー。ようやく求めていた味の干し芋に出会えて満足しました」と言い、「でも、こんなことばっかりしてるから、糖尿病になるんですよねー」と、自分ツッコミも忘れない。

そして今日その同僚が「また、買っちゃったんです」と少し険しい顔で言ったとき、わたしが「わあ、そうなんですかー。リピートで買ってもらえるほど気に入ってもらえたのなら、本当によかったです」と応えると、同僚の表情が緩む。

「ああ。よかったー。どうやら先生にこの話したら、わたし糖尿病なのに、こんな食いしん坊なことばかりしてって、怒られるかなあ、でも、どうやら先生も干し芋好きだから、今回取り寄せたのも、よかったらまた分けてあげたいなあ、と思うけど、怒られたらどうしよう、と思って考えてたんですよー」
「ああ、だから、険しい顔してたんですか。体がしんどいわけじゃないんならよかったです。それに、同僚さんが食いしん坊なのは今に始まったことじゃないし、わたし、同僚さんの食への求道ぶりに感心することはあっても、そのことで同僚さんのこと叱ったことなんてないじゃないですか」
「でも、わたしが薬飲むのサボると、薬を飲むのサボったらダメ、って、飲み忘れないように工夫しましょう、って、どうやら先生、いつも言うでしょ」
「それは、そこは、口うるさく言います。でも、干し芋にしてもなんにしても、食べ過ぎないように気をつけて、お薬ちゃんと飲んで、症状や体調の様子見ながら過ごせば、大丈夫ですよ」
「ですよね。じゃあ、来週、この前と同じ干し芋と、今回新しく買った別の種類のと、二種類、一個ずつ持ってきますね」
「ありがとうございます。じゃあ、今回は、売ってください。サイトで金額確認して、ぴったりのお金を耳を揃えて持ってきますから」
「わかりました」
「では、商談成立、ということで。この前と違う種類のは、どうでしたか? おいしかったですか」
「そうなんですよー。もう、これが、あまーくて、やわらかーくて、すっごくおいしかったんです。これは、きっと、どうやら先生も好きなはず、と思って」
「くうっ。たのしみにしてます。よろしくお願いします」

というわけで、来週、また、干し芋欲が満たされる予定。寝て待ってたら果報がやってきた気分だ。

ちなみに、この同僚がすっかり気に入った干し芋屋さんは、こちら

この中でも、わたしが気になっているのは、今は既に完売済の「いずみ種丸ほしいも」。サツマイモの「丸干し」自体、見たことも食べたこともないのだけれど、完売御礼するようなサツマイモをぜひとも食べてみたい。来期には、この「いずみ種丸ほしいも」を筆頭に、各種取り寄せて、じっくりと味わうのが、今からたのしみだ。今年の夏の暑さがサツマイモにとってちょうどよくて、豊作でおいしい干し芋がいっぱいできるといいな。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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