みそ文

夫の出生とシュークリーム

年末年始の広島帰省から高速道路で北陸を目指す帰り道。山陽自動車道は渋滞していて、全然高速で走れない。渋滞の退屈さで運転の集中が途切れそうだから、「では、ここでクイズです」。

「どうやらくんが生まれたあとで、どうやらのお母さんがすっごく食べたかったものはなんでしょう」
「えー、全然わからん。三択にして」
「では、次の三つの中から選んでください。一番、ラーメン。二番、シュークリーム。三番、お好み焼き」
「そんなん、すぐわかる。二番のシュークリーム」
「なんで、わかるん?」
「だって、三つの中でひとつだけ異質じゃん」
「そうかな。で、どうやらくんは、お母さんが産後にシュークリーム食べたかった話、知ってた?」
「いや、初めて聞いた。なんでそんなこと知ったん?」
「なんでかな。なんか話してて、お母さんが、最近は、おいしいものがいっぱいあって、食べようと思えば簡単に食べられるし、テレビのグルメ番組見ただけでももう、おいしいもの食べたようなおなかいっぱいな気分になるんじゃ、いうて話しちゃって、それを思うたら、若い頃は、なんであんなに、シュークリーム食べたい、だとか、ラーメン食べたい、いうて思いようたんか、今となってはようわからん、って言うちゃったんよ。あ、産後はシュークリームじゃったけど、お母さんは新婚の頃、ラーメンも食べたかったんだってよ」
「へえ、そうなんじゃ。でも、あの頃、シュークリームなんて、あのへんで売ってたんかな」
「売ってなかったらしい。じゃけん、お母さんが産後にすっごくシュークリーム食べたい、って思ったときに、お父さんが、なんかほしいものがあれば買うてきちゃるで、言うちゃったけん、お母さんは、シュークリームが食べたい、いうて言うたけど、お父さんは、シュークリームいうもんが、どがあなもんなんか、どこに売っとるもんなんかわからんけん、買うてこられん、言うちゃったんだって」
「ああー、そうかもなあ」
「そのあとで、おばあさん(義母の母)がお見舞いに来ちゃって、何かほしいものがありゃあ、買うてきちゃるで、言うちゃったけん、お母さん、また、シュークリームが食べたいんじゃ、いうて言うちゃったんだって。でも、おばあさんも、そりゃあ、なんなんかも、どこで売っとるんかもわからんけん、買うてこられん、言うちゃったって」
「ああー、とーさんより、さらにわからんやろうなあ」
「でね、そのあと、どうやらの本家のおばあさん(義父の母)が来ちゃって、何かほしいものがありゃあ、いうて言うてくれちゃったけど、お母さん、もう、シュークリームのことはよう言わんかったんだって」
「あの時代に、どこに行ったら、シュークリーム買えたんじゃろう」
「なんかね、お母さんは独身のときに、なんか用事があって広島駅のほうに出かけて、そのときに初めてシュークリームいうもんを食べて、なんとまあおいしいもんじゃろうか、思うて、感動したんだって。それをなぜか産後に突然思い出して、すっごいすっごい食べたくなったらしいよ」
「はじめて知った」
「ふふふ。なんかようわからんけど、私、インタビュー能力、高いじゃろ」
「よかったね」

約四十五年の時を超えて、夫を生み終えた義母のもとへ、山盛りのシュークリームを抱えて持って行ってあげたい。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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