みそ文

タイヤのお礼の宴

今朝、わたしが、すやすやと眠っている間に、車のタイヤ交換を、一人で済ませたという夫への感謝の気持ちをこめて、「どうやらくん、今日は、何が食べたい? なんでも言ってみて」と声をかける。最初は「うーん、なにかなあ。考えとく」と言っていた夫と、夕方よりも少し早い頃に、一緒に出かける。

まずは、ガソリンスタンドで、ガソリンを入れる。給油してもらっている間に、タイヤの空気圧調整機を借りて、交換したばかりの冬用タイヤの空気圧を調整する。夫がタイヤから外した空気注入口部の蓋を私が手のひらで受けて、夫がタイヤの圧を一定の数値にし終えたら、私がきゅきゅっと蓋を閉める。四個のタイヤの空気をそうして全部調整し終えて、これで安心して冬の道路を運転できるね、と、安堵する。

それから、少し離れたところにある、個人商店の日本酒屋さんに向かう。そこで、実家の父の誕生日プレゼントに日本酒を選んで送る。夫は「おとうさんは、純米大吟醸派じゃけん」という基準で、こちら方面とその周辺地方で産出されたものを選んでくれる。わたしは何かの銘柄を長く記憶しておくことがあんまり上手ではないのだけれど、夫には、これまで父にプレゼントした日本酒の銘柄を自動で脳内に再生できる機能がついているらしく、これまで贈ったことのないものを、という基準も足したうえで選んでくれているらしい。日本酒を発送したついでに、地元の日本酒の酒粕が販売されているのも買い求める。この銘柄の酒粕はこの時期にしか出回らなくて、しかも少しだけ高価だ。その酒粕を使った甘酒は、澄みきった透明感のある味わいで、そして喉越しがなめらかで、体にするすると入っていく。

我が家では、酒粕の甘酒を作るときに、水に溶かして加熱して、そこまでで完成にして鍋にそのまま置いておく。甘酒として飲みたいときには、マグカップの中で砂糖か何かの甘みを加える。私はそこにさらに豆乳を加えたものが大好きなのだけれども、夫は必ず「豆乳なしでお願いします」と所望する。砂糖を加えていない鍋の酒粕溶液は、みそ汁の仕上げに少し多めに加えて粕汁を作るときにも使う。ちなみに甘酒に関して、私は、酒粕の固形がまったく感じられないほどさらさらになるまで酒粕を細かくかき混ぜてあるものが好きで、妹は、酒粕の固形ができるだけ大きな形で残った状態のものが好きらしい。

酒屋さんでの用事を終えたら、自宅の近所のスーパーで、一週間分の食材を買う。一週間分、といっても、実際には、一週間の途中で、生協さんの配達が一回あるから、そのときにも数点の食品が届く。

そうそう。食材買い出しの前に、同じ敷地内の本屋さんに立ち寄って、年賀状版画用の本を買う。一通りのデザインを見て、「わたしは、うちのこたつ布団の柄のうさぎの絵がかわいくていいなあ」と希望を言ってみたけど、版木に絵を描き、版木を彫るのを担当する夫が、デザイン画集のイラストを見て、「これがいい」と言うから、年賀状のデザインはそれに決定。彫刻作業は手間だから、彫る人が彫りたいものを愉しい気持ちで彫れるものを彫るのがいいと思う。うちのこたつ布団のうさぎ模様に比べると、そのデザインのうさぎは少し生々しいかんじなのだけれども、まあ、いいんじゃないかな。

スーパーでカートを押しながら、「さあさあ。どうやらくん。食べたいもの何か思いついた? 何でも言って。タイヤ交換のお礼じゃけん。何でも買うてあげるけん。なんでも作ってあげるけん」と訊いたところ、夫が「うーん、今日は、なんか、レトルトカレーの気分やなあ」と言う。「そうか。レトルトカレーか。よし。いいよ。任せて。好きなの選んで。高いのでも遠慮せずにね」と促す。「カレーは食べたいけど、野菜も食べたいなあ」と夫が言うから、「じゃあ、レトルトカレーとは別に、鶏肉とニンジンを炒めよう。今日プランターから収穫したガジュツ(紫ウコン。ターメリック)も少し入れてみよう。ホウレンソウもささっと炒めて、カレーと一緒に食べよう」と応える。夫は「それ、いいね、おいしそう」と言いながら、レトルトカレーを選ぶ。私は、タマネギとニンニクを避ける必要があるから、なかなか食べられるレトルトカレーはないけれど、もしかしたら何かあるかも、と、根気よく商品の原材料名を見てみたら、エスビーのクリームシチューのレトルトには、タマネギが入っていないことに気づく。へえ、そうなんだあ、と感心しつつ、じゃあ、わたしはこれにする、と、そのレトルトシチューを選ぶ。夫が「カレーにフライをのせたい」と言うから、揚げものコーナーに向かう。我が家では、わたしが食べられないからという理由で自宅で料理されることのない「牡蠣フライ」だが、その「牡蠣フライ」のパックを選んだ夫は「牡蠣フライカレーにする」と満足そう。もちろん自宅で揚げてもいいのだけれども、牡蠣四個だけ、というのは、生ではあんまり売っていないし、夫はここのスーパーの揚げものをときどき買って食べることをそれなりに好んでいるから、そのお好みどおりに。

それから、スーパーの外で販売されている茹でたてのセイコカニを買い求める。この冬の初物だ。セイコカニはメスのズワイガニで、体の大きさは小さくて、脚の可食部は少ないけれど、お腹のミソ(内子)がこっくりとしていてたいへんにおいしい。とはいうものの、カニミソのおいしさがわかるようになったのは、ここ十年くらいのこと。本当は外子(蟹の卵)もおいしいらしいけど、私はまだ、その珍味系のおいしさがわかるほどには大人になっていないため、外子はいつも夫か誰か外子好きな人に譲る。セイコカニは、食前のおやつに最適なおいしさ。

帰宅して、おやつのセイコカニを一杯ずつ食べる。「くう。おいしいねえ。めんどうくさいけど、おいしいねえ」と言う以外は無言。セイコカニを食べてお腹が少し落ち着いたところで、カレーのための炒め物たちの準備を始める。揚げ物は、揚げものがおいしく仕上がるタイプのキッチンペーパー(キッチンシート)にのせて、電子レンジでの加熱に備える。

生のガジュツを薄くスライスして鶏肉と一緒に炒めたら、それだけでフライパンの中がカレーっぽい香りになる。実際に食べてみたら、口から喉から食道から胃にかけて、爽やかな香味が貫く。夫が「なんか、これって、なんだっけ、ほら、胃薬を飲んだときみたい」と言う。「どうやらくん、このガジュツはね、私の職場の勉強会で、胃腸薬のメーカーさんがそこの胃腸薬の原材料生薬としてくれちゃった球根が成長してできたものなんじゃけん、胃腸薬の味がするよ。そこの胃腸薬の主成分、ほとんどガジュツだけじゃもん」と説明する。

以上、タイヤ交換の感謝の気持ちがたくさんこもった、お礼の宴。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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