みそ文

とめ、はね、とめはね

十月に、法事で帰省したときに、弟が「はい。ねえちゃん。これ」と、漫画を三冊貸してくれた。作品名は「とめはねっ! 鈴里高校書道部」。鈴里高校と書いて「すずりこうこう」と読む。書道で使う「硯(すずり)」にかけてあるんだろうな。この作品は、以前帰省したときにも貸してもらったことがあり、「私、何巻まで呼んでるんだろう」と記憶を手繰りよせていたら、弟が「そんなん、読みゃあ、わかるわいのう。まだ続きがあるけん」と言う。結局、その日は、早く寝て読む時間がなく、翌日は、法要と自宅への移動で忙しくて読む時間がなく、弟には「この三冊、借して。持って帰って読むけん」と頼み、他の荷物と一緒に送る。

自宅に荷物が届いてから、あらためて読んでみる。一巻二巻ともに読んだ記憶がある内容で、むむう、このまま三巻も読んだことがあるものだったらちょっと残念かしらねえ、と思いながら読み進める。結局三巻は初めて読む内容で、よかったよかった、借りてきた甲斐があったなあ、と安堵する。

夫は一巻も二巻も三巻も、初めて読む作品で、なおかつ気に入ったらしく、「おもしろい!」「今度、お正月に帰った時には、四巻以降を貸してもらえるよう、しめじくん(弟)に頼んどいて。最新刊まで買いそろえておくのもお願いしといて」と私に言う。わかった、じゃあ、頼んでおくね、と、そのとおりの内容で、弟にメールを送る。すると、弟はすぐに、「了解。最新刊の七巻まである。今度何か送るときに入れる」と返信を送ってきてくれる。夫に「七巻まで出てるんだって。今度何かの荷物と一緒に送ってきてくれるって」と伝えると、夫は「やったね」と喜ぶ。

夫がどれくらいこの作品を面白がっているかというと、「書道教室に通ってみようかな」と口走るくらい。私は小学校に入学して間もなくから高校を卒業する少し前まで、近所(徒歩二分くらい)の書道教室に通っていたから、書道は面白いよ、と話してみる。

それからしばらくしてから、実家からの小さな荷物が届く。メインの荷物の下に、「とめはねっ!」の四巻と五巻が入っている。夫に「しめじが、荷物と一緒に、とめはね、送ってきてくれたよ」と伝えると、「やったあ」と言ったものの、「あれ? 二冊だけ? 六巻と七巻は?」と探す。「今回は二冊だけだよ。荷物の箱の大きさでぴったり入るのが二冊がちょうどよかったんじゃろう」と話すと、夫は「六巻と七巻も送ってほしいなあ」と切望する。それで、その次に、母が「さつま芋送るけど、何か送ってほしいものがあれば言って」とメールで連絡をくれたときに、「しめじの漫画の、とめはねっ、の、六巻と七巻を貸してもらいたいから、それを一緒に入れてください」と返信する。

最新刊まで届いたのを見た夫は、たいへんに喜ぶ。特に最新刊の刊行が、ずいぶんと最近であることが、夫のうれしさをさらに増す。七巻までを、二人それぞれに、何度も何度も読み返しながら、「どのお話も面白いね」「どの登場人物も上手にキャラクター設定してあるね」と話し合う。

「とめはねっ!」をじっくりと読んで、我が家では、少し変わったことがある。それは、これまでは、旅先の資料館のようなところに入った時に、毛筆の展示物があっても、夫は殆ど素通りをしていたのが、最近は、私が毛筆展示物の前で、夫の袖をつんつんと軽く引っ張って、「とめ、はね、とめはね」と小さな声でささやくと、夫がおもむろに右手を上げて、展示物の筆文字を宙でなぞるようになったこと。夫はそうやって作品の文字をなぞりながら、「あ、ここは、とめてある。あ、ここは、はねだ」と納得する。

弟には「どうやらくんが、とめはねっ! すごく面白がってて、書道教室に行ってみようかな、って口走ったりするんだよ。貸してくれてありがとね」とメールでお礼を伝える。弟からは「むむぎーとみみがーも、まだあんまり漢字が読めないくせに、面白がって読みます」と返信が来る。漢字が読めなくたって、漫画の文章中の漢字には、殆ど全て振り仮名がつけてあるじゃん、弟も私も子どもの頃は、漫画の漢字の読み仮名を読んでいろんな漢字をおぼえたじゃん、と思い、あらためて「とめはねっ!」を見てみる。そうしたら、この作品中の漢字には、よほど難しい漢字や特殊な用語でない限り、振り仮名が付いていないことがわかる。そうだったのか。知らなかった。この作品が特別にそうなのか、最近の漫画は基本的にそうなのか、どうなんだろう。そのつもりで、しばらく、少し気をつけて、世の中を観察してみよう。

ところで、弟は、「とめはねっ!」の話をするとき、傍にみみがーがいると、おもむろに元気よく「とめはねっ!」と言う。するとみみがーが小さな声でぼそぼそと「スズリコウコウショドウブ」とつぶやく。弟としては、テレビドラマ「とめはねっ!」の構成を真似て、親子で元気よく「とめはねっ!」「鈴里高校書道部!!」と声に出す芸をしたいようであるのだが、みみがーのノリがもうひとつふたつみっつよっつ。みみがーは、一応、父に仕込まれた芸に付き合ってはいるのだけれど、どこか「父よ。君には付き合いきれないよ」と距離を置いている感がある。弟はみみがーに向かって「みみがー、もうちょっと、もっと元気よく、鈴里高校書道部!!! いうて言ええやあ」と言うけれど、娘の立場としては、父との芸をこなすことに、気が向く時と気が向かない時とあるのではないかしらねえ、と、父をあしらう娘の気持ちに少し思いをはせてみる。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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