みそ文

さつま芋ご飯とドクターフィッシュ

うちから車で三十分弱走ったところにある「道の駅」では、地元の野菜や果物が豊富に販売されている。そろそろサツマイモご飯が食べたいなあ、と思っていたから、サツマイモを買いたいのだけれども、店内で販売されているのは、どれも少し量が多い。バナナサイズで言うなら六本、モンキーバナナサイズで言うなら十本前後というところで、値段は二百円から三百円くらい。サツマイモはほしいけれど、こんなにたくさんは使いきれないなあ。ご飯に入れるだけだから、バナナサイズのものが一本あれば十分なのだけど、ばら売りは、ないなあ。

そうだ。建物の外のところに、焼き芋売りの人がいたから、あの人に、一本だけ生で売ってもらえないか、相談してみよう、と決める。焼き芋は、一本百円。香ばしくてほっくりとしたにおいが、あたたかく漂う。ひととおりのお客さんの波が途切れたところで、焼き芋売りのお兄さん(青年)に、「焼いてない生のサツマイモを、一本売っていただけないでしょうか」と、声をかけてみる。お兄さんは「生のサツマイモは、建物の中で売ってますよ」と教えてくれるけれど、「はい。売ってました。でも、量が多くて。一本だけほしいんです。芋ご飯を炊きたくて、ご飯二合に入れるのに、ここに置いてらっしゃるサツマイモ一本が、ちょうどいい量なんです」とくいさがる。

焼き芋屋の青年は「うーん。じゃ、いいですよ。好きなの一本、お好きな値段で、どうぞ」と言う。「お好きな値段と言われましても、いくらくらいが適正でしょう」と尋ねる私に、青年は「建物の中で売ってるのは、六本で三百円くらいですよねえ。でも、焼く燃料使ってないのに、一本百円もらうのは多すぎるし。あ、じゃあ、こうしませんか。うちの焼き芋一本買ってくださったら、焼いてないのを一本タダで差し上げます」と提案してくれる。

「わ。いいんですか。でも、それ、うれしいです。じゃあ、焼き芋一本ください」と百円玉を用意する。青年が私に「焼いてないほうは、どの芋がいいですか?」と訊いてくれるから、「プロの焼き芋屋さんの目で見て、芋ご飯にしておいしそうなのはどれですか?」と訊き返してみる。青年は「僕は焼いて売ってるだけで、このサツマイモ作ってるのは父なんです。父なら詳しいんでしょうけれど。うーん、どうかなあ。ご飯に入れるんだったら、少し丸みのあるほうがいいですね。じゃあ、これかな」と言いながら、カゴの中のサツマイモの山の中から一本選んでくれる。そして、焼き芋焼き器の中から、ホクホクあつあつの、こんがりとした焼き芋を、一本取り出して、紙袋に入れて「あついから、気をつけてくださいね。百円です」と言いながら、手渡してくれる。生のほうは、私の手持ちのビニール袋に入れて持ち帰り、焼き芋のほうは、熱いうちに、車の中で、ほふほふ食べようと決める。

なんとなく、この焼き芋は、アイスクリームと一緒に、あるいは、交互に食べるとおいしいような気がして、建物の隣の小屋で売ってるソフトクリームを買い求める。なんだか観光旅行みたいな、小旅行気分が盛り上がる。車の中で助手席に座って、ほふっとしたサツマイモと、ひんやりとしたソフトクリームを、はふんぺろんと食べる。思った通り、おいしい。サツマイモだけでもおいしいし、ソフトクリームだけでもおいしいけれど、両方を同時に口の中で合わせると、なんだろう、ちょっとパフェみたい。

そのあとで、港の近くにある小高い丘の上のホテルの温泉日帰り入浴を利用する。以前は五百円だったのが、今回は六百円になっていた。そして以前は大浴場の入り口を入った広いところにあった「ドクターフィッシュ」の水槽(浴槽)がなくなっていた。「ドクターフィッシュ」は別名「セラピーフィッシュ」ともいい、人間の素足を水の中に沈めると、その魚たちが寄ってきて、足の角質をついばんできれいにしてくれる、というもの。しかし、宿泊施設で多くの人の角質をケアするお仕事は、やはり激務が過ぎたのだろうか。それで、全員、引退なさったのだろうか。以前、この温泉で、ドクターフィッシュにお世話になったときに、人間の足の角質をついばむことは、彼らにとって、食事なのだろうか、それとも仕事なのだろうか、と、思ったけれど、どっちなんだろうなあ。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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