みそ文

道場を求めてさすらう修行人

数日前の夜、夫が居間の敷き物の上にうつぶせて、ふうーっと大きな息を吐いて、なにやら「ぐったりなかんじ」を表現していた。どうしたのかな、と思いながら、しばらく見守っていたら、夫は体はうつぶせたままで「もう、世の中では、携帯電話でメールをせんやつは、受け容れてもらえんようになっとるんじゃろうか」とつぶやく。

我が家では、夫婦ともに、携帯電話でのメールのやりとりは行わない。二人とも各自携帯電話は持っている。しかし、携帯電話用のメールアドレスは持っていない。携帯電話でのメール送受信を含むweb接続はまったくしないという前提にしている。メールはPCを用いてのやり取りのみで、なんら不便を感じない。ちなみに、メールアドレス宛てでは携帯からのメールのやりとりはできないけれど、同じ携帯電話会社の携帯電話同士で行う電話番号あての短いメッセージのやりとりは問題なく行える。夫婦間や義母との間で小さなメッセージを送り合う時には、この機能で十二分にことたりる。

それなのに、これまで、携帯電話のメール機能の必要性に関して、なんら言及したことのない夫が、そんなことを言いだすのは、どうしたことなのかしら。携帯メール以前に、ふつうの通話に関してすら、夫の携帯電話は充電が切れたままになっていることがちょくちょくあるから、夫には、携帯電話という道具そのものの必要性が低いのではないか、と、思っていたくらいなのに。そんな夫がわざわざ携帯メールの必要性に触れた発言をするということは、何かよほどの事情なのかな。もしかしたら、会社の仕事で何か、個人の携帯メールアドレスを要求されることでもあったのかしら。いやいや、仕事の出張等で必要な連絡用には、随時会社の携帯電話が貸し出されるから、それはないな、と思いなおす。だとしたら、考えられるのは、夫の個人的な事情か。

夫に「ねえ、もしかして、ネットの囲碁道場の対戦相手の人が、携帯アドレス教えてください、いうて言うてきちゃったん? 携帯メールのやりとりをしてくれる人とだけ対戦したいんです、いうて言うてん?」と尋ねてみる。夫は、すぐさま、むくりと起き上がって「それはないわ」と答える。「それはないけど。それはないけど、よ」と夫は話を続ける。

夫がこれまでずっと囲碁の修行を続けてきたネット上の囲碁道場が、このたび閉鎖されることになった。「みなさまにこれまで以上のサービスを提供するため」という名目で、引き続き囲碁対戦サービスを利用したい人は、「モバゲー」という携帯端末ゲームサービスを利用してね、という連絡付きで。モバゲーのモバはモバイル(携帯)のモバで、ゲーはゲームのゲーなのではないかな、と予想する。そういう事情で、夫がその「モバゲー」の囲碁道場に移行手続きをしようとしたところ、仮登録に「携帯メールアドレス」が必要ということが判明。携帯メールアドレスを入力して仮登録を終えると、そのアドレス宛てに「認証コード」のようなものが送られてきて、その認証コードを本登録画面で入力することで、その道場に入門可能となるシステムなのだそうだ。

夫は携帯アドレスを持っていないから、自分のGmailアドレスを入力してみるなど、それなりに努力はしてみたものの、どうやっても相手は頑なに「携帯アドレスじゃないとダメだよーん」と門を守る。それで夫は「携帯アドレスのない俺は、もう、どこにも相手にしてもらえんのんじゃ」とぐったりとしていたということらしい。

これまで馴染んできて使い慣れた道場がなくなるのは、残念ではあるだろうけれど、他にも無料で利用できるオンライン囲碁道場はいろいろとあることだろうし、そんなにぐったりしなくても、少しさすらって、新しい道場との出会いを求めてみたらどうかしら、と提案する。

夫は、だから、もうすでに、これまでの道場は利用できなくなっているから、今日は、別の道場で対戦してみたのだけれども、「最初に相手をしてくれた人は、むちゃくちゃ強くて話にならんし、次に相手をした人はめちゃくちゃ弱くて話にならんかった」と言う。これまでの道場ならば、だいたいどのくらいのレベルなのかがクラスごとにわかるようになっていて、そんなにひどくレベルが違う人とあたって、ボロボロになることはなかったのに、使い勝手がよくないよう、と、なげく。

いい道場との出会いは、きっとご縁じゃけん、時間をかけて求めんと。それにね、実際のところはよくわからんけど、なんとなく、携帯アドレスを取得して維持するための金額を出せば、有料の使い勝手のいいオンライン道場に入会できるんじゃないかなあ。どうやらくんが、どうしても、その「モバゲー」でのサービスを利用したいというならば、自分で携帯電話会社に手続きして、本登録に必要な期間だけ、一時的に携帯アドレスを取得するのもいいかもしれないけどねえ。

夫は「それは、それで、面倒くさい」と言う。

自分の携帯アドレスを持たないままで、「モバゲー」の登録、どうしてもしたいってことなら、やぎ(妹)にでも頼んでみようか。どうやらくんの囲碁道場仮登録のためだけに、やぎの携帯アドレス貸して、って。それで、モバゲーから認証コードが届いたら、転送して、って。それだけで済めばそれでいいし、その後なんかお知らせが届いたときには、教えてもらうか、放っておいてもらうか。でも、モバゲーっていうのは、モバゲーというくらいだから、モバイル、つまりは携帯端末を携帯してちょくちょく使っているような人をお客さんにしたいんじゃないかなあ。

夫は「そんな、やぎちゃんに頼んだり、いちいち連絡してもらったりするほうが、もっと面倒くさいし、気兼ねじゃん」と言う。それはまあ、そうだろうな。

そういうわけで、夫は、現在、さすらいの道場探し人だ。さすらい人のわりには、一度使ってみて「使い勝手がよくない」と、なげいていた道場に入り浸っているけれど。ここで慣れてゆくもよし、また再びさすらって他に辿り着くもよし。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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