みそ文

子どもと大人とみんなのカレー

小さい頃、夕ご飯がカレーだと、やったー、と思った。少し大きな子どもになると、自分でも作れるようになって、やったー、の采配が、少しだけ自由になる。もっと大きくなって、県外の大学に通うようになり、一人暮らしをする頃には、その自由度はさらに高くなり、いろんなメーカーのいろんな種類のいろんな辛さのカレールーを食べ比べたりするようになる。

小さい頃のカレーはいつも、ハウスバーモントカレー甘口。田舎の商店では他の選択肢はほとんどなかったとも言えるのだけど、十二分以上の至福感で、そのおいしさを堪能していた。中学生になって、高校生になって、もう少し辛いカレーが食べたいな、と思うときもあり、母にそうリクエストしてみたり、自分で中辛を購入して作ってみると、母は「あんまり辛いと、しめじ(弟)や、やぎ(妹)が食べられんじゃろう」と、そっと言う。それならと、あまり辛くなりすぎないように、でも少しスパイシーさも楽しめるように、甘口と中辛をブレンドしたものを作ったり作ってもらったりして食べていたような気がする。

もっとずっと大きくなって、私も、弟も、妹も、それぞれ成人した頃になっても、実家のカレーはバーモントカレー甘口で、何故未だに甘口なのかと、いぶかしんで尋ねてみると、「あんまり辛いと、おばあちゃんが食べられんじゃろう」と母が答える。ああ、そうなのか。子どもたちのためだけじゃなくて、祖母のためでもあったのか。

結婚して、夫と暮らすようになってからは、もっぱらハウスジャワカレー辛口が中心で、二人ともその辛さとスパイシーさに毎回酔う。自分の好みの辛さのものを自分で作って、家族みんな(二人)いっしょに、おいしいね、と言い合いながら食べられるのって、ほんとうにいいよね、二人のカレーの辛さの好みが似ていてよかったね、と話し合う。

夫の実家でも、夫と夫の妹が小さい頃は、ずっと、ハウスバーモントカレー甘口で、少し大きくなったり、もう少し大きくなったときに、「もう少し辛いのが食べたい」と言ってみたことはあったらしい。けれど、義母は「辛すぎるのは、体にようないよ」と言って取り合ってもらえず。いや、たしか、一回は、中辛を作ってもらってみたけれど、夫と義妹が喜んで食べる傍で、義母と義父が「こんなに辛いカレーはようない」と断言し、中辛はその一度きりになったのだとか。だから、それ以来、ずっと、甘口に甘んじていたから、大学に進学して自炊するようになって、辛口を好きなように作って食べられるようになったときには、うれしかったなあ、と、夫は語る。

今でも義実家には、ハウスバーモントカレー甘口のルーが数箱常備してある。義母は義母で、若いときも年を取ってからも、ずっと変わらずあの甘さを愛しているのだろうと思う。好きな時に好きなように好きな甘さのカレーを作って食べ続ける義母も、自分の好きなようにできてうれしいなあ、なのだろう。

義実家で、ハウスバーモントカレー甘口の買い置きの箱を見るたびに、夫は「辛いのが体にようない、とかじゃなくて、かあさんは、自分が甘口が好きなだけだったんじゃん」と思うらしい。子どもたちから「辛口かせめて中辛が食べたいよう」とリクエストを受けた時に、母の立場としては、自分が甘口が好きだから甘口で通すのだ、とは、言いづらいものなのだろうか。

最近は、私の体が、市販のカレールーの原料として含まれるタマネギやニンニクのエキスやパウダーに反応して、頭痛や歯茎の腫れが起きるから、カレーを作ること自体がずいぶんと減っている。厳密に言うならば、最近になって反応が生じるようになったわけではなく、反応は以前から起きていたけれど、その反応と食べ物や食材との関連に気づいていなかった、というほうが正しい。そして、その関連に気づいて生活するようになってみて、先日、タマネギもニンニクも原料に入っていないレトルトカレーとカレーパウダーを購入してみた。自分の体に大丈夫で、味わいとしても満足な、カレー生活に辿り着けるといいな。

インドには、ヴィーガンという種類の菜食主義スタイルがあり、そこでは台湾の「素食(そしょく)」と同様に、動物性たんぱく質だけでなく、ニンニク、ネギ、タマネギ、ニラ、アサツキなど五葷(ごくん)を用いない料理を食する。インド料理だから基本はカレーなのだけど、彼らが戒律上問題のないカレーを作って食べている、ということは、私の体に大丈夫なカレーのレシピはすでにこの世にあるはずで、だからきっと私はそこに無事に速やかに辿り着けるはず。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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