みそ文

蒸気で義母(はは)とアイマスク

今日も暑い一日で、しかも職場のエアコンが一部故障しているらしく、店内の涼しさが実に微妙。こんな日には、できれば涼しげな内容を書きたいものだけれども、忘れないうちに書いておきたいことを書いておくことにする。

昨年末から今年の年始にかけて、広島に帰省したときに、わたしはずいぶん疲れていた。年末年始にわたしは連休を取得して、広島に帰省するけれども、勤務先のお店自体は、元旦以外年中無休で営業する。わたしが不在の間の業務が、少しでも少なくて済むように、自分が出勤している間に、あれもこれも片づけておこうと、連休前には、少し仕事を多くしすぎる。

それと併せて、帰省のための荷造りや、手土産の準備や、片づけておきたい家事や用事を行い、そうやって疲労が蓄積した体になって、それから長距離長時間の運転をするわけだから、体としては、負担が大きいよね、そりゃあ、とは思っていた。

(そんな無理しちゃいけんじゃん、と、ご心配くださる方対策に、一応申し上げておくなら、その後反省したおりこうなわたしは、連休取得前の無理な仕事の仕方をすっかり見直して、余裕をもった勤務スケジュールを組める大人に成長した。)

ともかく、昨年末は、そんなこんなで、疲労がひどく蓄積していて、右側の肋間がひどく痛み、呼吸をするだけで十分痛く、動けばさらに痛く、笑ったり咳きこむとさらにもっと痛くて、どうしたものか、という状態が続いていた。消炎鎮痛剤の貼り薬を貼ったり、痛み止めの飲み薬を飲んだり、さらに貼るカイロを服の上から貼って温めると、ずいぶんマシだったから、そうやって過ごしていた。

(ご安心ください。その後、からだは、十全に回復して、今はすっかり元気です。)

年が明けて戻ってきたら、休みの日を利用して、カイロプラクティク(整体)に行く予定を決意して、とりあえず、年末年始は、痛みを抱えたまま、広島へと帰省する。広島でも、同じように、貼るカイロで患部を温めるつもりで、荷造りをしたつもりで、義実家に到着。

「おかえり、おかえり、疲れたじゃろう。長い運転疲れたじゃろう」と義母が迎えてくれる。そして、いつもとだいたいおんなじように、食材買い出しを行い、食事を作り、食事を摂って、お風呂に入る。お風呂からあがって、温かさのなくなったカイロは捨てて、新しいカイロを出しましょう、と思ったところで、思い出す。しまったー。旅行鞄に入れるつもりで、鞄の横に置くところまではできたのに、鞄にそのカイロ入れるのを忘れてきたよ。

これからお店に買いに行くには、時間が遅いし、お店は遠いし、貼るカイロくらい、義実家にもあるかもしれない、と、義母に尋ねてみることにする。

「おかあさん。貼るカイロ、持っとっちゃったら、少し分けてもらえませんか」
「あるよ、あるよ、使いんさい。ここにあるけん好きなだけ使いんさい」
(義母が指示した引き出しを開けてみる)
「おかあさん、ここにあるの、貼らんカイロばっかりみたいなんじゃけど、貼るのは別のところですか」
「ありゃ。そこにないんかね。じゃあ、わたしが貼るほうはあんまり使わんけん思うて、片づけとるんじゃわ。ちょっと待っとりんさいよ」
(義母、おもむろに、二メートルほどの棒を持ち出してくる。そして、その棒の先を天井に、こつん、と、あてて、引っ張る。すると、わたしがそれまで見たことのない、天井上(屋根裏というのだろうか)の物置に繋がる扉が開く)
「わあ。そんなところに、そんな倉庫があったんですかー」
「そうなんよ。家を新しゅうするときに、作ってもろうたんよ。なんでもかんでもしまいこんで、忘れてしまうけん、便利なような便利なような、ようねえ」
(そして、屋根裏に上るための梯子階段をするするとおろして、義母が上へとあがっていく)
「みそさんは、そこにおりんさいよ。この中は、さばけすぎとるけん(あまりにも散らかっているから)ちょっと人さまには見せられませんよ、じゃけんね。貼るカイロは、たしか、このへんに、あったはず、あった、あった」
「わあ。ありがとうございます」
「ようけいあるわ。二十個くらいあるわ。小さいぶんじゃけど。全部みそさんにあげるけん、使いんさい」
「え? おかあさんは? 貼るカイロは、使うてんないんですか?」
「使わんのんじゃろう。ずっとここにしもうたままにして、期限が切れとるいうことは」
「え? 期限が切れとるんですか。でも、期限切れとっても、ぬくうなるけん、使えますよ」
「期限切れてすぐじゃったら、まあ、そうじゃけど、これは、期限が二年以上切れとるけん、たぶん、ぬるいよ。まあ、低温やけどせんでええいうことで、使うてみんさい」
「そうします。やったー。いっぱいあって安心。ありがとうございます。さっそく貼ってこようっと」

そうして入手した貼るカイロミニは、たしかに、ほどよくぬるく、買えば高い値段のする、温度四十数度シリーズの商品のような温かさ。ああ、ぬくい。ほうう。こうしていると痛みが和らぐ。

そうだ。おかあさんに貼るカイロをもらったことだし、ここは物々交換をしよう。旅行鞄に入れてきた「花王めぐリズム蒸気でホッとアイマスク」を取り出して、何枚か持っていく。

「おかあさん。カイロありがとうございました。おかげさまで、いいかんじでぬくいです。で、これ、お礼に。あったかくなるアイマスク。ラベンダーのいい匂いがするんですよ。袋から出したらすぐにぬくくなるけん、すぐ目の上にあててください。気持ちよくて、よう寝れるんですよ」
「わあ。こりゃあ、はじめてのもんじゃ。お風呂入って顔洗うたらしてみよう」

それから、しばらく、わたしは自室で横になって、中山式快癒器に体をのせてほぐしてみたり、カイロのあたたかさをじっくりと患部にあててみたりする。そうしているうちに、義母がお風呂からあがってしばらく経過した気配になり、あ、そうだ、使い方の文字が、老眼では見えないかもしれない、と気づいて、置きあがって居間へ行く。

「おかあさん、アイマスクの使い方、わかりますか。見えますかね、説明文。アイマスクの裏表わかりますか」と言いながら居間を覗くと、義母はアイマスクを目にのせて、あおむけで横になっている。

「あ、なんじゃ、もう上手に使いようてじゃ。ちゃんと紐のところ、耳にかけてくれとってじゃ」
「みそさん、ええねえ、こりゃあ、気持ちがええもんじゃねえ。寝てしまいそうなよ」
「それは、よかった。あ、でも、おかあさん、惜しい。アイマスクの上下が逆じゃ」
「え? 上下なんかあるん?」
「はい。こう、ちょっとくぼんだみたいな、切れ目が入っとるほうが下側、鼻側、なんですよ。今、おかあさんが、おでこのほうに向けとってんほう」
「ありゃりゃ。そうなんね。ああ、ほんまじゃ。たしかに。こっちのほうがもっと気持ちええわ」
「よかったよかった。じゃ、そういうことで、おやすみなさい」
「おやすみ。ようようゆっくり寝んさいよ。遠くから運転して返ってきたんじゃけん」
「はい。そうします。おやすみなさい」

そして、わたしも蒸気でホッとアイマスクをして、ぐっすりと眠った。     押し葉

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

ときどき、思い出したように、いただいたメッセージへのお礼やお返事をリンク先の「みそ語り」に書いています。よろしければ、いつでも、どうぞ、どなたでも、ご覧ください。「みそ語り」では、メッセージをくださった方のお名前は書いておりませんので、内容から、これは自分宛かしら、と推理推察しながら読んでいただければうれしいです。手の形の拍手ボタンからメッセージをくださる場合は五百文字以内、文字の方の押し葉ボタンからメッセージをくださる場合は千文字以内となっております。文字数制限なくお便りくださる場合には、下のメールフォームをご利用ください。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク

最新記事

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (0)
暮らし (112)
仕事 (161)
家族 (301)
想 (23)
友 (47)
学習 (79)
旅 (16)
心身 (8)

FC2カウンター

検索フォーム

FC2Ad

Template by たけやん