みそ文

りららちゃんのキス

りららちゃんの祖母である同僚が、「ピーマンごちそうさまでした。おいしく全部いただきました。ピーマンの葉っぱがついてるのがかわいくて、ああ、どうやら先生は、ご両親に愛されて育った方なんだなあ、って思いました」と声をかけてきてくれた。

「こちらこそありがとうございました。それにしてもピーマンの葉っぱで、そんなことまでわかるなんて、すごいですねえ」
「なんでですかね。でも、わかります。それより、聞いてくださいよ。るうとが、今日、退院できることになったんですよ」
「わあ、それは、おめでとうございます。るうとくん、すごい、すごい」
「ずっと体調も検査数値もあんまりよくなかったのに、昨日の夜、急にぐんぐんよくなって、血液検査してみたら、数値もすっごくよくなってて、もうこれなら大丈夫ですね、って、でも、念のため、もう一晩様子を見て、今日の午前中に抗生物質の注射も念のために打ってから、お昼くらいまで見てみて大丈夫だったら、退院することにしましょう、って病院の先生に言われた、って、昨日の夜、お嫁さんから電話があったんです」
「ああ、よかったー。お弁当の力ですねー」
「そうでしょうかー」
「そうですよー。あと、るうとくんの体とご家族みなさん全員のがんばりの成果ですねえ。じゃあ、今日は久しぶりに家族全員そろいますね。おかえりなさい、の、お祝いですね」
「お嫁さんは家に帰ってこれるのがうれしくて、りららはお母さんに会えるのがうれしくて、わたしは何がうれしいって、りららの世話から解放されるのがうれしい」
「いやいや、ほんと、お疲れ様でございました」
「うちの息子たちが三歳のころの反抗期って、りららみたいに、あんなに理屈こねまわしてた記憶がないんですけど、りららは口が立つというか、言葉が達者なんですかねえ、わたしが何をしても何をしなくても、それが気に入らないということを切々と訴えてくるから、ほんとうに疲れました」
「うーん、三歳女児としては、正しい反抗期の姿ですねえ」
「そうなんですか。そんなもんなんですか。ばあば、わたしは、きょう、ほいくえんのきゅうしょくで、しろいごはんはたべたんだから、よるは、もう、しろいごはんはいやなの、パンかスパゲッティじゃないといやなの、って、言うから、そんな無理して食べんでもよろしい、って言ったんですよ。うちのお米は特別おいしいお米なのに、みんなが食べてれば食べるくせに、いちいち、あれがいや、これがいやって、ああ、お嫁さん、えらいわあ、こんな子の相手をずっとしてるなんてねえ、って思いました。女の子の反抗期ってあんなものなんですかねえ」
「個人差はあるんでしょうけどねえ。男児に比べると女児のほうが言葉が達者なことが多いのはそうみたいですけど、ただの反抗期のくせに理屈っぽいところがあるんですかねえ。とはいえ、わたしたちも、何十年か前は、そういう小さな女の子だったわけですから、きっと、面倒くさい理屈をこねくり回してたんじゃないでしょうか」
「そんなおぼえ、全然ないですけどねえ」
「三歳当時の自分の反抗期の記憶がしっかりあるのは、また、それもちょっと、じゃないでしょうか」
「ああ、そっか。でも、やっぱり、孫の世話は、二世帯住宅で離れ離れで、ときどき少し手伝うくらいがちょうどいいですね。はあ。つかれたー。それでですね、今回の、るうとなんですけど、何かに感染したらしくて、でもまあ、脳炎にはなってないから、治れば大丈夫って言われてたんですけど、感染の原因、あれはきっと、りららの濃厚すぎる、ちゅう(キス)、なんじゃないかって、保育園から持ち帰ったものが、りららの唾液経由で、るうとに入ってるんじゃないかって、大人たちは話してるんですけど、りらら本人は、るうとがかわいくてしかたなくてやってることだから、責めるのはかわいそうだし、と思って」
「ああ、りららちゃん、おねえちゃんしてますねえ。まあ、りららちゃんのディープなキス、も、まだまだ続くことでしょうし、りららちゃんときょうだいとしてやっていくには、これくらいの免疫力は必要やねんな、って、るうとくんの体も学習してくれてよかったことにしましょうよ。実際は、いろんなバイキンたちは、りららちゃんのキスだけじゃなくて、空気中にもどこにでもいますから、感染するときは感染しますよ」
「でも、るうとはまだ母乳しか飲んでないし、母乳の中の免疫の力があるから、そんなに感染症になることはないはずって聞いてるんですけどねえ」
「そうはいっても、母乳のおかげの免疫力よりも細菌の力が上回ることもあるでしょうし、たまたまるうとくんの体力低下のタイミングと重なったのかもしれないですし、それはそれで、そういうこともありますって」
「そうですよね。そういうこともありますよね。じゃ、やっぱり、りららを責めるのはやめておこう」
「ですね。言うとしたら、キスの前には、というよりも、外からおうちに帰ってきたら、手を洗ってうがいをするのをしっかり上手にするよう指導してあげてください」
「ああ、そうか。そうします。はあ、今夜から、りららなしで、一人でゆっくり眠れるのがうれしいー」
「お嫁さんもおうちのお布団でゆっくり眠ってもらえるといいですね」
「そうなんですよ。やっぱり病院で付き添ってると、ちょっとうとうと、くらいしかできないみたいで、ずっと目が真っ赤でしたから」
「りららちゃんも気持ちが落ち着くといいですね」
「昨日の夜、電話で退院がわかったときには、やったー、やったー、って飛び跳ねて喜んでました。ああ、よかったー、るうとが早く治ってくれてよかったー」
「よかったですねー。ほんとうによかったですねー」

というわけで、るうとくん無事退院。生後早々、彼もいろいろたいへんではあろうけれど、今後も続くはずの姉りららちゃんからの濃厚なキスと愛撫に備えて、おっぱいのんでねんねして、病後の養生と体力づくりに励んでもらいたい。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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