みそ文

正しく拗ねる

お盆に帰省したときに、幼馴染のめいちゃんと会う。

めいちゃんちのめいちゃんの部屋で、麦茶やお菓子をいただきつつ、めいちゃんの近視矯正手術後の順調快適な様子や、転職先の新しい職場の話を面白く興味深く聞く。途中でめいちゃんが「そうそう。みそ文読んだけど、要返しの実物見せて」と言って、めいちゃんの白檀の扇子を私に差し出す。

「わあ。白檀の扇子じゃ」と私が言うと、めいちゃんは「もうずいぶん古いものじゃけん、あんまり匂いはせんのんじゃけど」と言う。それでも、ほんのりうっすらと、白檀の香りが漂う扇子を、「このくらいのほうがいいにおいかも」と言いながら開いてみる。

日本舞踊の扇と異なり、白檀の扇子は軽い。そして、扇子自体の開閉も軽くてゆるい。日本舞踊の扇は、風を送ることが仕事ではなく、舞台の上で芸を行い艶やかに映えることが仕事だから、送風扇子に比べると大きくて重たくて、開閉も重くてかたい。日本舞踊の扇も長年使いこんで古くなると開閉がゆるくなるけれど、そこまで古くなった扇は、芸の道具としての一線は退き役目を終えることとなる。

めいちゃんが「あ、もしかして、日本舞踊の扇は、これとは違う、よね。動画で見たけど、もっと骨がしっかりしてたかも」と言う。私は「そうなんよ。でも、だいたいの、なんとなくな、形はできると思うよ。扇が勝手に閉じないようにうまくできるかな」と言いながら、要返しの形の指で白檀の扇子を持ってみて、「こんなかんじ」と、下から上へ、そして上から下へ、ひゅるんひゅるるんと扇子を舞わす。

「え? なになに? 今のなに? もう一回やって」とめいちゃんが目をぱちぱちさせながら言うから、もう一度同じように、ひゅるんひゅるるん。「日本舞踊の扇だと、もっとね、扇部分の面積が大きいしね、扇の柄も色もきらびやかだったりするけん、もっと見栄えがするんじゃけどね」と説明するけれど、めいちゃんはそんな説明は別段どうでもいいらしく、「今の、ゆっくりやったらどうなるん?」と訊いてくる。「ゆっくりやると、こうだけど、ゆっくり分解しちゃうと、全然面白くないし、勢いあればこその回転が活きんじゃろ」と言いながら、コマ送り画像みたいに、ゆっくりゆっくりゆっくりと扇子を動かしてみてから、もう一度元通りの標準速度で、ひゅるんひゅるるんと要を返す。

「もしかして、みそちゃんちの家族は、みんなこれができるわけ?」
「みんな、って言っても、今は、どてら(私の旧姓)の父と母と私と弟と妹だけだよ。みみがーも、むむぎーも、ゆなさん(弟の妻)も、もっきゅん(妹の夫)も、どうやらくん(私の夫)もできんけん、できるのは、みんなじゃなくて半数じゃね。みみがーは、実はもうそろそろ、できてるとほんとはいいんじゃけど」
「いや、半数って言ってもねえ、そういう家は、そうはないけん。それは、みみがーちゃん、拗ねるのが正しいわ。それは、ちゃんと、拗ねてくれてよかったわ。そこは、人間として、ちゃんと拗ねんといけんじゃろう」
「そ、そ、そうなん?」

めいちゃんは「みそ語りにアップしてあった動画も見たよ。私、男の人が複数で、女の人の格好をするわけじゃなしに日本舞踊を踊るのを見たの、たぶん初めてだったけど、見ててなんか楽しいね」と言う。「そうじゃろ。優美なかんじや切ないかんじの踊りもいいんだけど、こっけいなかんじやのびやかなかんじのも、私は好き」と応える。

「みそ語り」をご覧でなくて、日本舞踊の動画に興味のある方は、こちらへどうぞ。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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