みそ文

青春の修羅場

職場の売り場メンテナンスをして、結果売り場で不要になった販促物をバックヤードで分別廃棄する作業をしていたら、高校生アルバイトの男子が、別の売り場で補充した後の段ボール箱を捨てに来た。いくつもの段ボール箱を分解して、板状に薄くして、別の大きな段ボール箱に並べて片づける作業をする間に、ふと、アルバイトくんが「あのう。ちょっと聞いてもらってもいいですか」と言いだした。

「はい。なんでしょう」
「仕事のことじゃないんですけど。あの、僕、この前、喧嘩して」
「えっ。また怪我したんですか?」
「いえ。今回は、男子との喧嘩じゃなくて、彼女との口喧嘩なんで、怪我はないです」
「ああ。そうですか。それならよかったー(このアルバイトくんは一年近く前に、喧嘩で腕を骨折して、片腕片手が、しばらくの間、使えなくなり、販売業アルバイトとしては、致命的な時期が一時期あった。お客様がお買い上げくださった商品を両手で持つことができないのでレジはできない、荷降ろしもできない、片手での前出し作業も補充も掃除も遅々として進まず、彼の労働力が半減していることが、現場としてはたいそう痛手であった記憶がまだある)」
「怪我はないんですけど。彼女と喧嘩して、でもそのあと、すっごく長いメールのやりとりを何回もして、一応、その件については仲直りしたんですよ。でも、彼女がなんか明日話がしたいって言ってきて、明日ここのバイト入ってないし、話をしに会いに行くつもりなんですけど、もともと彼女を僕に紹介してくれた僕の親戚の女の子がいて、あ、この親戚の子が彼女と仲のいい友達なんですけど、彼女からいろいろ話を聞いてるらしくて、なんか、別れ話するって言ってるけど、あんた何したんや、いうて言われてるんです」
「喧嘩のこと以外に、なにか、別れを切り出されるような心当たりはあるんですか?」
「特にこれ、ということはないと思うんです。でも、彼女としては、今回喧嘩したことで、急速に、僕に対する、熱い気持ち、みたいなものが冷めてる、って、メールでは言ってたんで、冷めたのかなあ、と思って」
「そうですかあ。それは、少し残念ですねえ」
「そうなんですよ。喧嘩するくらいいろいろ話せるようになって、仲直りもしたし、なんとか彼女の気持ちが戻るようにできないかなあ、と思って」
「それは、アルバイトくんとしては、引き続き、彼女とのお付き合いを継続したい意志がある、ということですかね」
「もちろん、そうです」
「せっかく仲良くなってきたのであれば、さらにもっと仲良くなりたかったりしますよねえ」
「そうなんです。それで、まえに、彼女を紹介してくれた親戚の子の家で、三人で集まって夜通し喋り倒したときがすっごく楽しくて、いっきに仲良くなれたかんじがあったんで、もう一回、親戚のおばちゃんと親戚の子に頼んで、泊まりがけで話させてもらおうかと思ったりもしてるんです」
「そうですか。それで、また、こう、なんていうんでしょう、お互いのタイミングみたいなものが、ぴったりと合って、お付き合い続けられそうだったら、そうできるといいですね」
「はい。僕、彼女の気持ちを取り戻せますかね。彼女は、僕のことは今も好きなのは好きなんだけど、でも冷めてる、って言うんです」
「そうですねえ。こういうのって、好きな気持ちや熱い気持ち以外にも、ご縁や勢いやタイミングみたいなものが大きく影響しやすいですから、とりあえず、やれるだけのことをやってみても、ダメなときには、それはそれで、ああ、ご縁とタイミングが合ってないんだな、ってことで、少し落ち込んで、立ち直って、それからまた元気出して、次いってみよう! で、いいんじゃないかと思いますよ」
「ええっ! 次、いくんですか?」
「あ、いやいや。今すぐじゃなくて、もしも、どうしても今の彼女とうまくいかないってことになったときには、そのまま彼女のこと待ち続けるのもいいかもしれないですけど、また別のご縁で恋愛力を鍛えるのも、ありなんじゃないかなあ、と思って。どちらにしても、青春はたいへんですね。がんばってください」
「そうなんですよ。ほんと修羅場です。でも、がんばります」
「(あ。アルバイトくん、「青春」と「修羅場」を聞き間違えたな、と思いつつ)青春の修羅場は、いろいろたいへんですよね。でも、その年頃のことは、その年頃の間に、がんばるしかないですからね」
「そうでしょうか。そうですよね。うん。わかりました。がんばってみます」

それにしても、高校生の恋愛話について、アルバイト先の薬剤師に相談しても、かなり仕方ないと思うのだけれど、彼はあれでよかったのだろうか。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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