みそ文

雪の回廊

富山県の立山の入り口にある室堂(むろどう)の「雪の回廊」に、夫が旅行に行ってきた。日帰り一人旅だ。「雪の回廊」では、十メートル以上積もった雪の壁を両脇に見ながら、除雪された道路を通る。いったんバスで通り抜けたあとに、バスから降りて、自分の脚で歩く。今日の雪は十四メートルの高さ。この冬の間に十五メートル積もったのが、だいぶん融けて、今は十四メートル。少ない年は十メートルくらい、多い年は二十メートルを超える。最高記録は二十五メートルだったらしい。

夫は朝六時ごろ起きて、元気よく出発。高速道路で富山インターチェンジまで走り、そこからは一般道で立山駅へ。車を駐車場に置いたら、ケーブルカーの立山駅から終点の美女平(びじょだいら)駅まで七分。そこからはバスに乗り換えて、一時間かけて室堂バスターミナルに到着。バスを降りたら、滑り止めの付いた雪靴で回廊を歩く。両脇の雪の高さに見惚れつつ。雪の白さとまぶしさに目を細めつつ。夫は、冬に履く雪靴(防水素材で足首高めのスニーカー風デザインで靴底が滑り止め仕様になっている)を持っているから、それを履いて行ったけれど、雪があんまり降ったり積もったりしない地域から旅行に来ていて、雪靴も山登り靴も持っていない人は、普通のスニーカーや靴で来ていて、つるりつるりと滑って転ぶ姿が見られる。

雪の回廊に満足したら、山道を歩いて「みくりが池」へ。夫は、ここには以前にも、一度一人で来たことがある。前回はみくりが池温泉で入浴して定食を食べた。今回のお昼ご飯は、あぶりサーモン丼。

そして、また、山道を下り、バスに一時間乗って、ケーブルカーに七分乗って、車を運転して帰ってきた夫は、なんだかとても満足そうだ。仕事から帰宅した私に、「おもしろかった! また行きたい!」と話してくれる。

「全然寒くなくて、手袋もマフラーも別に必要なかった。とはいっても、息は白いから、それなりに寒いんだろうけれど。お客さんは、中高年の人が多い」
「中高年の中年は、私たちくらいの中年?」
「あ、じゃあ、違うか。高年か。六十代かそれくらい。お金も体力も時間もそれなりにある年代の人が一番多いかんじ」
「そうか、そうか。よかったね」
「カメラでも写真撮ったけど、すぐ見れるように携帯でも撮ってきた」
「見せて、見せて」
「うん。あれ? 見るのは、どうするんだ? 撮るときは、カメラのところを選んだけど」
「データフォルダのとこじゃないかな」
「ほうほう。データフォルダね。お、これこれ。あれ?」
「あれ? って、どうしたの?」
「あぶりサーモン丼の写真も、雪の回廊の写真も撮ったつもりだったのに、ない」
「どれどれ。あ、ほんとだ。一枚しかない。バスの(車体の)写真だけだ。一応むこうのほうに雪があるのは見えるけど、地面はきれいに除雪されてるし、しかも雪がすっかり融けてて、なんていうか、普通の地面」
「この写真じゃあ、今日の俺の感動は伝わらんなあ」
「うん。久しぶりのバスが嬉しかったんかなあ、ってかんじじゃね」

今日はお天気もよかったから、遠くの山までよく見えて、とても気持ちがよかったとのこと。もっと雪焼けして帰ってくるかと思ったけれど、地黒だから目立たないのか、日焼け止めクリームがいい仕事をしてくれたのか、雪に乱反射する紫外線を浴びた量がそれほど多くなかったからなのか、全然わからない焼け具合。気持ちがよくて満足な日帰り一人旅でよかったね。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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