みそ文

ビタミン元気にカルシウム

休日の夕ご飯は、煮込みうどんにしましょうね、と思いながら準備していたら、携帯電話の着信音に気づいた。私の携帯の着信音が鳴ること自体、どちらかというと珍しいのだが、その着信音に私が気づくのも、やはりまた、珍しいことである。それはさておき。その電話は、職場の新人三年目くんからかかってきたものであった。今日の接客でお薬関係のご相談を承ったもののうち、私に連絡しておくことが必要な事案が二件あるが、連絡メモでは詳細を伝えきれないと思って、電話連絡にしたとのこと。

二件のうち、一件は、顔のシミのお悩みで、お店に相談の電話をかけてきてくださったお客様について。新人登録販売者として可能な範囲でいろいろと提案はしてみたけれども、お客様にはご満足いただけていないご様子だったので、「もしよろしければ、明日あらためて、薬剤師からご連絡さしあげるようにいたしましょうか」と提案したところ、「ぜひそうしてもらいたい」と言われたとのこと。それで新人三年目くんは、私からそのお客様へ電話をかけてほしいということと、その方にご連絡を差し上げるにあたり必要と思われる情報(今日の時点でその方からお聞きした事情とご希望の要点)を連絡してきてくれたのであった。

もう一件は、「ビタカルシウム」という名前の商品をお求めのお客様がご来店くださったが、ビタミン剤カルシウム剤のコーナーにもサプリメントのコーナーにも、その商品名のものが見当たらないことについて。私が「うちのお店には、ビタカルシウムという商品名のものはないですねえ。私が入社して数年以上経ちますが、その間も取り扱いはなかったです」と、新人三年目くんに話すと、「お客様は、何度もうちのお店でご購入くださった、ということなんです。赤いかんじの箱だそうです。でも、会社のマスタ登録(社内取り扱い全商品リスト)で検索してみてもビタカルシウムは登録されてないんです」と教えてくれる。私は、電話をしながら、自宅のパソコンで、「ビタカルシウム」を検索してみるが、画面に表示される商品の写真を見ても、やはり取り扱い経験のない製品だ。「ビタカルシウム」と名のつく商品は二社あるものの、そのうち一社のものは既に製造中止となっており、もう一社のものも一般的に流通している商品ではないようである。

「今、自宅のパソコンで、ビタカルシウムを検索して見ているんですけど、世の中にはビタカルシウムというものはあったみたいですが、うちのお店では、やはり扱ったことがないものですね。箱のデザインはたしかに朱色の部分が多いので、お客様が赤色っぽい箱とおっしゃるのは、この商品の可能性はありますねえ。でも、この商品は製造中止だそうです。あと可能性として考えられるのは、製造中止になったこの商品を、すこやか堂(私の職場)ではなくて、実は元気堂や健康堂のほう(ライバル他社)でご購入なさっていた、か、別の商品と記憶がごっちゃになってるか、でしょうか」
「そうですか。お客様には、調べてから、お電話差し上げることにしているので、やはりうちの会社とお店では、ビタカルシウムの取り扱い実績がないことをいったんお話してみます。それから、ビタカルシウムに関しては、僕もこっちのパソコンで確認してみてから、製造中止情報があることもお話してみます。それで、もし、他社店舗でご購入の場合はそこでお求めいただくか、それでもうちのお店での取り寄せをご希望の場合は、メーカーや卸さんに訊いてみて、市場在庫がまだ残っているかどうかと、うちでの入荷が可能かどうかを確認してから、またご連絡差し上げる、ということにします。そのときには、今日はもう、メーカーも卸さんも会社終わってて連絡つかないので、明日、メーカーや卸さんに確認する段階のところから、どうやら先生にお願いしてもいいですか」
「はい、了解しました。そうしましょう。そのときには、その指示のメモを、私のボックスに貼っておいてください。もしも、それ以外の、別の展開になって、それに対応する必要があるときには、またそのことも連絡してもらえますか」
「はい、そうします。お休みのところにすみませんでした。ありがとうございました。失礼します」

そうしていったん電話を切って、煮込みうどんの煮汁をぐつぐつと煮立てながら、うどんのちゅるりとした食感を想像してうっとりしながら、しばらく過ごす。そうしていたら、なんとなく、職場に電話して、展開の確認をしたほうがよいような気分が大きくなり、おもむろに電話をかけてみる。

「はい。お電話ありがとうございます。すこやか堂、新人三年目です」
「あ、すみません。どうやらです」
「あ、今ちょうど、先生に電話かけようと思ったところでした」
「ビタカルシウム製造中止の件、お客様にご納得いただけたでしょうか」
「それがですね、ちょっとややこしかったんですけど、結論から言うと、解決しました」
「そうですか。解決したならよかったです。ややこしかった話も一応聞いておいたほうがいいですかね」
「はい。お客様に、当社ではビタカルシウムの取り扱い実績がないことをご連絡したところ、そんなはずはない、こっちに引っ越してきてから、このお店に来て、ここのお店の、白衣を着てる人に奨めてもらって、飲み始めてから、ずっとここで買ってるんだから、ここで買った商品に間違いない、とおっしゃるので、ビタカルシウムをお奨めしたのは女性薬剤師だったでしょうか、それとも男性の薬種商だったでしょうか、とお訊ねしたところ、年配の男性だった、とおっしゃったんです。それで、薬種商の先生(現在は資格名は登録販売者に変更となっている)(現在は他店に異動となり当店にはいらっしゃらない)に電話して、記憶がないか、訊いてみたんです。そしたら、やっぱり、ビタカルシウムは扱ったことがないし、ビタカルシウムの相談を受けたこともないって言われて。でも、年配の男性で白衣でという条件なら自分の接客かもしれないから、お客様の手元に、今飲んでいる商品が残っていれば、それを持ってきて見せてくださるように頼んでみたらどうや、ってアドバイスくださったんです。それで、お客様にもう一度お電話差し上げて、事情をお話して、お手元に商品の空箱か空き瓶が残っていますでしょうか、って聞いたら、あるわあるわ、って電話口まで持ってきてくださって、えーとな、箱にも瓶にも、カタセD3(ディースリー)、いうて書いてあるよ、って言われたんです。お客様、それは、ビタカルシウムではなくて、カタセD3なんですか、って確認したら、そうや、ビタミンとカルシウムが入ってるから、うちではビタカルシウムいうて呼んでるんや、って言われました。ああ、それでしたら、カタセD3錠でしたら、たしかに当店で取り扱っております、とお話して、店頭の在庫が二個あったうちの一個を、そのお客様用にお取り置きすることになりました」
「そうですか。それはお疲れ様でした。お客様、素敵、ですね。では、明日以降、そのお客様がご来店くださって、またビタカルシウムとおっしゃったときには、ああ、この方が、ビタカルシウムじゃなくてカタセD3の方なんだな、と思って、客注品置き場を見て、対応しますね。お客様にも、商品名がカタセD3錠であることをご記憶いただけるようにお話してみます。あと他の登録販売者の人たちにも、今後、ビタカルシウムという商品名ご指名でお求めのお客様の接客にあたったときには、カタセD3錠を想定しながら、商品名を確認するよう、連絡ノートにも書いておきますね。ありがとうございました」
「いえ、僕こそ、先生、お休みの日なのに、お手数おかけしてすみませんでした。今度からは、最初に、商品名はビタカルシウムで間違いないのか、ビタミンとカルシウムが成分として入っているもので別の商品名ということはないかどうか、その場で確認するようにします。他の商品のときにも、今日のことを思い出して接客します。勉強になりました」
「私も勉強になりました。では、明日はゆっくり休んでくださいね」
「はい、本当にありがとうございました。失礼します」

新人三年目くんは、先月までは「新人二年目」だったけれど、この四月からは「新人三年目」。着々と成長している。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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