みそ文

互角

夫は、昨年の秋頃から、囲碁を始めた。これまでは何十年も将棋一本で来た人なのに、何をどう思い立ったのか、突如として囲碁を始めた。我が家にはまだ碁石も碁盤もなく、修行場所は、オンライン囲碁ゲーム道場と、書籍によるプロからの指導、が主である。

年末年始の広島帰省にあたり、夫は義父(夫の父)と囲碁対戦することを、帰省前から、とても楽しみにしていた。生まれて初めて生の人間と対戦できるのだから。義父は、囲碁歴約五十年以上のベテランだ。自営の理髪店内にも、自宅の居間にも、別々に碁石と碁盤を持つほどに、熱心な囲碁道の人だ。にもかかわらず、夫は、「意外と、おやじは、俺より弱いんじゃないか」だとか、「あっけなく勝てるかもしれない」などと、ふとどきな発言を繰り返していた。でもまあ、それは、対戦前の自身を鼓舞するテクニックとして、まあよし、なのかもしれない。そして、年末、夫は、仕事を終えた義父に、実際対戦してもらった。私はその様子を見学してはおらず、義母とあれこれ話をした後で、「じゃあ、また明日。おやすみなさい」と、先に布団に入っていた。義父との対戦を終えた夫が、布団に横になる私のところに来て、「何かをつかんだ!」「この調子で続けたらいいとわかった!」と、少々興奮した様子で話してくれる。私が「あと何年くらい修行を積んだら、お父さんと互角に戦えるようになりそう?」と訊いてみると、夫は「今でも、もう、ハンデをつけてもらったら、互角に戦える!」と息巻く。「どうやらくん。ハンデをつけてもらう、ということ自体、既に互角ではない、と、私は思うんだけど」と言ってみても、「いや、互角は互角だ!」と言って夫は譲らない。

私はゴルフも将棋も囲碁もしないので、ハンデありで行うゲームの実際を知らないのだけれども、なんとなく、夫が囲碁の道を歩むにあたり克服すべき課題は、「身内であっても上級者に対しては敬意を払うこと」や「真の互角とは何か」について自問自答するあたりにあるように思えてならない。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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