みそ文

花嫁の祖母

私の結婚式の日、祖母はとてもはりきっていた。早朝から着物をびしっと着付けて、化粧もぱりっと整えて。まだ寝ている私のところに、母が起こしにやってきて、「おばあちゃんが、みそちゃんと庭で写真を撮る、言うて庭で待ちようるけん、早う起きて庭にきんさい(庭に来なさい)。」と言う。時計を見ると、まだ、もう1時間かそれ以上は、眠れそうな時間帯なのに。自室のある二階の窓から庭を見下ろすと、たしかに祖母が庭石に、ちょこんと座って待機している。私は寝ぼけたまま、とりあえず、口をゆすいで顔を洗い、パジャマからワンピースに着替えただけで、庭に出てゆく。「ばあちゃん。私、まだ起きたばっかりじゃけん、もうちょっと待ってくれる?化粧もしてないし。」と言うが、祖母は「ええけん、ええけん、早うきんさい(いいから、いいから、早くきなさい)。」と、自分が腰掛けている石の隣半分に私をいざなう。母も「ええけん、ええけん。」と言って、さっさと撮影し終えたそうにしている。私は、本当にいいのか?と思いながら、ぼさつく頭髪を押さえてなでつけながら、そのままカメラに向かう。できあがった写真は、明らかに祖母が主人公として悠然と微笑み、花嫁のはずの私は、「この娘さん、どうしちゃったんじゃろうか、寝ぼけとってんじゃろうか」状態。

そして、何時間か後の結婚式会場。式の前だったか、後だったか、新郎新婦親族の自己紹介をしあう時間。皆、さらさらりと、簡単に、新郎にとって、新婦にとって、どういう続柄なのかを静かに述べる中で、祖母だけは妙にいそいそとはりきっている。祖母は話し出す前に、嬉しくてたまらないみたいに、「うふふふ」だか「えへへへ」だか、なんだか少し、そんなふうに笑ってから、「私はみそちゃんのおばあちゃんです。みなさん(夫の親族席の人たちに向かって)、みそちゃんはええ子ですけん、ほんまにええ子ですけん、ようしちゃってくださいね(よくしてやってくださいね)。よろしゅうお願いしますね。」と、とうとうと語る。それだけいっきに言い終えると、満足そうに席について、またニコニコと私を眺める。

結婚式も、披露宴も、ウェディングドレスを着て髪を結いティアラを飾って花束を抱えることも、準備の段階はいろいろと面倒で、なんだか毎日必要以上にエネルギーを消耗しているような気がして、いっそのこと、もう、何もせずに済ませようか、なんだったら、もう、結婚そのものもとりやめてしまおうか、と、思うこともあったけど、あきらめなくてよかった。がんばってよかった。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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