みそ文

字幕と吹き替え

 実家の祖母がまだ生きてきた頃。祖母は映画を見るのが好きで、自室のテレビで映画の放映をよく見ていた。

 しかし晩年になると、目の機能や耳の機能が少しずつ低下してくる。すると、映画の字幕を読み取ったり音声を聞き取ったりする際の円滑さも少しずつ低下する。
 けれど祖母は、自分の機能低下のことなどまったく思いつかないようすで、「最近の映画は、字幕の字が小そうなった。」「字幕の字が多ゆうなった。」「字幕が替わるのが早うなった。」「最近は俳優さんも、吹き替えの声優さんも、早口で喋りすぎじゃ。皆、もうちいと(もう少し)ゆっくり話さんにゃあ。あれじゃあ、映画を見てくれるお客さんに聞いてもらわりゃあせんじゃろう。」と、堂々と真顔で言っていた。

 祖母の言葉を聞いた父が、「何を言いようるんな(何を言っているのだ)。そりゃあ、ばあさんが年(とし)をとったけん、そう感じるんじゃろう。」と返すが、祖母は、「何を言いようるんね。年をとるいうてから(年をとると言っても)、年は一年にいっこずつしかとらんのんじゃけん。そんなにようけい(たくさん)はとっとりゃあせん(とってはいない)。そりゃあ、わしもちいたあ(少しは)目も耳も弱うなっとるかもしれんけどの。でも、映画を作る人らは、見る人に、よう見てもらおう、楽しんでもらおう、思うんじゃったら、もうちいとよう考えんにゃあいけまあ(もう少しよく考えなくてはならないであろう)。」と言い切る。

 当時の祖母は、おそらく八十歳前後だった。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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