みそ文

じーまみ豆腐

 私が好きな食べ物は、いろいろたくさんあるけれど、てろてろとぅるん、としたものは、中でもかなりの好物だ。

 五月に旅した沖縄でも、なによりたくさん食べたのは、じーまみ豆腐。
 じーまみ豆腐とは、ピーナツ澱粉で作った豆腐。胡麻豆腐とも似ているけれど、香りと味が、ほのかにピーナツなのだ。
 そのあまりのおいしさに、毎日毎日繰り返し食べる。こんなにおいしい食べ物なのに、全国流通していないのはなぜだろうか、と不思議になる。

 私があまりにも、「おいしい。おいしい。」と繰り返し食べるのを見て、夫が国際通りのお店で、お土産用のじーまみ豆腐を買ってくれた。
 それを自宅に帰宅してからの夕食の一品にする。7cm×7cmくらいのプラスチックケースに入ったじーまみ豆腐を、ひとつずつ開けて、小さな小鉢に移す。添付の甘からい茶色いタレをかける。
 夫が「これ一個は多いなあ。二人で一個でよかったのに。」と言う。夫にとってじーまみ豆腐は、別段嫌いなわけではないが、特別好きというわけでもなく、まああればおいしく食べるけど、そんなに言うほどのものではない、どっちでもいい存在らしい。

「だいじょうぶ。心配しなくても。どうやらくんが食べきれないのは、私が残さず食べるから。」
「え? みそきち、自分のを一個食べた上に、まだ食べるつもりなんか?」
「そうよ。一個じゃ全然足りないもん。二個でも足りないくらいよ。できることなら、丼いっぱい、なみなみと作った、特製じーまみ豆腐を食べたいくらい。」
「わかった。じゃあ、三分の一か半分くらいまで食べるから、残り食べて。」
「うん。やったあ。わかった。」

 そんな会話のあと、じっくりと、口から鼻に抜けるピーナツの香りに酔いしれつつ、自分のじーまみ豆腐を食べ終える。では、夫の残りのじーまみ豆腐をいただきましょう、と、夫の器を覗き込む。

「えっ。なんで。どうやらくん。じーまみ豆腐が、ないよ。」
「あ。あれ。いつの間にか、全部食べてしまった。」
「……。」
「だめなん? 全部食べたらいけんのん?」
「いや。いいんよ。いいんよ。いいんじゃけど、それならそれで、半分くれるとか、そういうことは、最初から言わんかったらいいのにー。期待したら、がっかりするじゃん。最初から一個ずつって思ってれば、期待もがっかりもしないのにー。」
「まあ、まあ。あと箱に残ってるやつは、全部みそきちが食べていいけん。」
「わかった。」

 夫は本当に親切ないいやつ、なのだけど、たまにときどき、こういう技で、私に「大きな期待」と「小さな失望」を、提供してくれるのであった。     押し葉

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

ときどき、思い出したように、いただいたメッセージへのお礼やお返事をリンク先の「みそ語り」に書いています。よろしければ、いつでも、どうぞ、どなたでも、ご覧ください。「みそ語り」では、メッセージをくださった方のお名前は書いておりませんので、内容から、これは自分宛かしら、と推理推察しながら読んでいただければうれしいです。手の形の拍手ボタンからメッセージをくださる場合は五百文字以内、文字の方の押し葉ボタンからメッセージをくださる場合は千文字以内となっております。文字数制限なくお便りくださる場合には、下のメールフォームをご利用ください。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク

最新記事

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (0)
暮らし (111)
仕事 (161)
家族 (301)
想 (23)
友 (47)
学習 (79)
旅 (16)
心身 (8)

FC2カウンター

検索フォーム

FC2Ad

Template by たけやん