みそ文

プッピテレキバン

 職場で作業をしていたら、レジ担当の同僚が、「どうやら先生、すみませーん。肩こりのご相談のお客様を、ご案内お願いします。」と声をかけてくれる。はい。いらっしゃいませ。肩こりはどのように対応なさいますか?

「あれよあれ。プッピテレキバン。プッピテレキバンがほしいの。」
「あ、それは、ピップエレキバンのことですね。」
「ああ。それそれ。あれ? プッピじゃなくてピップだっけ? あははー。そうそう。ピップテレキバン。」
「おしいです。エレキバンです。」
「あれ? まだ違う? もう。テレキバンじゃなくて、エレキバンなの? 紛らわしいわねえ。」
「ピップエレキバンはこちらになりますが、磁気の強さはどのくらいのものがよろしいですか?」
「あら、種類がいろいろあるの?」
「はい。標準の強さのものと、強力タイプのものと、少し緩やかなものと、ございます。」
「うーん。どうなんやろう。私が使うんじゃないのよ。私ね、静岡から旅行でこっちに来たんだけど、運転手さんが肩がこってつらいって言うから、買ってあげようと思って立ち寄ったの。」
「旅の途中に、お立ち寄りありがとうございます。運転手さんも、お客さんからエレキバンでねぎらってもらえるなんて、きっと喜ばれますね。」
「あ、運転手さん、いうても、うちの息子なんやけどね。」
「あら。バスの運転手さんじゃないんですね。息子さんでしたか。それは運転手さんはお疲れ様ですね。」
「バスじゃなくて、普通の車なんだけど、やかましいおばさんたちばっかり乗せてるから、疲れるみたいで。どれがいいんやろう? あ、あんた、ここよ、ここ。ちょっとこっち来て。テレキバンは種類がいろいろあるんだってよ。どれがいいの?」

 そこに、運転手さんである息子さん登場。年の頃は30歳前後だろうか。「だから、テレキバンじゃなくて、エレキバンやって、さっきから何遍も言ってるのに、おぼえん人やなあ。」

「いいじゃない。テレキバンのほうが効きそうだし。みんな、もう、テレキバンって呼べばいいのよ。で、どれがいいの? あれ。これは? なんで安いの?」
「はい。こちらは、他の会社が作って売ってる磁気絆創膏なんです。広告も何もしていない、あまり有名じゃない会社なので、そのぶんお値段が安いんです。」
「効き目は、ちがうの?」
「いいえ。ピップエレキバンの標準タイプと磁気の強さは同じですので、効き目も同じなんです。」
「じゃあ、これにしよう。同じくらいの値段で、数がたくさん入ってるし。あんたが使わず残った分は、私らがみんなで使えばいいし。ここで、このお姉さん(私)に貼ってもらったら?」
「いいって。自分で貼れるから。」
「そんなん言わず、貼ってもらったらいいじゃない。車に戻ってから年寄りに貼ってもらうより、若い人(お客様比)に貼ってもらったほうがいいじゃない?」
「だから、自分で貼れるって、言ってるじゃん。お店の人の手を煩わせるんじゃない。」

 私としても、お客様に、貼り薬を貼って差し上げるサービスは、基本業務に入っていない。すかさず、「だいじょうぶですよ。肩こりならば、人に貼ってもらわなくても、自分でこう、肩を押さえてみて、ここだな、と感じるところに、自分で簡単に貼っていただけますので。」と申し上げる。

「あらあ、そうなの。せっかくなら貼ってもらったらいいのに。肩くらい、お店の人に見られても、別に恥ずかしくもないのに。ところで、ねえ、マスクはある?」
「はい。まだ入荷が不安定で、種類が少ないのですけれど、こちらに、いくつかありますので、よろしければ、どうぞ。」
「ああ、よかった。旅行に来る前に買って来ようと思ったんだけど、どこでも手に入らなくてねえ。今更だけど、あるんなら買って、つけておこうと思うのよ。ほら、このへんもやっぱり、一応関西に近いでしょ。危ないでしょ。気持ち悪いでしょ。」
「いろいろとご心配ですよね。」
「うらぁ! 自分が勝手に遊びに来ておいて、地元の人に向かって、失礼なこと言うんじゃない! ほら、もう行くぞ。みんな車の中で待ってるし。」
「はいはい、そうね。行きましょうね。もう、この子はすぐに怒るんだから。でも、私たち、こっちを旅行してても、ほんとうに、大丈夫かしらね、インフルエンザ。やっぱり、こっちに旅行に来たのは、間違いだったかしら。怖いわあ。」
「マスクもお買い上げくださいますし、手を洗ってうがいして、エレキバンでコリや疲れもとっていただいて、おいしいもの召し上がって、ゆっくり眠って、楽しい旅行をしてくださいね。」
「ほら! 行くって、言ってるのに。インフルエンザにかかるかどうか、お店の人にわかるわけないだろ。ちゃんと予防して、かかったら治せ。」

 旅の道中、どうぞお気をつけてくださいね。安全で楽しい旅行となりますように。ありがとうございました。母とその他のおばさんたちの旅行のために、静岡から遠路はるばる長距離運転を担うだなんて、よくできた息子さんだなあ。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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