みそ文

がっかり博物館

 友人の妹さん夫婦は、博物館巡り(資料館も含む)を趣味としている。しかも、ただの博物館巡りではなく、狙いは「がっかり博物館」。
 「がっかり博物館」とは、展示物たちの品揃えもやる気も、いまひとつ、どころか、いまむっつ、くらいなのに入館料はそこそこの値段がするところ。入館料無料でも、内容のがっかり度合が十分に高ければ、「がっかり博物館」として認定されることもある。

 通常であれば、旅先で、「面白いかも」と入ってみた博物館や資料館が、その入館料金に見合わないしょぼさだったときには、若干のボラれた感が生じるものだ。たとえ無料でも、立ち寄った時間を返せ、と思いそうになることもある。
 しかし、友人の妹さん夫婦は、館内構成や展示内容が、がっかりであればあるほど、「よっしゃー。ここは、かなり、がっかり度高いぞー!」と拳を握る。がっかりであればあるほど、二人にとっての「がっかりランキング」と「高揚感」は、ぐんぐん上昇するのだ。

 友人からその話を聞いたときには、なんと素晴らしい思いつきだろう、と感心した。展示内容ががっかりのときは、そのがっかり度合を喜び、展示内容がまっとうに面白いときには、その面白さを喜べるのだ。当たってもはずれても「あたり」になるこの愉しみ方に、私はいたく感心した。

 ちょうど去年の今頃、友人の妹さんに、直接会う機会があった。私はすかさず賞賛の言葉を伝える。
「がっかり博物館巡りって、素晴らしいと思う。私も何かでがっかりしたときには、自分の中の、がっかりランキング、に書き込んで、ほくそえむことにしようと思った。」

 すると友人の妹さんは、「みそさん、それがですね、まあ、最近は主人が忙しいのもあって、巡ること自体があんまりできないのもあるんですけど、世の中には、実に絶妙に微妙な博物館や資料館があるんですよ。面白いなら面白いで楽しめるし、やる気のないしょぼくれた内容だったら、それはそれで、ちゃんとがっかりできるのに、そのどっちでもない、中途半端ーな、なんともいえないかんじのところに入ってしまった日には、面白くないのにがっかりもできない、という、とてつもない不発なかんじが、二人を無口にさせるんです。」と神妙な顔で話してくれる。

「そ、そうなんだ。それは、不発博物館ランキング、とか、だめ、かな。」
「はい。私達も、それ考えたんですけど、あまりにも不発すぎると、その意欲も気力も萎えることがわかりました。」
「そうなんだ。博物館や資料館の世界って、けっこう、なかなか手強い(てごわい)んやね。」
「はい。手強いです。」
「がっかりするのも、一筋縄じゃいかないもんなんやね。」
「はい。意外と、縄筋、多いです。」

 友人はいつも、妹さんの、ものごとの愉しみ方を、流麗な日本語を、そして妹さんの存在を、誇らしく語り、こよなく深く愛している。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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