みそ文

トイレのご案内

 チラシ初日はお客様がたくさんご来店くださる。ありがたいことである。通常業務もこなしつつ、特売商品のご案内や補充もしつつ、接客もしつつ。だがやはり、通常業務がややおいつかない感のうちに疲労が蓄積してゆく。

 それでも、ご相談くださる内容が、薬剤師冥利に尽きるようなものであれば、その冥利の力で少々の疲労は飛んでゆく。薬剤師冥利ではなくとも、商いの喜びに繋がるような内容も、爽やかな充実感をもたらしてくれる。

 けれども、他のお客様のお薬相談接客中であるにも関わらず、間に割り込んで来られて、「トイレどこ?」と訊かれると、もちろんお答えはするのだが、相談中のお客様にも「お話の途中で申し訳ありませんね。」な気持ちになるし、実際そう申し上げる。お客様も「あんな堂々と割り込んできて、話し中なのがわからないのかしらねえ?」とご不満そう。しかしながら、尿意や便意は、他人への配慮を奪ってしまうほど、ときに、切羽詰った力を発揮してしまうのだろう。

 他にも店員はいるのだが、トイレに関する質問は、白衣を着ている人間相手の方が訊きやすいのか。いやいや。たまたま私が担当する売り場が、一番トイレに近い位置にあるからだろう。一日にいったい何度トイレをご案内するだろうか。それでも、そんなトイレのご案内も、結果的によかったよかった、と思えると、ご案内してよかったな、と安堵する。

 とある年輩女性のお客様が、私に、トイレの場所を訊いてからトイレに行かれたものの、トイレから出てこられて、「おねえさん。トイレの水の流し方がわからんのんやけどなー。」とおっしゃる。仕事をさっさと進めるには、「いいですよ。私が流しておきますよ。」と、トイレに入って全部の個室の水を流せば早く済むことではあるのだが、今後もこのおばあちゃんに、安心して当店のトイレもご利用いただきつつ、お買い物もお楽しみいただくためには、それではいかんであろう、と、思いなおす。

「トイレは、洋式と和式とありますけど、洋式をご利用でしたか?」
「うん。腰掛けてするほうを使った。」
「ではですね。こう腰掛けていただいたときに、背中側にあたるところに、水がたまる四角い箱の形をしたタンクがあるんですが、そのタンクに向かって立った時に、そのタンクの右側のところに、こう、ヘラみたいな取っ手が付いてるんです。」
「そこに、大、とか、小、って書いてあるの?」
「どうだったでしょうか。大小は書いてあったかもしれないし、書いてなかったかもしれませんが、手前側でも奥側でも、どちらに回してもらっても流れますので、お試しいただけますか? もしもうまくいかないときには、わたくしが参りますので、お呼びいただけますか。」
「ん。わかった。やってみる。」

 おばあちゃんは、一人でトイレに戻られる。どうかなあ。どうかなあ。と思いながら売り場で待つが、なかなか戻ってこられない。念のため、バックヤードに入って、トイレに近づいてみる。お。水が流れる音が聞こえてきた。大丈夫だ。さっさと売り場に戻っておく。

 ゆっくりとおばあちゃんがトイレから戻ってこられて、「だいじょうぶやったわ。わかったわ。流れた。よかった。ありがと。」と、声をかけてくださった。

 それはよかったです。ありがとうございました。またいつでも、お気軽に、ご利用くださいね。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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