みそ文

イソフラボン

 少し前に書いた日記「コンドロイチン」で、コンドロイチンとグルコサミンとコラーゲンが混同されることはよくあることだというような話を書いた。すると、ある方が、拍手コメントをくださり、その方の体験を教えてくださった。

 その方は、歯科に勤務する歯科衛生士さんである。その方の勤務先に、患者さんとして通ってこられる、ある年配の男性患者さん、80歳くらいのおじいちゃんが、来院されるたびに、同じ質問をなさるのだという。

「イソフラボンいうのは、高いんやろ?」

 イソフラボン、というのは、大豆などにも含まれる栄養成分で、近年は、女性ホルモン様の働きがあることや、その働きにより、中高年の肌のハリツヤを整えたり、女性の更年期障害症状の緩和も期待できることなどがわかってきている。そのイソフラボンを摂取するための健康食品なども、いろんな形で出回っている。

 しかし、その患者さんは男性だし、ここは歯科だし、なのに、なぜに、イソフラボンなのだろうか、と、歯科衛生士及び歯科スタッフの皆さんはいぶかしがる。もしかすると、このおじいちゃん、少しばかり「おボケ」になられたんだろうか、と心配にもなってくる。それでも、「イソフラボンいうのは、高いんやろ?」と毎回繰り返して質問するおじいちゃんに、「そうですねえ。いろいろなんでしょうけどねえ。」と、まあ、あいまいに、というのか、そつなく、というのか、歯科衛生士として可能な範囲での対応をしていた。

 ところが、ある日のこと。そのおじいちゃんが、意を決したかのようなご様子で、「このイソフラボン、いうのは、高いらしいが、できるんなら、してみたい。」と、おっしゃった。そのおじいちゃんが指し示しておられるのは、「インプラント(義歯埋没手術)」の資料。

「ああ! インプラントのことでしたか!」

 歯科衛生士さんたちは、長きに渡る謎が解けて、すっきり。だけど、おじいちゃん、「イ」しか合ってないよ、と、がっくり。そして同時に、おじいちゃんの、インプラントに対する興味の本気度合を、プロとして、受け止める。

「インプラント」。「イソフラボン」。

 うーん。たしかに。ぱっと見た目の字面はとてもよく似ている、気がする。日本語学習途上で、カタカナの読み書きに不自由があれば、読み分けに力が要るかもしれない。たとえ読み分けられたとしても、これだけ似ているということは、エタノールとメタノールくらいには、仲間なような気もしてくる。

 けれども、歯科において、「イソフラボンは高いんやろ?」とお訊ねくださる患者さんがいたとき。歯科で「イ」がつくものといえば、「インレー」か「インプラント」か。ということは、もしかして、「イソフラボン」は「インプラント」? と、推理して対応するのは、難しい。きっと、あまりにも、難しい。

 ところで、そのおじいちゃんは、その後、歯科衛生士さんと歯科医師の先生から、インプラントの詳しい説明を受けられた。金額的にも高額であるし、手間も時間も、体力や気力の維持も必要だ。しかし、そのおじいちゃんの決意が揺らぐことはなく、一本40万円のインプラントを8本入れられたとのこと。歯が、まるで生えてきたかのように、ぱりっと整い、シャキシャキ喋るようになったそのおじいちゃんは、ボケているどころか、とても矍鑠(かくしゃく)と溌剌(ハツラツ)としていらっしゃるとのことである。めでたし。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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