みそ文

外国語はわからない

 年の頃は、大学生くらいだろうか。若い男の人と、そのおばあちゃんなのだろうなあと思われる女性との、お二人連れでのお客様。おばあちゃんのお買い物に、お孫さんがついてきてくださっている感じ。おばあちゃんは、買いたいものがいろいろとおありのようで、買うものを箇条書きにしたメモ用紙を握りしめながら、これと、それと、あれと、と、ゆっくりながらも確実に、買い物かごに入れてゆく。「お。そうそう。アリナミンも買うんや。」と言うおばあちゃんと一緒に、お孫さんと二人、錠剤のアリナミンコーナーの前に立つ。しばらくして、お孫さんが、私に声をかけてくださる。「すみません。アリナミンAとアリナミンEXは違うものなんですか?」

「はい。どちらも、ビタミンB1、B6、B12配合剤なのは同じなんですが、あえて使い分けるとすれば、Aのほうは体全体がなんとなく重いような疲れたような感じのとき用で、EXのほうは特に目や肩や背中や腰がひどく疲れた感じのとき用です。EXのほうがより強力なかんじ、と思っていただければよろしいかと。」
「ほら。ばあちゃん。やっぱりちょっと違うものなんやて。ばあちゃんが飲んでるのは、Aなんか?EXなんか?」
「私は、外国語はわからん。アリナミンいうのは読めるけど、その後に書いてある外国語は、読めんし憶えられん。」
「ばあちゃん。そうは言うても、憶えとかんと、自分が要るものが買えんやん。」
「私は日本語しかわからん。」
「じゃあ、ばあちゃん。家で飲んでるアリナミンの後に書いてあるは、こういうバツ(×)みたいなんやったか? それとも鉛筆の先みたいにとがってるやつ(Aのことか)やったか?」
「わからん。憶えとらん。中身は黄色い粒じゃった。」
「ああ。お客様。実は、こちらは、両方とも、黄色い粒なんです。そして両方とも、透明の瓶に入ってるんです。」
「ばあちゃん。両方とも黄色いんやって。いっぺん家で見てから、どっちか確認してから、また買いに来たほうがええと思う。」
「あ。じゃあ、お客様。こちらの箱を開けたときの、中身の写真ならあるのでお持ちします。一応ご覧いただいて、もしもそれで思い出せそうでしたら。」
(と、タケダ製品一覧集を持ってきて)
「こちらの写真がアリナミンA、で、こちらがアリナミンEXです。どうでしょう? ご自宅でお使いのものと同じかどうかわかりそうでしょうか?」
「わからん。」
「やっぱり、ばあちゃん。家でいっぺん見たほうがええって。」
「そうですね。せっかく、今お飲みのもので調子がよいようでしたら、ぜひそれで続けていただいた方がいいですし。」
「でも、私は、アリナミンを買って帰らんと。」

 と、おばあちゃんは、なんとか今日のうちに、アリナミンのお買い物を済ませたいようである。しかし、求めるものが明確でないお買い物は難しい。

 ここでお孫さんが、「ばあちゃん。またちゃんと連れてきてやるし、俺の車で乗せてきてやるから、今日はアリナミン以外のものだけにしといたら?AなんかEXなんか、家に帰って、俺が見てやるし。」と、提案してくださる。おばあちゃんは、とても安心した様子で、そして、とてもうれしそうな様子で、「ん。じゃあ、そうする。」と応えられる。

 おばあちゃんにとっては、お孫さんの車に乗せてもらって買い物に出かけるということは、きっととても楽しみで、貴重なひと時なんだな。また再びその機会を得られるのなら、お買い物を延期してもいいくらいに。そして外国語がわかる賢いお孫さんのことが、とても誇らしいに違いない。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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