みそ文

温泉入浴の撮影

 実家に帰省したときには、母と一緒にお風呂に入る。

 二人とも、背中のある一ヶ所に、「痒い場所」を持っていて、互いに背中を洗い流しあいこしながら、この「痒い場所」を入浴用タオルでこする。背中全体を広く洗い、「痒い場所」は小刻みに刺激する。「気持ちいいねえ。」「甘露だねえ。」「極楽。極楽。」「くう。たまらん。」と言い合いながら。自分で洗ったときとは異なる、きゅるきゅるとした洗い上がりにうっとりする。二人で湯船に浸かって、よくあったまってからあがろうね、と話していたら、母が、「そういえば、知ってた?」と私に聞いてきた。

「何を?」
「テレビの温泉番組なんかで、お風呂に入る仕事をする俳優さんや女優さんがおってじゃろ(いらっしゃるでしょ)。」
「うん。私は特に女優さんは、なんでちゃんと肩までお湯に入らんのんかと思うんよ。以前みそ文にも書いたけど(「肩までお風呂」)。」
「あれね。ああいう仕事は、何回も何回も撮りなおしたり、日によっては何ヶ所も、お風呂に入らんといけんじゃろ。そうしたらね、肩までお湯に浸かってしまうと、すぐに疲れて仕事ができんようになるんだって。じゃけん、肩まで入らずに、胸より上は出しとくんと(出しておくんだって)。そうせんにゃあ、仕事が数こなせんけん、言うて、テレビで話しょうちゃったよ。」
「へえ。そうなんじゃ。なるほどね。私、今まで、なんでちゃんと肩まで入ってぬくもらんのんじゃろう、と思って、テレビで温泉に入ってる女優さんに向かって、内心いつも説教してたけど、もう説教せんでええんじゃね。」
「そうよね。でね、胸より上をお湯から出しとくのもそうじゃけど、両腕もね、お湯の中に浸けてしまうと、すぐに疲れてしまうんだってよ。じゃけん両腕もお湯から上に出しといて、こう、お湯の上を泳ぐようにゆらゆらさせてみたり、お湯をすくって肩にかけたりしとくんじゃ、いうてようちゃったわ(と言っておられたわ)。」
「そうなんじゃ。いろいろちゃんと理由があったんじゃね。よかった。これで、無駄に立腹して説教しなくて済むようになるよ。」
「あんたは、へんなことで腹立てたり、文句言うたりするけんねえ。余計なことで腹立てんさんなや(腹立てないようにしなさいよ)。」

 母は娘に、腹を立てなさい、と言ってみたり(「おでこ自慢」「立腹発露の道」)、腹を立てるのはやめなさい、と言ってみたり、いくつになっても、いろいろと、教育をするものなのだなあ。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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