みそ文

目玉みくじ

 十二月の中頃に、夫が映画「ゲゲゲの鬼太郎」を観に行った。そのときに、鑑賞に来た人たちに、配られた手土産を自宅に持ち帰ってきて、私に見せてくれた。一見ただの「目玉おやじ」のおもちゃなのであるが、夫が片手でしゃらしゃらと音をたてて「はっ!」と言うと、目玉から黄色い札が出てくる。よく見ると小さな赤い文字で「大吉」と書いてある。なんと「おみくじ」だったのか。
 夫は何度も、しゃらしゃら「はっ!」を繰り返しては、黄色い札を見せてくれるが、出てくる札は毎回「大吉」。私が「ねえ。どうやらくん。これ、大吉、しか入ってないん?」と訊くと、「いいや。そんなことはないはず。中吉も小吉も入っているはず。ほら」と言って、また、しゃらしゃら「はっ!」としてくれるが、またもや「大吉」。まあ、大吉続きででよかったね。

 「でも、こんなもんどうせい言うんや。要らんやろう」と夫が言うので、「あ。じゃあ、ゆなさん(義妹。弟の妻)に、あげていい?」と尋ねてみる。

「いいけど、なんで?」
「ゆなさんね、みくじ好き、なんだって」
「はあ? みくじ好き? そんな人が世の中におるんか?」
「うん。おみくじのためにお参りに行くくらいらしいよ」
「ふうん。まあええけど。好きな人がおるならあげて」

 ということで、目玉おやじのおみくじは、広島帰省したときに、実家でゆなさんにプレゼントすることにして、帰省の荷物に同梱した。

 実家に着くと、実家には、ゆなさんと、むむぎー(甥っ子)と、みみがー(姪っ子)の三人だけ在宅中で、両親と弟は外出中であった。さっそく、「ゆなさんにお土産がある」と言って、目玉おやじを取り出す。子どもらが「あー! 目玉おやじじゃー! なんで、みそちゃん、これ持っとるん?」と聞いてくるので、「どうやらくん(夫)が映画を見に行って、もろうてきた(貰って来た)」と説明する。「えー? なんで、目玉おやじ、お母さんにあげるん?」とも聞いてくるので、「ゆなさんが、おみくじ好き、じゃけん」と説明。
 そこで、むむぎーが、「あ! ほんまじゃ。何か中に入っとる。!」と言って、構造を確かめる。みみがーは、「えー? お母さん、おみくじ好きじゃったん?」となぜか問い詰める。ゆなさんは「そうよー。好きよー。でも、そんな話ししたの、ずいぶん昔のことなのに、おねえさん、ようおぼえとってじゃ」と感心する。むむぎーとみみがーが「お母さんが、おみくじ好きって、知らんかった!」と初めて知る情報に興奮する。
 むむぎーは、目玉おやじをしゃらしゃら振って、「ほっ!」と言いながら、黄色い札を出す。札の文字は「地獄」。

「え? 地獄なんてあった?どうやらくんがした時には、大吉しか出てこんかったけん、このみくじは、めでたいことば限定みくじかと思っとったのに」
「おねえさん。それじゃあ、みくじにならんじゃないですか」

 むむぎーは引き続き、しゃらしゃら、「ほっ!」。何度も「ほっ!」「ほっ!」を繰り返して繰り返して、「みそちゃん。ぼく、何回やっても、地獄ばっかりじゃ。これ地獄しか入ってないん?」 と訊いてくる。「小吉も凶」も通り越して、地獄を当てるあたりが、さすがむむぎーじゃね」とゆなさんが感心する。

 みみがーが「私にやらせて!」と手に取り、しゃらしゃら、「ほいっ!」。
「やったー!地獄じゃない!」と喜ぶ札は「小吉」。
「へえ。ちゃんと、小吉もあったんじゃ」と、少なくとも、大吉、小吉、地獄、の三種類の札が別々にあることに、私は納得し安心する。

 「ぼく、もう一回する!」と、むむぎーがまた、しゃらしゃら、「ほっ!」。出てきた札はまた「地獄」。

 「ね。ゆなさん。これでいつでも、みくじ、引き放題じゃろ」と言ってみる。「おかあさん。おみくじ好きなら、いつでも引けるけんよかったね」と、子どもたちも言うが、相変わらず二人で、目玉おやじを取り合って、しゃらしゃら、「ほっ!」、しゃらしゃら「ほいっ!」を繰り返す。
 ゆなさんは、「おねえさん。ありがとうございます。この調子だと、いつ私の手元にまわってくるか、あやしいですけど」と子らを見守る。

 その日の夜。仕事から帰って来た弟にみみがーが、「おとうさん! おかあさんは、おみくじが好きなんじゃって!」と報告する。弟は「ほうで(そうだよ)。おかあさんは、みくじ好きで(みくじ好きだよ)」と応える。するとみみがーは、「じゃあ、なんで、おとうさん、今まで、おかあさんがおみくじ好きって、私らに教えてくれんかったん? 私全然知らんかったんよ! なんで、もっと、おかあさんに、おみくじ買ってあげんのん?」と訴える。

 「なんで」と言われてもねえ。みくじ趣味は、あんまり普段、日常会話に出てこないしねえ。おみくじは、買ってプレゼントしてあげるものでもないらしいし。
 弟夫婦が新婚の頃、ゆなさんの「みくじ好き」を知ったときに、私も弟も妹も、「じゃあ、今度から旅先では、ゆなさんに、おみくじをひいて、お土産に持って帰ってきてあげる」と言ったけど、ゆなさん本人が、「いやいや。みくじは、自分でひかんと意味がない。たくさんある中から自分でひくけん、おみくじはええんじゃん」と言うから、「じゃあ、一本じゃなくて、六本くらい買うて来ちゃるけん、その中からひけえや」と、弟も私も妹も提案してみたけれど、「それもダメ」と、ゆなさんが言うから、なるほどね、現地で自費でひくからこそ、みくじのエンターテイメント性があるのね、と、きょうだい三人納得したのだ。

 だからみみがーも、父を責めずともよいし、みくじ好きの母のために、母の代わりにみくじをひいて、持って帰ってあげなくてもよいのだよ。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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