みそ文

だしは大切

 年末から元旦まで、夫の実家で、いろいろと料理をするのだが、今回は、夫のリクエストにより、「鶏釜めし」と「豚汁」を作ることになった。
 お野菜類は買わなくてもたっぷりあるけど、肉類と油揚げとこんにゃくがないから、買い出しに出かけよう。せっかくだから出かけている間に出汁(だし)を取っておきましょう、と計画する。
 昆布と干しシイタケと、豚汁用に切った大根と人参と牛蒡と白菜とシメジを、鍋いっぱいのたっぷりの水につけてから、出発。
 最寄りのスーパーマーケットまでは、車で片道十五分かそれ以上かかるので、その往復と買物作業とを合わせると、一時間前後はかかる。ということは、その間に「いいだし」が出るはず。

 買い物から帰ってくると、予想通り、鍋の水は、いい出汁色に変身している。加熱して、さらにしっかり出汁を出す。その出汁だけを、計量カップに600ccくらいとっておき、あとでこれで鶏釜めしを炊きましょう、と、炊飯器の横に置いておく。
 残りの出汁には、豚肉と蒟蒻と油揚げを追加して、加熱して、灰汁をとり、味噌と白だしと牡蠣醤油とで味を調えて出来上がり。お昼御飯は、この豚汁と、炊飯器に残っている白いご飯でいいね、と、いうことにした。

 どうやらの実家では、私が何かを作る先から、義母が洗い物をしてくれる。ザルもボウルも鍋も。食後のお皿洗いも全部。「上げ膳で極楽なんじゃけん、洗い物くらいせんにゃあ、バチがあたる」と言って、義母はすべてを洗いあげてくれる。

 お昼ごはんを食べ終えて、美味しかったね、お腹いっぱいだね、の状態で、夫と、「じゃあ、夕ごはん用に鶏釜めしの準備をしようかな」「あの出汁で炊いたご飯なら美味しくなるな」と話していたら、母の「ありゃ!」という、驚いたような声が聞こえた。

「みそさん。もしかして、計量カップの中に、だしをとっておいたんじゃったん?」
「はい。そうですよー。炊き込みごはん用に」
「うわー、ごめんー。今、流しに捨ててしもうたー。じゃっ、って、したときに、あんまりいいにおいがしたけん、はじめて、出汁じゃいうて、気がついたが、遅かったわ。ごめんー、ごめんー」

 夫はショックのあまり、固まっている。私は、「うはははは。私も何も伝えてなかったし、ラップもしてなかったし、黙って置いとったけん、おかあさん、全部洗うてくれちゃった(洗ってくださった)んでしょ。すみません。ありがとうございます」と笑う。

 野菜エキスが染み出た濃厚な出汁ではなくなったけど、また、あらためて、昆布と干しシイタケで出汁をとり、その出汁で、鶏釜めしを炊きあげる。
 炊きあがった鶏釜めしも、もちろん美味しかったけど、炊ける最中の湯気の香り、たぶん牛蒡と油揚げと出汁の香りが、何とも言えずあたたかくて香ばしく、昼寝中の母は目を覚まして「いいにおいがしてきた」と言い、風呂上りの父もは炊飯炊きあがりのメロディを聞いて「炊けた、炊けた」と言っていた。

 家族みんなでいただく食事は、食事自体のおいしさもあるけれど、食事の用意が整う過程の、整うまでを待つ時間と、少し空腹で穏やかなこころもちが、特別なご馳走だ。     押し葉

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

ときどき、思い出したように、いただいたメッセージへのお礼やお返事をリンク先の「みそ語り」に書いています。よろしければ、いつでも、どうぞ、どなたでも、ご覧ください。「みそ語り」では、メッセージをくださった方のお名前は書いておりませんので、内容から、これは自分宛かしら、と推理推察しながら読んでいただければうれしいです。手の形の拍手ボタンからメッセージをくださる場合は五百文字以内、文字の方の押し葉ボタンからメッセージをくださる場合は千文字以内となっております。文字数制限なくお便りくださる場合には、下のメールフォームをご利用ください。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク

最新記事

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (0)
暮らし (110)
仕事 (161)
家族 (301)
想 (23)
友 (47)
学習 (79)
旅 (16)
心身 (8)

FC2カウンター

検索フォーム

FC2Ad

Template by たけやん