みそ文

オノマトペ

 十月頃のことだったか、私が書いた「みそ文」を、実家の母が印刷して、母の兄(私の伯父)に郵便で送ったことがある。十二月半ば頃に、その伯父から返事の手紙が届いたと、母が私に知らせてくれた。母はすぐにその手紙を、ファクスで私に送ろうとしてくれたのだが、我が家のファクスは、五年くらい前に壊れて以来、電話のみの暮らしで、その間、ファクスが必要になったことは、殆ど一度もなくて、ずっとファクスをつけないままでいて、だからファクスの受信はできない。それで母にそう説明したら、「じゃあ、とりあえず、要点をメールに書いて送るけど、手紙はコピーして郵送するか、なんか考えるわ」と言うから、「もうじき年末年始でそっちに帰るし、その時に見せてもらえればそれでいいよ」と私は言うが、母は「まあ、そう言わんと、おじちゃんから、みそに伝えたいことも書かれているし」と言うので、「まあ、そういうことなら、お好きなようになさってくださいませ」と伝える。
 その直後に届いたメールには、次のように書いてあった。ちなみに、母の兄は、兄なだけでなく、元校長先生なので、基本的に「偉そう」で、でも、それは「威張っている」「頑固じじい」という意味の「偉そう」ではなくて、「つい教育的指導に走ってしまう」という意味での「偉そう」で、きっと、実際そういう意味では「偉い」のだろうと思う。

 母から私に届いたメール。
「みそへ。兄からの手紙には、いろいろ書いてあったけど、とりあえずの要点は、次のとおり。
(一)オノマトペが適切で、たいへんに面白い。
(二)福井弁と広島弁の絡みなども盛り込まれると、さらに面白いのではないか。
(三)たいへんよくできた作品なので、文芸春秋社のエッセイストクラブ等に投稿したほうがよい。
また、兄は、とても面白いから、ぜひまた、続きの作品も、送ってきて見せてほしい、とも書いていたよ。母より」

 このメールの後、母が伯父からの手紙をコピーして私に送ってくることはないまま、年末年始の帰省とあいなった。私は実家で母の肩や背中をもみながら、「母ちゃんが送って来てくれたメールで、おじちゃんからの感想の手紙の要点を読んだけど、ああ、私はこうやって、『親ばか』や『おじばか』に囲まれて、すくすく育ってきたのねえ。そして今なお、すくすくと育まれているのねえ、と思って、しみじみしたよ」と話す。
 「オノマトペが適切って書いてあったじゃろ」と母が言うので、「うん。どれのことだろう? と思ったけど」と私が言いかけたら、「そうじゃろ。私(母)も、何のことか、わからんわ、思うたけん、兄にファクスで、『オノマトペとは何ですか?』いうて聞いたんよ」と言う。
「かあちゃん、そっちかいな。『どのオノマトペ』じゃなくて、『オノマトペって何』だったとは」
「え? みそは、オノマトペって、何のことか知っとったん?」
「はい。存じております」
「そうねえ。私は知らんかったけん、兄に聞いたら、擬態語じゃ、いうて、教えてくれた。ほら、よく、みそ文に、歩く時の足音なんかを、てくてくてく、とか、てててててー、とか、とてとてちて、とか、書いてあるじゃろ。あれが実にそういう感じがイメージできていいみたいよ」
「ああ。あれね。あれのことかあ。私は、『パラダイス孔雀』の、うたせ湯の、びちびちびち、のことかな、と思ってた」
「あ。それもじゃろ。とにかくいろいろよ」

 何はともあれ、母は新しい語彙「オノマトペ」を習得できて、脳が活性化したことだろう。何よりも、母は、伯父からの手紙を読み、その後ファクスでやりとりをして、兄の近況を知ることができ、母が思っていたよりもずっと、伯父がしゃきしゃきと元気に活動している様子に、心底安堵しただろう。そして、伯父が姪(私)の文章を丁寧に読んでくれ、それについていろいろ考えて、こうして感想を文に書いてくれるほどに、脳も手もしっかりしていることを知って、母はとても嬉しかったのだろう。

 というわけで、「みそ文」のボケ防止活動、なかなかに、まずまず、よい仕事をしているね、ということにしましょう。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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