みそ文

新年のお告げ(後編)

「九年に一度のチャンス到来」のお告げから一年が経った。実家に帰省する道すがら、車中で夫に、「で、結局、九年に一度のチャンスって、いったいなんだったんだろう?」と訊いてみる。夫は、「うーん。これといって思い当たらんけど、何かあったことにしたいなあ。そうだ。今年は、カレーを作るときに、ホールトマトの缶詰を入れて作ると美味しいことに気付いたから、それにしよう。」と言う。いいのか? それで?

年末、夫の実家でゆっくりしながら、義母と話してみる。「おかあさん。じめいさんが、今年の最初にもらったお告げの、九年に一度のチャンスっていうのが、結局なんじゃったんか、わからんのんですが、私は何か見落としとるんでしょうか。」と尋ねる私に、母は心底諭すように、「一年間、何事もなく、元気に過ごせたいうことが、チャンスだったんじゃないんかねえ。」と言ってくれる。そうなんですか? チャンスって、チャンスって、そういうものだったのですか?

多少クラクラしながらも、九年に一度のチャンスに、一年の無事に感謝して、年越しそばを味わう。そしてまた、あらたな新年元旦。あけましておめでとう。初詣から戻った両親は、去年よりさらに嬉しそうだ。「今年は、みそさんも、じめいも、ふたりとも、すっごいすっごい、いいんじゃけん。」と母。

さあ。どれどれ。録音機の周りに集まる。「ごおーん、ごおーん、ちーん。どうやら みそー。どうやら みそー。ほっぷ、すてっぷ、じゃんぷー。ほっぷ、すてっぷ、じゃんぷー。花束を抱えている姿が見えまするー。花束を抱えている姿が見えまするー。ほっぷ、すてっぷ、じゃんぷー。」

「ねえ! ねえ! すごいいいじゃろ?」興奮気味の母。父はなぜかもう一度、同じところ再生してくれる。父もこころなしか、ほんの少し嬉しそうだ。「ほっぷ、すてっぷ、じゃんぷー」

私は一応言ってみる。「あれですかね。去年の、口は災いにこの一年、気をつけたのがよかったんですかね。」
なぜだ。誰も何も返してくれない。

続けて夫のお告げである。「ごおーん、ごおーん、ちーん。どうやら じめい。どうやら じめい。十年に一度のチャンス到来ー。十年に一度のチャンス到来ー。こころしてすごせよー。こころしてすごせよー。十年に一度のチャンス到来ー。」

今年もかい! 毎年かい! 来年は十一年に一度のチャンスか? 今度はなんや? ホールトマト缶の次はなんや?

母はにこにこと、「よかったねー。ありがたいねー。」と言いながら、絵馬やらお守りやらを出している。父、悠然と、茶をすする。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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