みそ文

修業道場

ちょうど一年前の十一月の終わりごろ。北海道に住む友人が、福井に遊びに来てくれた。彼女に会うのは久しぶりで、うれしくて、たのしくて、わくわくうきうき。せっかく福井に来てくれたなら、と、永平寺にご案内。誰かが来るたびに訪れて、もう何度目にもなるけれど、何度行っても気持ちのいい永平寺。

存在が、限りなく静謐で、建物や空気の佇まいを見るだけで、ただそこにいるだけで、身も心も、清浄に穏やかになってゆく。永平寺の山門から、お山のてっぺんの本堂まで、ゆるやかでなだらかな階段で繋がっているのだけど、その傾斜を見るだけで、これまた気持ちが和むのだ。その階段を雲水(修行僧)さんが、静かに速やかに小走りに駆け下りながら、振袖のような袈裟の袖に風はらませる姿は、たいへんに美しい。

永平寺のこの階段には、ところどころ隅っこに、網状の飾り彫りの金属の蓋のようなものが付いている。いまでこそ、ガラス窓もはめこまれ、雨も雪も風も中に吹き込まないようになったけど、その昔には、窓もなく、ふきっさらしだったので、雨や雪が入り込み、階段を濡らしていたそうである。その水が多すぎるとき、この飾り彫りの蓋のところに水を流してやるための排水溝、雨樋、なのだ。

と、ここで、友人に訊いてみた。「さて、質問です。この飾り彫りの金属の蓋は、なんのためのものでしょう?」

友人は、ちょびっとだけ考えて、でもすぐに、「あ、わかった!」と言う。「ここから温風が出てくるんでしょ? それか、全館床暖房の装置?」

げほげほげほ。あまりの思いがけない返答に、咳が出る。ここは北海道じゃないので、全館床暖房設備は一般的ではありません。それに今私達、思いっきり寒いじゃん。階段に床暖房だあ? そんなぬるい修行道場、おねえさんは、ゆるしませんよ。     押し葉

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

ときどき、思い出したように、いただいたメッセージへのお礼やお返事をリンク先の「みそ語り」に書いています。よろしければ、いつでも、どうぞ、どなたでも、ご覧ください。「みそ語り」では、メッセージをくださった方のお名前は書いておりませんので、内容から、これは自分宛かしら、と推理推察しながら読んでいただければうれしいです。手の形の拍手ボタンからメッセージをくださる場合は五百文字以内、文字の方の押し葉ボタンからメッセージをくださる場合は千文字以内となっております。文字数制限なくお便りくださる場合には、下のメールフォームをご利用ください。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク

最新記事

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (0)
暮らし (112)
仕事 (161)
家族 (301)
想 (23)
友 (47)
学習 (79)
旅 (16)
心身 (8)

FC2カウンター

検索フォーム

FC2Ad

Template by たけやん